伊藤雛乃 確保。
槙彩香
じゃっ、詳しく聞かせてもらうわよ〜
槙彩香
雛乃センパイっ
伊藤雛乃
もぅ…恵梨香に似たんだから
伊藤恵梨香
……あの、本当に雛乃センパイなの…?
恵梨香ちゃんが珍しく涙目になった
伊藤恵梨香
ギュッ
伊藤雛乃
!?
伊藤雛乃
え、えりかちゃん?
伊藤恵梨香
良かった!!生きてて…
伊藤雛乃
…生き、てて?
伊藤恵梨香
うんっ!
伊藤雛乃
…あ、あの〜
伊藤雛乃
非常に言いにくいのですが…
伊藤雛乃
私 死んでないです
槙彩香
へっ!?
伊藤恵梨香
えええっ!?
菊口文也
うるさいのダブルパンチ
槙彩香
ちょ、だまって!
伊藤恵梨香
し、死んでないって…?
伊藤雛乃
…だからね
伊藤雛乃
私は…少しの間隣町に行っていて…
伊藤雛乃
それで、心配性な部員ちゃん達が
『雛乃先輩は死んだのかもしれない』『もしかしたら死んでしまったのかも』から
『伊藤雛乃は死んだ。』
伊藤雛乃
と、確信されたの…
私は恵梨香ちゃんにブンブン揺さぶられながらも苦笑い
伊藤恵梨香
そ、そんな
伊藤恵梨香
ひどい…
伊藤雛乃
いや、みんなが心配性だったから…
伊藤雛乃
ネガティブな子もいたし…
菊口文也
…にしてもなんで隣町に滞在していたんだ?
菊口文也
それに、引っ越しなら教師も知っていた筈じゃ…
伊藤雛乃
…ひ、ひじょーに言い難いのですが…
伊藤雛乃
家出…なんです
槙彩香
…いっ、
彩香・恵梨香 家出〜!?
菊口文也
あーうるさいうるさい
文也くんは耳をパタパタと塞ぎ
伊藤恵梨香
…なっ、なんで家で何かっ
槙彩香
そーですよ!
槙彩香
あんな優等生気質な雛乃先輩が不良みたいな家出って…
ふたりともガタンとテーブルを叩いた
伊藤雛乃
あ、あはは…
伊藤雛乃
なら、最初から話すわね
幼い雛乃
まっ、まま!
伊藤妙子
ん〜?なあに?
幼い雛乃
…こ、これ!
幼い雛乃
買って…ほしいの!
伊藤妙子
ああ、いいわよ
伊藤妙子
さて、文具店に行きましょうか
幼い雛乃
……!
幼い雛乃
わあいわあいっ!
昔から何不自由なく暮らさせて頂いていた
でも 父は厳しく俗に言う…毒親らしく
『俺が入れなかった公立の小学校に入れ』だの
『雛乃という名前は俺の初恋相手だ』だの
私のすべてがすべて 父に侵されていたんです
悲劇が起きたのは小6のとき
伊藤雛乃
…母が、死んだの
槙彩香
っ!?
伊藤恵梨香
え…それって
伊藤朝雄
此処がお前の部屋だ 雛乃
中学生の雛乃
机に辞書にワーク…
中学生の雛乃
……あ、あの、おとう、さま?
伊藤朝雄
ああ、お父様だぞ
中学生の雛乃
ご、娯楽などは…
伊藤朝雄
ああ?娯楽だ?
伊藤朝雄
そんな下らないもの…
伊藤朝雄
ああいや、詰め過ぎはよくないな、
伊藤朝雄
お父様が悪かった
伊藤朝雄
…そうだ 今度の休日 お父様が御本を買ってやる
伊藤朝雄
さあ好きな御本を3冊ほど取ってくれ
中学生の雛乃
わあ…!
中学生の雛乃
お父様っ!私…漫画が読みたいですっ
伊藤朝雄
…!?
伊藤朝雄
馬鹿者!!
伊藤朝雄
漫画だあ?
伊藤朝雄
女の子らしくないではないか!!
伊藤朝雄
小説にしろ
中学生の雛乃
ひゅっ…
中学生の雛乃
は、はひい…
伊藤雛乃
お父様 只今戻りました
伊藤朝雄
ああ。お帰り 雛乃
伊藤雛乃
今日はお父様にみせたいものがありまして〜…
伊藤雛乃
じゃんっ
伊藤雛乃
御本をテーマにした絵画です!
伊藤雛乃
私が書いたんです───
伊藤朝雄
おふざけはやめろ!
伊藤朝雄
お前は本を読んでいるだけで良いのだ!雛乃!
お父様に縛れられるのが嫌で 私は
伊藤雛乃
家出をしたんです
槙彩香
なにそれ!ひどい!
伊藤恵梨香
だから家出をした、と
伊藤雛乃
はい…
伊藤雛乃
で、長く隣町に滞在して 行方不明だ行方不明だと父が騒いだんです
菊口文也
へえ、それで死んだ、と
槙彩香
文也!!
伊藤雛乃
あはは、いいんです
伊藤雛乃
…私なんて 死んだも同然ですよ







