駄菓子屋さんの中に入ると、
奥の方に70代くらいの、 おばあさんが見えた。
真琴
すいませーん、
真琴
当たり出たんですけど
そう言って、当たり棒を見せる。
おばあさん
あらあら、おめでとう
おばあさんは、花が咲いたような にこやかな笑顔を見せた。
おばあさん
あのアイスケースから
好きなアイスとっておいで
好きなアイスとっておいで
真琴
当たった棒のアイスと
同じアイスじゃなくて
いいんですか?
同じアイスじゃなくて
いいんですか?
おばあさん
細かいことは
いーのよ
いーのよ
おばあさん
自分が食べたい
アイスを選びなさい
アイスを選びなさい
真琴
え!
真琴
ありがとうございます!
真琴
どれにしようかなー
アイスケースの中には、長い間愛されているアイスが沢山入っていた。
真琴
あ!
真琴
この、みかんアイス!
真琴
これにします!
キリンさん
おばあさんのところへ
持って行きましょう
持って行きましょう
真琴
これ下さい!
真琴
あ、貸してください?
おばあさん
はは、どっちだって
いいよ
いいよ
おばあさん
はい、貸し出し
ありがとうね
ありがとうね
おばあさんにお礼を言ってから
駄菓子屋さんをあとにした。
キリンさん
近くに公園があるので、
そこで食べましょう
そこで食べましょう
真琴
はい!
キリンさんと、道を歩く。
と、その時。
視界の後ろに、走ってくる 車が見えた。
キリンさん
!
キリンさん
危ないっ!
真琴
え
キリンさんが、私の身体を強く 抱き寄せた。
車は、私の横を通り過ぎていった。
キリンさんが、私の身体を ゆっくり離す。
キリンさん
ホッ
キリンさん
よかったー
キリンさん
真琴さんが轢かれたら
どうしようかと思いました
どうしようかと思いました
真琴
あ、ありがとう
ございます
ございます
真琴
……
真琴
でも、
真琴
そこまで危なかった
でしたか?
でしたか?
真琴
あっ!いや、
助けてくれたのは
助けてくれたのは
真琴
すごくありがたかった
んですけど!
んですけど!
真琴
(せっかくキリンさんが
助けてくれたのに、)
助けてくれたのに、)
真琴
(失礼なことを
言っちゃったかな…)
言っちゃったかな…)
キリンさんは、キョトンとした 顔になった。
キリンさん
…怖くないんですか?
車……
車……
真琴
…何で?
キリンさん
ほら、真琴さん
車に轢かれたって
言ってたじゃないですか
車に轢かれたって
言ってたじゃないですか
キリンさん
だから…
真琴
言ったっけ
そんなこと
そんなこと
キリンさん
言ってましたよ
真琴
あ、でも考えたら
私達もう死んでるん
ですから、
私達もう死んでるん
ですから、
真琴
車に轢かれても
大丈夫ですよ!
大丈夫ですよ!
私は笑ってそう言った。
キリンさん
真琴さんはまだ、
キリンさん
死んでないけどね
真琴
え?
キリンさん
体が透けてる
真琴
あぁ、まだ
透けてたんですね
透けてたんですね
キリンさん
前にも言ったけれど、
この世界は時間の流れが
早いんです
この世界は時間の流れが
早いんです
キリンさん
死後の世界で体感
一日くらいなら、
一日くらいなら、
キリンさん
あっちの世界では
1分くらいしか経って
いないんですよ
1分くらいしか経って
いないんですよ
キリンさん
まだ、お兄さんを
探すと言いますか?
探すと言いますか?
真琴
うん
迷いは、なかった。
キリンさん
そう、ですか
キリンさん
……
キリンさん
(いつ向こうの世界で
死んでしまうかも、)
死んでしまうかも、)
キリンさん
(分からないのに)
キリンさん
お兄さん、早く見つけ
ないとですね
ないとですね
真琴
早く見つかると
いいなー
いいなー
公園に向かって、また歩き出した。