「今宵、満月の日に会いましょう。」
作.御子柴 璃都。
Story.1
永瀬 紬
はぁ、はぁ、はぁ!!
胸が苦しい。
けど、走らなきゃ。
走らなきゃ。
もうあの家は嫌だ。
逃げなきゃ
逃げなきゃ。
私はただひたすら前へ
振り向かないで
ただ
前へ。
永瀬 紬
…ここどこ?
辺りを見回すと
一面、木々だった。
永瀬 紬
(…、何か不気味…)
まるで不思議な森に迷い混んだようだ。
永瀬 紬
…
寒い
その場にしゃがみこんだ。
大丈夫か?
頭上から
透き通るような綺麗な声が降ってきた。
永瀬 紬
…わっ!
上を見上げると狐の面をした男が私を見つめていた。
永瀬 紬
ごめんなさいっ
永瀬 紬
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!!
永瀬 紬
…
…ふっw
めっちゃ謝るじゃんww
高校生ぐらいの男の子だろうか
お腹を抱えて笑っている。
…あーw
ごめんごめん
ごめんごめん
大丈夫、怪しいものじゃないんでw
男は狐のお面を外した。
永瀬 紬
…綺麗。
銀色の髪の毛に
目は透き通るような青い色。
永瀬 紬
お兄さん、綺麗!!
…えw
ありがとう、お嬢ちゃん。
永瀬 紬
私、永瀬 紬(ながせ つむぎ)
永瀬 紬
小学1年生!
紬か。
可愛い名だな。
永瀬 紬
お兄さん、どこに住んでるの?
秘密
永瀬 紬
じゃあ、何歳なの?
秘密。
永瀬 紬
えー、何それ
永瀬 紬
紬ばっかり!!
自分から言い出したんだろw
ていうか、なんでこんな森に
永瀬 紬
…
永瀬 紬
ちょっと嫌な事があって。
永瀬 紬
に、逃げたくてっ
永瀬 紬
ずっと走ってたら…
永瀬 紬
ここに来ちゃってて……
ポンッ。
永瀬 紬
…っ!
お兄さんは私の頭を優しく撫でてくれた。
永瀬 紬
…うぅ…。
涙が込み上げて
頬をゆっくりと伝っていった。
…そっか。
辛いだろうに。
永瀬 紬
…うん。
いつでもここにおいでよ
俺、ここにいるからさ
永瀬 紬
お兄さん、ここに住んでるの?
…だから秘密って言ったでしょ。
お兄さんは意地悪するような顔で笑った。
永瀬 紬
…
永瀬 紬
分かった
永瀬 紬
いつでもここに来ていい?
うん、良いよ。
永瀬 紬
…じゃあお兄さんが寂しくならないように
永瀬 紬
ここに遊びに来るねっ!!
永瀬 紬
お兄さん、一人じゃ寂しいでしょ?
…っ!
…
そっか、寂しいのかもしれないな。
永瀬 紬
…そうだよ、お兄さんも一人ぼっちなんだね!!
永瀬 紬
私と一緒だ。
…へぇ、そっかw
紬、
俺、いつでもここにいるよ。
だから、ここが紬の癒しの場所になったら良いな。
永瀬 紬
…うん。
…じゃあ
家にお帰り。
森の出口まで送ってあげる。
永瀬 紬
…うん。
ここを真っ直ぐ行ったら
道路に出れる。
永瀬 紬
ありがとう、お兄さん!
うん。
私は繋いでいたお兄さんの手を離した。
永瀬 紬
ねぇ、本当にここにいる?
…うん、いるよ。
お兄さんはまた狐のお面を被った。
…じゃあね、紬。
永瀬 紬
(…あ。)
永瀬 紬
…名前!!
永瀬 紬
名前、何て言うのっ?
永瀬 紬
(やっぱり、秘密って言われるのかな)
セト
永瀬 紬
…セト?
セト
僕の名前はセト。
永瀬 紬
セト!!
永瀬 紬
かっこいい名前っ!!
永瀬 紬
またね、セト!
セト
(…呼び捨て…)
セト
(まっ、いっか。)
どうせ
10年ぐらいの付き合いだし。
ーto be continuedー