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ないとめあ・ぱぺってぃあ

1 - えぴめでぃうむ・まぜんた

♥

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2021年03月07日

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“あの人“と再会する数年前──

リサイタルのため、阿左美慎哉(あさみしんや)は地方のホテルに宿泊していた

『BAR Puppeteer』

慎哉

(……バーなんて、あったか?)

首を傾げるも、惹かれるように足を踏み入れる

落ち着いた雰囲気で、まるで隠れ家のようなバーだった

いらっしゃいませ

カウンター席へどうぞ♪

カウンター席に腰を下ろす

バーテンダーはおしぼりとコースターを置いた

慎哉

慎哉

ウィスキーを、ハイボールで

かしこまりました

注文したハイボールがコースターの上に置かれる

ごくり

一口飲むと、炭酸がシュワシュワと広がった

年代物のピアノが目に入る

慎哉

(“あのとき“──)

慎哉

(──ピアノを弾奏し終えると)

慎哉

(“あの人“はいつも、拍手を送ってくれた……)

チクッ

針を刺したように、少し胸が痛む

気になりますか?

慎哉

……!

ピアノをじっと、ご覧になっていたので

つい、お声をかけてしまいました

慎哉

…………

年代物ですが、今でも音が鳴りますよ

慎哉

慎哉

(もし、“あの人“がこの場にいたら──)

いつの間にか、ハイボールを飲み干していた

ぼくからのサービスです

カクテルを目の前に置かれる

慎哉

……?

お口に合うと、よろしいのですが──

カクテルの色合いに目を見張った

慎哉

慎哉

(……マゼンタ(紅紫色))

慎哉

(“あの人“の目と、同じ色……)

どくん

カクテルを飲んだ

舌触りのいい甘酸っぱさだった

慎哉

結婚して、子どもがいても……

慎哉

──“あの人“が、忘れられない

忘れられない?

慎哉

慎哉

また会えると思っていたのに──

慎哉

……どうして?

慎哉

なんで、会いに来てくれない?

──会いたい

寂しさを募らせた──

そんなあなたに転機が訪れましたよね

あなたの現在の妻、阿左美リエ──彼女との出会いです

慎哉

慎哉

彼女は“あの人“に似ていた

慎哉

とくに笑顔が──

その笑顔で寂しさを紛れさせることができた

──でも

だんだんと虚しさが占めるようになりました

なぜなら──

慎哉

彼女は“あの人“じゃないから…………

どんなに姿かたちが似通っても、結局は──

あなたの中で──

思い人への思慕が強くなってきましたね

思いを抑え込むのは、相当苦労したとお察しします

周囲に悟られないよう、心の奥底に隠し続けてた“思い“────

慎哉

ようやく気づいた……

慎哉

自分が愛してるのは家族じゃない

慎哉

“あの人“だって────

慎哉

彼女は“あの人“の代わりに、過ぎなかった──

構わないじゃないですか

最初に出会ったのは、彼女ではなく

その思い人なのですから

彼女よりも、思い人の方へ愛情を寄せるのは──

──至極当然のこと

もう心の奥底に隠さずとも、いいのですよ

慎哉

──隠さなくても……いい

ピアノ、弾いてみますか?

慎哉

遠慮は無用です

ほかのお客さんはいらっしゃいませんし

問題ありません

にこ

それに──

あなたには思い人のために作った

“曲“があるじゃないですか

鍵盤に指を置き、弾き始めた

〜〜♪ 〜〜♪

とても聴き心地がよく、甘くて切ない、美しいメロディだった────

パチパチ

素晴らしい!

拍手を送った

慎哉

…………

いつの間にか、慎哉は涙を流していた

“あの人“のためだけに作った“曲“──

曲目を伺っても?

慎哉

慎哉

Epimedium(エピメディウム)

なるほど

慎哉

“あの人“は、喜ぶだろうか……?

喜びますとも♪

そろそろ閉店のお時間ですね

慎哉

…………

一歩、バーの外へ出れば──

ここで過ごされたときの記憶は忘れますが

あなたの中にある“思い“は本物であり

忘れることはありません

慎哉

…………

いずれ、そう遠くない日──

あなたの前に思い人が現れるでしょう

それまで、あなたの“思い“を大切にしてくださいね

あなたの望みが叶いますように────

『いずれ、そう遠くない日──』

『あなたの前に思い人が、現れるでしょう』

慎哉

…………

──その言葉を信じ、慎哉はバーをあとにした

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コメント

6

ユーザー
ユーザー

素敵です!

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