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毒親の子

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毒親の子

第1話 - 毒親の子第1話

215

2020年09月08日

#ミステリー

#不気味

#呪い

田中どろり

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215

田中どろり

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とある高校の夏休み明け…

佐藤

はぁ～、疲れた！

佐藤

こ～んなに暑い時期に

佐藤

運動会の練習なんてなぁ

国木田

『体育祭』よ、佐藤くん

国木田

運動会は中学校まででしょ？

佐藤

はいはい。体育祭、体育祭

佐藤

それで明日の日程は…

佐藤

1、2時間目が体育祭の練習

佐藤

3、4時間目が文化祭の準備

佐藤

祭り続きで5、6時間目は～

佐藤

総合・よこよこ神祭りの講習

佐藤

はぁ？なんじゃこりゃ？

橋田

よこよこ神祭り知らねえの？

佐藤

いや、普通知らんだろ…

橋田

小学校とかでもやってただろ

佐藤

やらねーよ。どんな文化だよ

佐藤

俺がいたとこではこんなのなかったよ

佐藤

え？これ、マジでやる感じ？

佐藤

冗談とかじゃなくて？

国木田

…この地域特有のお祭りよ

国木田

市外の人たちは

国木田

知らなくてもしょうがないわ

橋田

嘘だろ？他の学校じゃあ

橋田

よこよこ神祭りはやらねぇの？

佐藤

やるわけねえだろ

橋田

いや…でもさ

橋田

祭りをやらないと…

橋田

神様からの祟りが…

佐藤

祟りだあ？ないない

橋田

違うって。これマジもんだし

橋田

俺もガキの頃は疑ってたけど

橋田

小6の頃さ──

橋田

ほら、ガキってサンタを信じてるよな

橋田

でも、本当はいないもんだと気づいたら

橋田

信じる奴をからかいたくなる

橋田

よこよこ神？いるわけねぇよ

橋田

俺だって最初はそう思ってた

橋田

それで、度胸試しでよこよこ神の祠に

橋田

イタズラしようと考えたんだ

佐藤

待て待て、祠があるのか？

橋田

そりゃ神様だからな

国木田

どの学校にもひとつはあったわ

国木田

この高校の裏山には

国木田

たしか神社があったような

橋田

おっと、話が脱線した

橋田

ともかく俺はイタズラを決行した

橋田

勇者になった気分だったな

橋田

しかし大人どもは大騒ぎ

橋田

犯人捜しが始まったんだが

橋田

いきなり学校が休校になって

橋田

警察に消防に総動員

橋田

まるで凶悪犯罪扱いだ

橋田

俺は怖くなって自首したんだが

橋田

大変なのはそこからさ

橋田

親父は各所に平謝りで

橋田

俺は親父に本気で殴られて

橋田

そのまま病院送りだ

佐藤

それはやりすぎだろ

橋田

でも、誰も親父を責めなかったよ

橋田

むしろ温情的なんだとさ

橋田

病院には医者のほかに

橋田

神社の人まで来てお祓いさ

佐藤

おいおい、お前の話だと

佐藤

怖いのはよこよこ神より

佐藤

それを信じる大人ってか？

橋田

いや、ここまでは前振りだよ

橋田

ヤバいのはここからさ

橋田

退院して家に帰った俺は

橋田

妙な声を聞いたんだ

よこよこ…よっこよこ…

佐藤

神様のお出ましか

橋田

茶化すなよ、ガチな方だぞ

橋田

声のする方を見てみると

橋田

泥まみれの足跡が

橋田

こっちに向かってきてんだよ

橋田

姿は見えない、足跡だけなんだ

よこよこ…よっこよこ…

橋田

それは俺の前を通っていった

橋田

なにもせず、足跡だけを残してな

橋田

そしてその直後…

うわぁぁぁぁぁぁぁ！

橋田

絶叫…親父たちの声だった

橋田

慌ててそっちに行ってみると

橋田

親父やおふくろが倒れていた

橋田

体中に泥の足跡がついてたよ

橋田

神様に、踏み荒らされたんだ

橋田

──ってなことがあったんだ

佐藤

お前は無事だったの？

橋田

神様には何もされなかった

橋田

だが打ちのめされた気分だよ

橋田

それ以降、俺はよこよこ神を

橋田

信じるようになったわけだ

佐藤

大人の仲間入りってわけか

橋田

大人たちも同じだろうさ

橋田

ガキの頃に誰かがやらかして

橋田

思い知らされたんだろう

国木田

まったく、悪しき習慣だわ

国木田

集団パニックもいいところよ

国木田

神様だなんて、馬鹿馬鹿しい

橋田

っておい！お前は信じてねえの？

橋田

俺、被害者で当事者だよ？

国木田

なら余計に信憑性に欠けるわ

国木田

ま、お祭りに文句はないけど

佐藤

ってかお祭りって何すんの？

国木田

文化祭初日の夜に

国木田

みんなで火を囲んで踊るのよ

佐藤

キャンプファイヤーかよ

国木田

露店も出るし近所も文句は言わない

国木田

催し自体は悪くないでしょ？

佐藤

そこは神様、万々歳だな

橋田

だけどこれだけは忘れるなよ

橋田

よこよこ神は実在する

橋田

いつも俺たちを見てるんだ

佐藤

ただいま～

母親

地域行事は結構ですがね！

母親

そんなおかしなこと──

母親

学校とはそもそも──！

母親

あら、のぶくん。おかえり

佐藤

電話？

母親

ちょっと学校にね

母親

いいですか！

母親

生徒たちを地域行事に──！

母親

変な信仰を押しつけて──！

佐藤

（よこよこ神祭りのことか）

母親

私は中止を要求──！

母親

PTAに提言──っ！

佐藤

（親がモンペだと大変だな）

佐藤

（先生の視線が痛いぜ）

母親

また電話しますからね！

ガチャ！

母親

ねえ、のぶくん

母親

学校で、変な行事があるって

母親

聞いちゃったんだけど…

佐藤

ん？俺は知らないけど

母親

そう…ならいいわ

佐藤

（触らぬ神に祟りなし、か）

佐藤

（母さんの前では黙っとこ）

父親

ただいま～

母親

おかえりなさい、あなた

母親

ねえあなた、高校の話だけど

母親

よこよこ神祭り、知ってる？

父親

懐かしいな。今年もやるのか

佐藤

（あっ、飛び火しやがった）

母親

ただの地域行事なんでしょ？

母親

生徒が強制参加だなんて…

父親

いや、でも楽しいぞ？

母親

こんな行事、おかしいわ！

母親

中止させるべきだと思う

父親

馬鹿な真似はするな！

佐藤

！？

母親

ど、どうしたの大声なんて…

父親

いや、すまない

父親

ただ、部外者が口をだすのは…

母親

部外者ですって？

母親

あの子が通う高校の話よ！

父親

そういうことではなく…

母親

自分の子を預ける以上──

父親

だからそうじゃない！

母親

突然なんなのよ、もう！

佐藤

（父さんが声を荒げるとは）

佐藤

（いや、それよりも…）

母親

のぶくんが心配じゃないの？

父親

心配だよ、お前のこともな！

佐藤

（この不毛な争いが終わるまで）

佐藤

（自分の部屋にでもいようかな）

佐藤

よこよこ神か…

佐藤

本当にいるのかは置いといて

佐藤

信じてる人は多いみたいだな

佐藤

父さんも、その1人なのか？

佐藤

父さんもうちの高校の出身…

佐藤

神を信じさせるものが

佐藤

なにかあるってことなのか？

佐藤

…いや、ちょっと待て

佐藤

市外の生徒はそこそこいる

佐藤

祭りを知らない奴も多いはず

佐藤

その親がクレームなんて

佐藤

珍しいことじゃないだろう

佐藤

だが祭りは今年まできちんと続いている

佐藤

よく廃れなかったもんだな

よこよこ…よっこよこ…

佐藤

…ん？なんの音だ？

よっこよこ…よっこよこ…

佐藤

これは…声？

よっこよこ…よっこよっこ…

母親

きゃぁぁぁぁぁっ！

佐藤

…母さんの声？

佐藤

大丈夫か、母さ…うおっ？

佐藤

たくさんの泥の足跡…

佐藤

ここ…家の中だろ？

母親

うっ…ううっ…

佐藤

母さん！…うえっ

佐藤

母さんの上に足跡…こんなに

佐藤

父さん、早く救急車を！

父親

だから、俺は言ったんだ…

父親

馬鹿なことはするなと…

佐藤

…………

佐藤

（正直なところ…）

佐藤

（母さんを襲った足跡より）

佐藤

（どこか納得した様子の）

佐藤

（父さんの方が怖かった…）

佐藤

なんなんだよ…くそっ！

佐藤

これが…よこよこ神の祟りなのか…？