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バスは景色を置いていってしまう

いつも目に入るけど 実際に入ったことはない美容院

もっと幼い頃は主婦で溢れていた 寂れたスーパーマーケット

そのスーパーマーケットを退けた 5年前くらいにできた大型デパート

全然行かない古着屋らしい店

よく渋滞する十字路

ブランコしかない公園

見上げるほど高いマンション

フレームは淡々と切り替わっていった

秋斗

……。

……あれは

あれは 某ファーストフード店か

看板には一文字だけ アルファベットが堂々とある

そういえばこの辺りは

つい最近、行ったことがある

色々な意味で生きた心地がしなかったが 今ではいい思い出だ

あの時は 一弥先輩が考えなしに突っ込んで行って 結果的に雨音ちゃんと関わった

雅也先輩からもアドバイスを貰って 雨音ちゃんの悩みを聞きだせた

そのおかげか分からないけど 何とか解決まで導いたんだ

何だかんだ 二人には世話になってしまっている

だから 憎みきれないのかもしれない

俺は思わず笑顔になった

信号が変わる

バスのエンジンは騒々しくなって

次の瞬間には また景色が置いていかれた

……

気付いた頃には 一面緑しかない退屈な景色だった

どうやら 景色は置いていかれずに済みそうだ

俺はシートに深くもたれかけて スマホを見る

12時30分

そろそろお腹が空いてきた

隣を見る

一弥

……ふごぉぉぉぉ。

一弥

すぅぅぅぅぅ。

秋斗

……。

凄いいびきをかいて寝ている 先輩の姿があった

この人は、強制的に俺を連れてきた

それはもうよかった

俺も話の内容が気になったし ちょっとした旅行感覚にもなったからだ

……それでも

一弥

ふぅぅぅぅっすぅぅぅぅ。

一弥

……ぐごっ。

2時間はバスに揺られているが 先輩は乗り込んだ5分後には眠った

この何もない景色のなか

俺は一人、暇を潰すしかなかった

秋斗

……。

秋斗

……前言撤回。

秋斗

やっぱり、俺が先輩のお世話をしてるみたいなもんだ。

一弥

ふごっ。

秋斗

ふごっじゃない!!

後輩はため息をついた

一枝

あーら、いらっしゃい。

一枝

そちらが、電話で聞いていた秋斗くん?

秋斗

あ、初めまして。

秋斗

一弥先輩と同じ高校に通ってる秋斗と言います。

秋斗

今日はお世話になります。

一枝

あはは。こちらこそね。

一弥

何かしこまってんだ。秋斗。

一弥

今日は泊まる予定だろ。ずっとそうやって固まるつもりか。

秋斗

で、でも……。

一枝

そうよ。もう古い家なんだからくつろいでいってね。

一枝

周りは緑ばかりで何もないし退屈かもしれないけど。

一枝

あははは。

秋斗

は、ははは。

秋斗

じゃあ、お言葉に甘えて座らせていただきます。

一枝

どうぞどうぞ。

一枝

じゃあ、なにか飲み物持ってくるけど好きなものある?

秋斗

ああ、いえ。おかまいなく。

一枝

じゃあ、コーラとかあるけどそれでいいかしら。

秋斗

ああ、はい。

秋斗

お願いします……。

一枝

ふふ。じゃあごゆっくり。

襖が閉まった

綺麗な畳敷きの部屋に残された 俺と一弥先輩は向かい合って顔を見た

一弥

どうだ。

一弥

何か変なところはあるか?

秋斗

いえ。特に何も……。

一弥

だろう。受け答えだって普通にできてるし、60超えても一人で生活できてんだ。

一弥

何も問題なんかないように見える。

秋斗

一点を除いて、ですか。

一弥

そういうこった。

両手を後ろに床について あぐらをかいた先輩は10分前に起きた

バスが終点についた時にも この人はふごふごと寝息をついていた

体を揺すって起こし 時折、よろける体を支えながら

頼りないナビゲーションを受けて 先輩のお婆さん家に着いた

名前は一枝(かずえ)というらしい

60代にしては若々しく お婆さんというよりお母さんに見える

古い家とは聞いていたが 掃除は余念がなく行き届いており 座敷は畳も張り替えられ綺麗だった

そうして 一連の挨拶も終わった後の印象は 何も変わったことのない普通の人と家

霊的体験とは皆無そうだった

俺もあぐらをかいて 楽な姿勢になる

秋斗

それにしても、本当に外は何もないところでしたね。

秋斗

ずっと畦道が続くだけ……。

秋斗

今日1日、どうやって過ごしますかね。

秋斗

……一弥さん?

何か考え込んだまま反応がない

怪訝に思って様子を見ていると ゆっくりと顔を上げた

一弥先輩は口を開いた

一弥

……俺は直接、その「38」が何なのか聞いてみたことがある。

秋斗

えっ。一枝さんにですか。

一弥

ああ。

秋斗

それで、なんと?

一弥

答えは "分からない" だったよ。

秋斗

分からない?

一弥

本人も言い終わった後、記憶が曖昧になって数字の意味がわからなくなってるみたいなんだよ。

一弥

だから知る術は、正にその時が来た時にしかわからねぇな。

秋斗

その時って……

一枝

はい、どうぞ。

秋斗

うわっ。

一弥

うおっ。

話している最中に 横からぬっと一枝の腕が伸びた

お盆から二つのコップを取って 俺たちの前に並べる

真顔だった

一枝

今日、暑いから水分補給はしっかりとりなさいよ。

一弥

あ、ああ。気をつけるよ。ばあちゃん。

一枝

秋斗くん。

秋斗

は、はい!

一枝

また喉乾いたら、冷蔵庫開けて飲み物とっていいからね。

一枝

遠慮なく。

すっと一枝は立ち上がる

すり足で畳を歩いて行って 再び襖は閉じられた

 ピシャッ

今度は力が強かった

秋斗

……。

一弥

……。

秋斗

な、なんか怒ってましたか?

一弥

分からん。

一弥

だが、前から「38」について触れようとすればあの態度になる。

秋斗

え、そうなんですか。

一弥

「38」のこととなると急に記憶が曖昧になるのか、それとも本当に怒ってるのか……。

一弥

それは分からんがな。

一弥先輩はコーラを一気に飲んだ

俺も喉が渇いていたので飲む

冷たくて美味しかった

一弥

……なあ。

秋斗

なんですか?

一弥

それにしても、さっきの様子は少しおかしかったかもしれん、

一弥

もしかしたら、俺たちが話していた通り、"その時" なのかもな。

秋斗

え!!

秋斗

それってつまり……。

一弥

ああ。今が「38」について話し出すチャンスかもしれねぇってことだ。

秋斗

でも、どうすれば……。

一弥

それはお前に任せる。

秋斗

そ、そんなぁ。

秋斗

大事なところを人に任せるなんて大人気ないですよ……。

一弥

あ?

秋斗

……やりますって。

秋斗

うーん、そうだなぁ。

貴方の選択で結末は変わります 運命を切り開きましょう

A.「38」という数字に気をつける

B.「38」と呟くまで待ってみる 

 C.「38」について追いかけて聞く 

さあ…… 貴方の運命や如何に

【選択肢で結末が変わる】ホラー短編集

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