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雨の雫が傘を濡らして視界を遮る。

携帯を見つめても、来て欲しい通知は来ない。

メイ

─先輩から連絡来ないなあ

クロ

…いつの間に連絡先交換したんだ…?

メイ

この前〜

メイ

…ほんとに何やってんだろ、先輩

クロ

…いかがわしいことしてたりして

メイ

…ありそうだからやめてよ……

クロ

そろそろ帰ってきそうだけどな

メイ

…あの雨の中行って

メイ

リップ落ちなかったのかな…

クロ

ほらだから男の人といかがわしいこと─

メイ

してないから!!!

クロ

してないと信じたい、だろ

メイ

…うん

そんな話題の会話を、かれこれ二日ほど繰り返している。

あの人のことなので何をしているか分からないのが、 余計に心配事を増やさせるのだ。

メイ

…あーあ、

メイ

いつになったら帰ってくるのかね

クロ

別にひとりでも生きていけるだろ、あの人は

メイ

……僕はひとりぼっちにさせちゃだめだと思う

クロ

…そうか?

メイ

先輩、強いひとに見えるけど、

メイ

なんだか、

メイ

……何かを、抱えてる気がするの

メイ

真っ黒で、重くて、

メイ

辛い、何かを…

─瞳も、言動も、雰囲気も。

先輩のすべてが、 何か霧のようなもので覆われている。

昔の僕と、似たような境遇。

何を見つめても、何をしても、

自分の抱える闇に縛られて。

メイ

…だから、救ってあげたいの

メイ

きっと、先輩人に頼るの苦手だと思うんだ

メイ

だから、

メイ

クロが助けてくれた時みたいに

メイ

僕も、…僕たちで、

メイ

先輩、助けよう

クロ

……メイらしいな

クロ

…うん

クロ

助けよう、ふたりで

手元から振動を感じた。

会話の初め方がゆるい。 さすがは先輩である。

クロ

噂をすれば

メイ

…この前行ったアイス屋さんに来いだって

クロ

行くか

メイ

…三日もいなくなっといて

メイ

迎えきてとか…

メイ

先輩らしい

メイ

…どこだろう

クロ

……あれじゃないか?

メイ

いや、あれは違うよ

メイ

先輩つり目だもん

クロ

そこ?

メイ

ここってどこよ…

クロ

…ちょっと待て、なんで普通に会話してる?

メイ

…ん?

微かな甘い香り。

振り向くと、つやつやの黒髪が目に入る。

伊織

…ただいま

クロ

……あ、ちゃんと傘さしてる

メイ

めちゃくちゃ綺麗…

メイ

がっつりメイクしてる……

伊織

そうそう

伊織

きらきらでかわいいやろ〜?

…多才だなあ。

伊織

ふふ、じゃあ帰ろっか

クロ

なんで迎えに来たんだ…?

伊織

さみしいから

……あざといなあ。

─長いまつ毛に、煌めくアイシャドウ。

リップで色づいた唇は色っぽく息を吐く。

一体何をしていたのか言及する勇気がなく 戸惑っていたところに、

クロ

…一体何してたんですか?

クロ

メイクやら香水やら…

クロ

たばこの匂いもします

クロ

誰と何したのか、教えてください

と、クロが勇気ある発言をしてくれた。

先輩は戸惑いの表情を浮かべ ついに諦めたのか、

伊織

………いかがわしいこと…

と呟いた。

まさかの伏線回収に声を荒げてしまう。

メイ

はあ!?

メイ

あのね先輩そういうことは大人になってから

伊織

ん?

伊織

やだね、やめない

先輩はにやついた。

本当に、自由人すぎて… 手が回らないよ。

クロ

だめですって…

伊織

…なんで?

伊織

なんでそういうことすんのがだめなの?

無垢な雰囲気を纏う先輩は目を細める。

僕らが言葉に詰まっていると、 その笑みは次第に消えていく。

伊織

…ねえ、なんで?

メイ

…それは…

メイ

……っ、その

伊織

恋人同士ですることやから?

伊織

未成年がすることやないから?

─考えていたこと全部言われてしまった。 もうそれを咎めても通じない。

伊織

…別にええやろ

伊織

したとて失うものなんかない

伊織

捧げるものもない

伊織

使い古した身体をどこに使おうが何もない

伊織

…愛してくれる人なんて、

伊織

辛いこと、忘れさせてくれる人なんて……

伊織

もう、俺にはおらんの

こちらをじっと見つめて涙を零す先輩の目は、 感情がごちゃごちゃになって渦巻いている。

寂しさ、悲しみ、それと─

─雨のせいなのかは知る由もない、 膨大でどんよりとした、闇。

伊織

…お願い

伊織

俺の身体くらい、好きに使わせて

その、渦巻く闇に吸い込まれる。

背中を、冷や汗が伝う。

先輩の震える声は、胃の中に留まることを知らない。

伊織

それでも…

伊織

それでもね

伊織

忘れらんない

伊織

辛いことが、まだ頭の中で

伊織

ぐちゃぐちゃになる

伊織

…お願い、たすけて……

ふらふらと空気に漂う声は、雨でかき消されていく。

闇が渦巻く瞳をどうにかするなんて、 弱すぎる今の僕には、できない。

あめあめふれふれ、追憶とともに【創作if】

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コメント

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常連ニキ…助かっておくれ…

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