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#ギャンブル
りんご
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朽華 歌仙
78
コメント
1件
いや、もう、胸がぎゅーってなったわ……。 家族の幻影であんな試練を仕掛けてくるなんて、容赦なさすぎる。でも菜々美がACCEPTを選んだところ、本当に良かった。あの両親の優しかった思い出をちゃんと信じて選んだんだなって思うと、泣きそうになった。 そして海凜……彼女はDELETEを選んじゃったのか。それだけ傷ついてたってことだよな。システムが「慈悲がない」って判定するのも、なんか理不尽で怖い。 次の「峻厳」って試練も気になる。この先どうなるんだろう……目が離せない🔥
深い眠りに落ちてから、どれほど時間が経ったのだろう。
誰かの囁きが、遠くの物音から少しずつ近づいてくる。
菜々美は目を開けた。
目の前にいたのは、母だった。
菜々美の母
菜々美の父
菜々美の父
菜々美は息を呑んだ。
そこは、自宅のリビングだった。
食卓には、焼き魚と味噌汁。
白いご飯。
母がいつも作る卵焼き。
窓から、朝の光が柔らかく射し込んでいる。
生島菜々美
父は、呆れたように笑った。
菜々美の父
菜々美の母
いつもの声。
いつもの食卓。
いつもの朝。
菜々美の胸が、じんわり熱くなる。
生島菜々美
さっきまでの試練が、悪い夢に思えた。
“白の間”。
“灰の間”。
“黒の間”。
“青の間”。
死んでいった生徒たち。
すべて、長く苦しい夢だったのではないか。
菜々美は、その時間を惜しむように、両親と話した。
最近は年頃のせいか、会話も少し素っ気なくなっていた。
けれど、今だけは違う。
他愛ない話が、こんなにも嬉しい。
母の笑顔も。
父の小言も。
食器の音も。
すべてが愛おしかった。
だが、その温かさは突然壊れた。
菜々美の母
母が、いつもの笑顔で言った。
菜々美の母
菜々美の手が止まった。
菜々美は、今の母の姉の子だった。
実母が若くして亡くなり、子どものいない今の両親に養女として引き取られた。
そのことは知っている。
けれど、こんなふうに言われたことはない。
生島菜々美
母は微笑んでいた。
だが、その笑顔に温度はなかった。
菜々美の父
生島菜々美
菜々美の父
その時、リビングが少しずつセピア色へ変わった。
父。
母。
朝のニュースが映るテレビ。
湯気を立てた味噌汁。
窓の外で揺れる木の枝。
すべてが止まる。
時間が凍りついたようだった。
【SYSTEM】
どこからともなく、冷たい声がした。
【SYSTEM】
生島菜々美
右腕の携帯端末が光った。
拡大モニターが展開され、目の前に2つのボタンが浮かぶ。
《ACCEPT》――
《DELETE》――
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
菜々美は、凍りついた両親を見た。
温かかった食卓。
嬉しかった声。
それを壊した言葉。
許す――
許さない――
2つの選択肢が、胸を締めつける。
生島菜々美
【SYSTEM】
菜々美の指が震えた。
《DELETE》を押せば、両親は消える。
酷い言葉を言った父と母。
自分をいらないと言った父と母。
けれど――
生島菜々美
生島菜々美
生島菜々美
たとえ2人の心のどこかに、そんな気持ちがあったとしても――
私を育ててくれた時間まで、なかったことにはできない。
涙が頬を伝った。
菜々美は右手を伸ばし、《ACCEPT》に触れた。
菜々美だけではなかった。
青の間の16人も、それぞれの個室で同じような夢を見ていた。
大切な誰か。
会いたかった誰か。
信じたい誰か。
その相手が、自分を拒絶する。
仮想か現実かは知らされていない。
その中で、目の前の相手を世界から消したいかどうかだけを問われている。
志穂の弟
牧原志穂
牧原志穂
海凛の元カレ
海凛の元カレ
三島海凜
それぞれの前に、2つの文字が浮かぶ。
《ACCEPT》――
《DELETE》――
許すか。
消すか。
慈悲とは、救うことではなかった。
傷つけられても、相手の存在を残せるか。
それを選ばせる試練だった。
菜々美は、暗闇の中で目を開けた。
ぼやけた視界に、青い光が戻る。
“青の間”の個室。
ベッド。
毛布。
空中モニター。
ドアの上のタイマー。
戻ってきたのだと理解した。
身体は、不思議なほど軽い。
衝撃的な夢を見たのに、眠る前より快調なくらいだった。
生島菜々美
タイマーを見る。
0:10:03。
残り約10分。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
菜々美は現実へ引き戻された。
酷い言葉を浴びせられても、夢で両親に会えたことは少し嬉しかった。
もう二度と会えないかもしれないから。
生島菜々美
制服に着替え、鏡の前で髪を整える。
そして、部屋を出た。
9時間の休息が終わった。
生徒たちは、緊張した顔で個室から出てくる。
誰も、すぐには夢を話さなかった。
自分だけなのか。
全員が同じ夢を見たのか。
確かめる余裕はない。
次に何をさせられるのか。
誰が死ぬのか。
その方が、ずっと重かった。
菜々美は、円形の大部屋を見回す。
1人。
2人。
3人。
生島菜々美
1人足りない。
“青の間”に入ったのは16人だった。
生島菜々美
胸の奥がざわついた。
名前が出てきそうで、霧の向こうにある。
生島菜々美
必死に記憶を辿る。
Cチーム。
第2試練。
一緒に答えを考えた少女。
水泳が得意で――
“まりん”という名前を誇りにしていて――
恋愛ドラマが好きで――
生島菜々美
名前を口にした瞬間、胸が冷たくなった。
海凜がいない。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
菜々美は息を呑んだ。
やはり、休息ではなかった。
9時間そのものが試練だった。
壁の一部に、映像が浮かんだ。
生徒ナンバー32・三島海凜の個室――
海凜は、乱れたパジャマのまま、ベッドに仰向けで倒れていた。
顔には苦悶の表情が残る。
もう動かない。
声も聞こえない。
菜々美の胸に、最後の選択が冷たく残った。
《DELETE》――
海凜は許せなかったのだ――
それほど、彼女の中では傷が本物になっていた。
そして――
【SYSTEM】は、その傷さえ慈悲の欠如と判定した。
生島菜々美
名前を繰り返す。
けれど、隣で誰かが呟いた。
生徒の誰か
生徒の誰か
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
青の光が、少しずつ弱くなる。
慈悲の試練は終わった。
けれど、菜々美の胸には《DELETE》の文字が焼きついていた。
相手を消そうとした者が、自分を消される――
それが、このゲームの慈悲だった。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
峻厳。
その言葉に、菜々美の喉が乾いた。
慈悲の次に来るもの。
優しさの反対側にある何かだ。
許さないこと。
裁くこと。
罰を与えること。
誰かの選択を、正しいか間違っているかで切り分けること。
“青の間”の壁が、音もなく開いた。
その先には、動く床が続いている。
新倉穂乃花
生島菜々美
菜々美は、もう一度振り返った。
生徒ナンバー32・三島海凜。
その名前を、心に強く刻みつける。
けれど、青い光の中で、彼女の笑顔は少し遠くなっていた。
第4試練終了――
生徒ナンバー32・三島海凜 脱落。
残り17名。
菜々美の背筋が凍った。
そんな言葉を浴びせられたことは、一度もない。
血が繋がっていなくても、大切に育てられ、愛されていると信じていた。
それなのに――
生島菜々美
生島菜々美
生島菜々美
涙が浮かぶ。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
新倉穂乃花
穂乃花の声が震えていた。
新倉穂乃花
新倉穂乃花
生島菜々美
菜々美は頷いた。
生島菜々美
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】