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3月28日、水曜日

街には淡い光が差し込み、穏やかな風が吹いていた

公園前に停まった大型バスを見つめながら、美玖は数週間前のことをふと思い返していた

──それは、まだ肌寒さが残る時期

夕食の後片付けをしていた時だった

古寺 優雅

美玖、これ

優雅が美玖に封筒を差し出す

古寺 美玖

どうしたの?これ

古寺 優雅

エリカ先生の実家のチケットだってさ

古寺 優雅

アスカから預かったんだ

美玖は封筒を受け取り、中身を取り出す

そこにはしっかりとした素材の紙が4枚

『ダンジョンホテルCHIBANA 招待券』

古寺 美玖

そういえば、エリカ先生の実家って、有名なホテルだったね

古寺 美玖

もしかして、この時期に招待券ってことは…

古寺 優雅

そう、今回の交流会はここでやるんだってさ

古寺 美玖

わぁ…すごいね…

古寺 美玖

でも、交流会って言っても、結構な人数になるし、貸切になっちゃうんじゃないのかな?

古寺 優雅

俺もそう思って聞いてみたんだが、菜乃羽さん曰く、問題ないそうだ

古寺 美玖

流石知花家のご令嬢ね

古寺 優雅

そうだな

大人達が話していると、子供達はとある単語に意識を奪われていた

古寺 将風

にいに、ダンジョンってなあに?

古寺 凛空

ダンジョンはね!すっごくワクワクするところだよ!

古寺 凛空

ぼうけんだよ!!

古寺 将風

ぼうけん?

古寺 将風

おかしはある?

古寺 凛空

うーん、あるかも!

古寺 美玖

ふふ、2人とも楽しみみたいね

古寺 凛空

うん!すっごく楽しみ!

古寺 優雅

あのホテルはアスレチックや遊具なんかも充実してるからな

古寺 優雅

子供達も十分楽しめるだろう

古寺 美玖

そうだね

そこから家族全員で少しずつ旅行の準備を進め、楽しみを重ねてきた

──そして今日

ついに、交流会へ出発する日が来たのだ

Ep.40 いざ、ダンジョンホテル?!

運転手

招待客の皆さんはバスへ乗ってくださーい

四宮 アスカ

はーい!

四宮 祐希

はーいっすー!

四宮 抱羅來

はいはい、2人共静かにして

毎年行われている恒例の行事とはいえ、“ダンジョンホテル”は初めての会場

古寺家だけでなく、四宮家・目慈悲家・松澤家・祥氷家・吹雨希家……

おなじみの仲間たちも次々とバスへ乗り込んでいく

松澤 絋

あー!

松澤 絋

おやつのキャンディおとしちゃったー!

松澤 美結

はいはい、ママが拾ってあげるから早く乗って

松澤 絋

わかったー!

他の人達も続々バスへ入っていき、古寺家の面々も順番を迎える

美玖は胸を弾ませながら、荷物を抱えた将風と凛空の背中をそっと押した

古寺 美玖

それじゃあ、出発だね

古寺 凛空

うん!

古寺 将風

うん…!

運転手

発車します

運転手

座席に座り、シートベルトを外さないようにしてください

バスがゆっくりと走り出し、子どもたちの弾む声がすぐに車内いっぱいへ広がる

古寺 凛空

ママー!ほんとにダンジョンあるの!?

凛空が前の席から身を乗り出し、目を輝かせる

古寺 美玖

うん、あるみたいだよ

古寺 美玖

ゲームとかに出てくるダンジョンとは少し違うみたいだけどね

美玖の隣では、将風が膝に地図を広げている

古寺 将風

ママ、おかしのへやってどこ?

古寺 美玖

うーん、お菓子の部屋はないけど…

美玖は地図に指を差す

古寺 美玖

ここにお菓子の魔女はいるみたいだよ

古寺 将風

おかしのまじょ!

古寺 凛空

えー?!その魔女お菓子くれるかなー?

古寺 優雅

くれるかもな

古寺 美玖

あとでみんなで行こうか

古寺 将風

うん!

美玖達家族が話している近くでは、他の親子も会話を楽しんでいる

四宮 祐希

おれ、へびコースいくっす!

四宮 桜

おはなのおへやってある…?

四宮 アスカ

あ!ここにあるみたい!

松澤 絋

パパー!

松澤 絋

ぼうしのへやってどこー?

松澤 彰杜

ぼ、帽子の部屋??

そんな会話を聞き、優雅がフッと笑う

古寺 優雅

みんな、ほんとに楽しみなんだな…

古寺 美玖

そうみたいだね

優雅は美玖の顔を見ながら尋ねる

古寺 優雅

美玖も楽しみか?

その質問に美玖は少し驚きながら、笑顔で答える

古寺 美玖

もちろん

古寺 美玖

みんなで旅行…ってのも楽しみだけど

古寺 美玖

それより、優くんと、子供達と旅行に行けるっていうのが、すごく楽しみだよ

古寺 優雅

……そうか

優雅は少し照れくさそうに視線を外し、窓の外を見つめた

未だ収まらない子供達の歓声を聞きながら、ポツリと呟く

古寺 優雅

……それにしても、賑やかすぎて落ち着かないくらいだな

古寺 美玖

ふふ、うちの子たちは特にね

笑い合う二人を挟むように、凛空と将風はドキドキを分かち合っていた

古寺 凛空

将風!ここにライオンコースがあるんだって!

古寺 凛空

一緒に行こう!

古寺 将風

にいに、とおくてみえないよ

バスはそのまま、賑やかなまま、春の陽だまりをゆっくり進んでいった

バスがゆるやかに減速し、大きな建物の前で止まった瞬間──

四宮 祐希

ついたっすーーーーっ!!!

祐希の叫びが、誰より早く車内に響いた

続けて絋が窓に張り付き、叫びながら跳ねる

松澤 絋

うおおおおお!おっきい!

松澤 絋

おっきすぎるー!!

凛空は目を丸くし、将風はぽかんと口を開けたまま固まっていた

古寺 凛空

でっかぁ…

古寺 将風

おしろみたい…

ホテルの名は 『ダンジョンホテルCHIBANA』

外観はまるで巨大な遺跡のようで、玄関の両側には石造りのドラゴン像が翼を広げている

美玖も思わず息をのんだ

古寺 美玖

すごい……本当に“ダンジョン”って感じ……

古寺 優雅

だな…

隣で優雅も、ただただ建物を見上げていた

祥氷 菜乃羽

……お義父さん…また新しい像設置したんだ…

菜乃羽が肩をすくめた

一斉に外へ飛び出した子どもたちは、巨大な柱や壁の彫刻を指差して大騒ぎ

松澤 絋

なになに!!なんでドラゴンいるの!?

四宮 祐希

ここダンジョンってことっすか!?

古寺 凛空

すっごくはくりょくあるー!!

古寺 将風

たべられちゃいそう…

まるで遊園地に着いた子どもたちのテンションだ

アスカは怯える桜の手を握り、苦笑いしながらなだめる

四宮 アスカ

ほら桜、怖くないよ〜

柑夏はドラゴン像の足を撫でて楽しそうにしている

目慈悲 柑夏

みてみて〜ドラゴンさんだねぇ〜

目慈悲 柑夏

そうだねぇ〜

絋は友紀と美結の手を両方つなぎ、引っ張りながら誘導

松澤 絋

つぎはこっちだよ!!

松澤 美結

絋〜引っ張らないで〜

松澤 友紀

にいに…ドラゴンさんこわいよ…

そして──

祥氷 菜乃羽

みなさーん、まとまってくださーい!

菜乃羽が声を張ると、蒼が赤ん坊のるるを抱いたまま優しく補足する

祥氷 蒼

重い荷物を部屋に置いて、遊びに行こうか

その言葉に、大人達はホッと息をつく

古寺 優雅

そうだな…流石に宿泊用の荷物を持ったまま観光するのは体が辛い

古寺 凛空

えー?重くないよー?

古寺 美玖

それは凛空達の荷物は少ないからだね…

蒼と菜乃羽の指示に従い、それぞれチェックインをする

自動ドアが開くと、まるで別世界に足を踏み入れたようだった

広いロビーには、暖色のランプがぽつぽつと灯り、天井には大きな地図が描かれている

柱は古代神殿のように装飾され、壁には「モンスター討伐ランキング」らしき額縁まで掛けられていた

古寺 美玖

……ここ、ほんとにホテル?

美玖がぽそりと呟くほどの“冒険ギルド”感だ

ロビー中央には受付カウンターがあり──

その奥から、女性スタッフがにこやかに頭を下げた

ただ、やはり服装もホテルらしくはなく、ギルド職員のようだった

受付

ようこそ、旅の皆さま

受付

こちらはダンジョンホテルCHIBANAです

四宮 祐希

ギルドのひとっぽいっすーー!!

松澤 絋

わぁぁぁ…ほんもののぼうけんのとこ……!

スタッフは微笑んだまま、まるで物語の案内人のように続ける

受付

ご宿泊の皆さまには、ご予約券のご提示をお願いしております

松澤 美結

予約券?

首を傾げる美結達の背後から菜乃羽が受付に近づく

祥氷 菜乃羽

はいはーい、こちらですー

菜乃羽は慣れたように招待券を差し出す

女性スタッフはそれを受け取ると

受付

確認いたしました

受付

それでは、ギルドカードを発行いたしますので少々お待ち下さい

スタッフはニコッと笑うと奥へ戻っていく

するとアスカが声を発す

四宮 アスカ

ギルドカードって…めちゃくちゃ本格的じゃん!

祥氷 菜乃羽

そうだよ、お義父さんがこういうの好きで、すっごく凝ってるの

四宮 祐希

てことは、ぼうけんもできるっすかー?!

祥氷 菜乃羽

できるよ

松澤 絋

わーい!

話をしていると、スタッフがカードと鍵を持って戻ってくる

受付

こちらが皆様のギルドカードになります

受付

ご宿泊中はこちらのカードが身分証となりますので、紛失なさらないようにお願いいたします

四宮 祐希

はーいっすー!

古寺 凛空

はーい!

受付

続きまして、こちらがご宿泊部屋の鍵となります

受付

各パーティの代表者様にお渡し致しますので、こちらまで来ていただけますか?

松澤 美結

代表?

祥氷 菜乃羽

鍵だから大人が受け取った方がいいでしょ

古寺 優雅

確かに、そうだな

スタッフから各家族の大人が鍵を受け取る

受付

それでは、ご武運を祈ります

スタッフはにこやかにお辞儀をし、美玖達は指定された部屋へと向かう

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