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ぴよたろう
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午後8時15分。 オフィスにいた他の社員たちも徐々に退社し、フロアには俺と勇斗の2人だけが残されていた。
吉田仁人
俺がパソコンをシャットダウンして大きく伸びをすると、隣の席でずっとソワソワとスマホをいじっていた勇斗が、待ってましたとばかりにガタッと立ち上がった。
佐野勇斗
吉田仁人
いつもなら何気ない帰り道の誘いのはずなのに、オフィスが静かなせいで、勇斗の少し上ずった声がやけに鼓膜に響く。 カバンを持って立ち上がると、勇斗は俺の少し前を歩きながら、エレベーターのボタンを押しに走っていった。
チーン、と静かな音を立てて開いたエレベーターに、2人で乗り込む。 高層ビルの22階から1階へと降りるまでの、わずか数十秒の密室。 ゴトゴトと静かに下降する箱の中で、俺たちはなぜか一言も喋れずにいた。 いつもなら、今日の仕事の愚痴だとか、太智がまたお菓子を食べただとか、どうでもいい話で爆裂に盛り上がっているはずなのに。 (……なんか、気まずい) チラリと横目で勇斗を見ると、勇斗は前を向いたまま、なぜか直立不動でネクタイの結び目を何度も触っている。 耳の裏が、うっすらと赤い。
吉田仁人
佐野勇斗
声をかけただけなのに、勇斗は天井に届きそうな勢いで跳ね上がった。
吉田仁人
俺は苦笑しながら、いつもの癖で勇斗の胸元に手を伸ばした。 少しズレていたネクタイの結び目を、クイッと直してあげる。 いつも仕事前にやってあげている、俺たちにとっては当たり前の動作。 ――のはずだった。 ガシッ。
吉田仁人
ネクタイから手を離そうとした瞬間、俺の手首を、勇斗の大きな手が強い力で掴んだ。
コメント
1件
第11話、読んだわ!エレベーターの中のあの静け方がめちゃくちゃ効いてた。いつもは騒いでる2人が無言で、勇斗の耳の赤さとかネクタイいじる仕草で緊張がにじみ出てて、最後の「ガシッ」で全部持ってかれた。ネクタイ直すのがルーティンってところがまた、2人の距離感を物語ってるよな…続きが気になる!🔥