バスは景色を置いていってしまう
いつも目に入るけど 実際にはいったことはない美容院
もっと幼い頃は主婦で溢れていた 寂れたスーパーマーケット
そのスーパーマーケットを退けた 5年前くらいにできた大型デパート
全然行かない古着屋らしい店
よく渋滞する十字路
ブランコしかない公園
見上げるほど高いマンション
フレームは淡々と切り替わっていった
秋斗
……あれは
あれは 某ファーストフード店か
看板には一文字だけ アルファベットが堂々とある
そういえばこの辺りは
つい最近、行ったことがある
色々な意味で生きた心地がしなかったが 今ではいい思い出だ
あの時は 一弥先輩が考えなしに突っ込んで行って 結果的に雨音ちゃんと関わった
雅也先輩からもアドバイスを貰って 雨音ちゃんの悩みを聞きだせた
そのおかげか分からないけど 何とか解決まで導いたんだ
何だかんだ 二人には世話になってしまっている
だから 憎みきれないのかもしれない
俺は思わず笑顔になった
信号が変わる
バスのエンジンは騒々しくなって
次の瞬間には また景色が置いていかれた
……
気付いた頃には 一面緑しかない退屈な景色だった
どうやら 景色は置いていかれずに済みそうだ
俺はシートに深くもたれかけて スマホを見る
12時30分
そろそろお腹が空いてきた
隣を見る
一弥
一弥
秋斗
凄いいびきをかいて寝ている 先輩の姿があった
この人は、強制的に俺を連れてきた
それはもうよかった
俺も話の内容が気になったし ちょっとした旅行感覚にもなったからだ
……それでも
一弥
一弥
2時間はバスに揺られているが 先輩は乗り込んだ5分後には眠った
この何もない景色のなか
俺は一人、暇を潰すしかなかった
秋斗
秋斗
秋斗
一弥
秋斗
後輩はため息をついた
一枝
一枝
秋斗
秋斗
秋斗
一枝
一弥
一弥
秋斗
一枝
一枝
一枝
秋斗
秋斗
一枝
一枝
秋斗
一枝
秋斗
秋斗
一枝
襖が閉まった
綺麗な畳敷きの部屋に残された 俺と一弥先輩は向かい合って顔を見た
一弥
一弥
秋斗
一弥
一弥
秋斗
一弥
両手を後ろに床について あぐらをかいた先輩は10分前に起きた
バスが終点についた時にも この人はふごふごと寝息をついていた
体を揺すって起こし 時折、よろける体を支えながら
頼りないナビゲーションを受けて 先輩のお婆さん家に着いた
名前は一枝(かずえ)というらしい
60代にしては若々しく お婆さんというよりお母さんに見える
古い家とは聞いていたが 掃除は余念がなく行き届いており 座敷は畳も張り替えられ綺麗だった
そうして 一連の挨拶も終わった後の印象は 何も変わったことのない普通の人と家
霊的体験とは皆無そうだった
俺もあぐらをかいて 楽な姿勢になる
秋斗
秋斗
秋斗
秋斗
何か考え込んだまま反応がない
怪訝に思って様子を見ていると ゆっくりと顔を上げた
一弥先輩は口を開いた
一弥
秋斗
一弥
秋斗
一弥
秋斗
一弥
一弥
秋斗
一枝
秋斗
一弥
話している最中に 横からぬっと一枝の腕が伸びた
お盆から二つのコップを取って 俺たちの前に並べる
真顔だった
一枝
一弥
一枝
秋斗
一枝
一枝
すっと一枝は立ち上がる
すり足で畳を歩いて行って 再び襖は閉じられた
ピシャッ
今度は力が強かった
秋斗
一弥
秋斗
一弥
一弥
秋斗
一弥
一弥
一弥先輩はコーラを一気に飲んだ
俺も喉が渇いていたので飲む
冷たくて美味しかった
一弥
秋斗
一弥
一弥
秋斗
秋斗
一弥
秋斗
一弥
秋斗
秋斗
一弥
秋斗
秋斗
貴方の選択で結末は変わります 運命を切り開きましょう
A.「38」という数字に気をつける
B.「38」と呟くまで待ってみる
C.「38」について追いかけて聞く
さあ…… 貴方の運命や如何に
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