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男の働く運送会社には

奇妙なウワサがある

「赤い女に気をつけろ」

まったく…

変なウワサだよな?

男だらけの職場

暇を持て余した誰かが

勝手に 言いふらしたのだろう

そう考えた男は 気にもとめなかった

そんな、ある日

おい聞いたぞ

なにを?

例の「お屋敷」に行くんだって?

お屋敷…?

ああ、あのデカい家か。テレビを届けに行くんだ

気をつけろよ

なんで?

あの家の住人が「赤い女」かも知れないだろう?

男は馬鹿らしいと思った

だが、ウワサを信じる者は 複数いる…

(こんな事で、揉めるのもな…)

そうだな。
まあ気をつけるわ

ここが、例のお屋敷か…

ピーンポーン♪

間の抜けた電子音が 辺りに響き渡る

はい…

屋敷から現れたのは

どこか幸薄そうな 美しい女

テレビをお届けに来ました

今から門を開けますので、中まで運んでください

ガチャ

お邪魔します

どうぞ

では…

どこに置きましょうか?

こちらの部屋に…

女について玄関を上がると

部屋の熱気が気になった

ここに、置いてください

わかりました

周りの家具に当たらぬよう

慎重にテレビを置く

それで、配線は…

あの…私…

そのような事は、苦手で…

別料金で、こちらが手伝う事もできますが?

では…お願いします

わかりました

10分後

できました

早いですね

ありがとうございます

(それにしても)

(暑いな…)

ノドが渇いたでしょう?

よければ、どうぞ

ありがとうございます

女の用意した茶に 手を伸ばした時

「気をつけろよ」

……っ

同僚の言葉が 男の頭をよぎった

……

目の前の女は

真っ赤な口紅をつけている

(この人の雰囲気と…)

(全然違うな…?)

いえ!

やっぱり、お客さんに貰うのは、ちょっと…

そうですか…

では、中庭を見てくれませんか?

中庭、ですか?

私、植物が好きで

中庭を温室にリフォームしたんです

(それで、こんなに暑いのか)

その中でも、1番大切にしている花が

今にも咲きそうなんです

一緒に…見ませんか?

でも、仕事が…

男は躊躇したが

温室に必要な電気類も

ぜひ、教えてくださいね?

それなら!

女の美しさと

都合のいい言い訳で

その迷いは 霞んで消えてしまった

こちらです

これは…すごい

咲き誇る数多の樹木に 目を奪われる

とても…家庭の庭とは思えません…

ふふっ…

木には触らないで下さいね?

かぶれることも、ありますから…

ははっ!

こんなガタイなんで。そうそう、かぶれませんよ

そうですか…?
では、この先に

はい

(この葉っぱ…邪魔だな?)

膝にあたる葉を 手ではらいながら

女のあとを着いていく

ここです

あの、これは?

これは、花のツボミです

えっ…?

これが?

そうです

今にも…咲きそうでしょう?

(この女には…)

(何が見えているんだ?)

あはは…

ただの箱じゃないですか…

それは、どう見ても…

巨大な 『箱』

そうね?お腹が空いたのね…

女は愛おしそうに 箱を撫でると

不意に振り返った

ひ…ひぃっ!

その目は“ヒト”では なかった

ば、化け物っ!!

男は慌てて逃げようとした

だが

うぅ…か、体が…

動かない…!

あら…イラクサに触れたのね?

大丈夫よ…死ぬような毒じゃないわ?

さあ…お食べなさい?

ギィィ…

女が箱のふたを開けると

中から見覚えのあるものが 伸びてきた

た、助けてくれっ!!

それは…

桃色の細く長い舌

ネバつく塊が男の体中に まとわりつく

ぐわあああ!!

離せ!離してくれっ!

長い舌は男の全身を 捕らえると

ずる…ずるり…

戻ろうとする

元いた『箱』の中へと

やめろっ!

連れて行くな!!

俺を…

食べないでくれっ!!

男がどんなに暴れ叫んでも

所詮、箱は箱

ぐおぉぉぉぉ!!

男の体は足もとから 飲み込まれ

両手の先が見えるのみ

バキ…ボキ…

グチャ…

事の顛末を見ていた女は

嬉しそうに微笑む

外側に折れ曲がった 10本の指は

血に染まり まるで花びらのよう

とても綺麗に咲いたわね?

私の好きな…

赤い花

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コメント

9

ユーザー

赤い花....見てみたい((

ユーザー
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