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東独の毒素

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3

東独の毒素3「ベルリンの壁」

♥

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2020年03月15日

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自分にとって一番古い記憶は何だっただろうか

昔の事過ぎて覚えていない

しかし、生きるのには大変な性質で生まれて来たのは覚えている

それだからこそ、この世界で生きてやろうと心に誓った

人々を騙せ

自分を確立させ続けろ

名前を変え、国籍を変え

逃げ続けろ

1989年11月6日

キリル

こんな夜遅くでもいるんだな

ニコラス

勿論

ニコラス

どうせ君は来ると思って待ってた

キリル

そうか

ニコラス

今日はこの国を東西に分けた壁の話でもしようと思って

キリル

ベルリンの壁だな

ニコラス

その通り

ニコラス

きみは、ベルリンの壁がいつ造られたか知ってる?

キリル

1961年の8月13日だ

ニコラス

流石、よく知ってるね

キリル

このくらい常識だ

ニコラス

ベルリンの壁は東ドイツの人間が西に逃げ出さないように造られたんだ

ニコラス

それも深夜に急いで有刺鉄線で囲ったから市民は皆驚いていたよ

キリル

そうだろうな

キリル

私は生まれていなかったから知らないが

ニコラス

そうなの?若いとは思ってたけど

キリル

私は先月で24だ

ニコラス

と、なると1965年生まれだね

ニコラス

若いなー

キリル

お前も大して歳は変わらないだろう

ニコラス

んー、まぁね

ニコラス

壁の話の続きだけど、そのせいで職場が西ドイツにあった人、たまたま仕事や用事で壁の外から中にいた人は戻れなくって大変だったんだよ

ニコラス

人によっては自力で脱出したり、正当な手続きをして戻った人もいたけど

ニコラス

いつのまにか壁がコンクリート製になってたんだよね

ニコラス

それに脱国できないように君達も来た

キリル

悪かったな、来て

ニコラス

僕はあんま気にしてないけれど、国民の大半にとっては憎悪の対象だろうね

キリル

やっぱりか…何となく察しはついていたが

ニコラス

世の中全ての仕事が好かれる訳じゃないからね

ニコラス

必要悪とでも思っておくといい

キリル

必要悪……か

ニコラス

この国の人にとってはね

キリル

そういえば、お前は外国人なのか?

ニコラス

僕?

ニコラス

ただの東ドイツ人だけどどうして?

キリル

なんか、客観的だと思っただけだ

ニコラス

そうかな?

キリル

ああ。

ニコラス

それで、壁があるから僕ら東側の人間は外へは出られない

ニコラス

仕事とかの都合なら出られそうだけど、外国、特に西側に行く必要のある仕事なんて政府だけだろうね

キリル

お前なぁ…

キリル

この国は西側の思想を受けないように敢えて外とは隔離されているんだ

キリル

我が祖国でも西側とやり合うのは大変なんだ

キリル

この国なんてすぐに西に潰される

ニコラス

凄く見下されたもんだねこの国も

キリル

最近は旅行の許可くらい出しているだろう

キリル

人々の要望に答えて

ニコラス

旅行って言っても行けるのは東側の国だけじゃないか

キリル

それは当たり前だ

ニコラス

僕は二年前にユーゴスラビアに行ってきたけど、どっちかというとフランスに行きたかったよ

キリル

あんな西側の国はダメだ

キリル

それにあの国の奴らの自国No. 1精神が気に食わん

ニコラス

それは君もだろう

キリル

そんな事はない!

キリル

私はこの国も好きだからな!

ニコラス

はいはい

キリル

ところで、どうしてお前はフランスに行こうなどと思ったんだ

ニコラス

まぁ、昔住んでたからかな

キリル

むかし…

ニコラス

そう、昔

ニコラス

何年前かは忘れちゃったけどさ

ニコラス

それにしても壁は邪魔だなぁ

キリル

おいさっきも壁の役目は説明したぞ

ニコラス

もしも、東側以外の国にも行けるようになったら、君はどこへ行きたい?

キリル

私か?

キリル

私は…

キリル

西ドイツに行ってみたいな

ニコラス

思いっきり西側の国だね

キリル

悪いな、それ以外思いつかなかった

ニコラス

いいんじゃない?

キリル

そうか?

ニコラス

もし西ドイツに行くのなら、僕も一緒に行こうかな

キリル

騒がしくなりそうだ

ニコラス

大丈夫さ、なるべく大人しくしておくよ

キリル

信じられないな

キリルはそう言って少し笑った

彼が笑うところを見るのは初めてかもしれない

キリル

私は帰る

キリル

それと、明日は仕事が休みだ

ニコラス

じゃあ、一日中話せるね

キリル

そうだな、では…

キリル

お前の過去を聞かせてくれ

ニコラス

…考えておくよ

やがてキリルは、夜の街へと消えていった

ニコラスの家

ニコラス

キリル…ね

ニコラス

ここ数日間話してきたけれど、これほどの人間とは

ニコラス

思想に影響されやすく、人の考えの虜になる人間

ニコラス

覚えておく価値がありそうだね

ニコラスは、一冊のノートを開いた

そこには、今まで会ってきた人物の中で彼が気に入った人の名が書かれていた

ニコラス

そういえば、キリルのフルネームは聞いた事なかったな

ニコラスは、ノートにこう書き加えた

ニコラス

きっとこの国も滅ぶ

ニコラス

そのうちソ連もね

ニコラス

次は、どこへ行こうかな

いや、敢えてどこへも行かずに

『西ドイツ』で生活しよう

この作品はいかがでしたか?

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コメント

4

ユーザー

途中他の国を馬鹿にするような表現が出てきますが、あくまでもストーリー上の事であり実際の国、作者の意思は関係ありません。それと、西というのは西側諸国(資本主義のアメリカやイギリス)を插す言葉でありスペイン(西班牙)の漢字表記ではありません。

ユーザー

ニコラスが、スパイなのか気になる!

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