白いシーツの匂い。消毒液の匂い。 長いことここにいたけど、 今日でこの病室ともお別れだ。 でも、嬉しさよりも少し怖い。 外の世界に戻ることが。
はやと
病室のドアが開いて、颯斗が入ってくる。 いつものように明るい笑顔。でもその瞳は、 いつもより優しく、どこか心配げだ。
えいく
素直に言えたのは、 ずっとそばにいてくれた颯斗だったから。
鏡を投げて怪我させた日だって、 怒らなかった。 泣きながら俺を抱きしめてくれた。
はやと
そう言って、荷物を肩に担ぎ、 俺の手をぎゅっと握ってくれる。 この手があるだけで、 外の世界に踏み出せる気がした。
はやと
永玖が靴を脱いで、ゆっくりと部屋に上がる。 病院の閉ざされた空間と違って、 光が入るこの部屋は、どこかあたたかい。
えいく
はやと
永玖がソファに座って、ぐるっと部屋を見回す。 どこか落ち着かない様子だけど、 表情は穏やかだ。
えいく
はやと
えいく
黙ってた永玖が、ポツリと一言。
その言葉が何よりも嬉しかった。 ぎゅっと抱きしめると、 永玖も小さく笑って腕をまわしてくる。
夜、隣に並んで横になるベッド。
えいく
はやと
えいく
重なった指先、そっと絡めた手。 病気がすぐに治るわけじゃない。 けど、この時間があるなら、 どんな朝も怖くないと思えた
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!