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────そして、8月。

外は酷暑という言葉がぴったりなくらいに蒸し暑くなっていた。

店内はというと、変わらず人工的な涼の風が吹いている。

佐野さん

あー、それはこっちのやつ目指して変形するんだよ

佐野さん

ここまとめられるでしょ

さくら

(な、なんでこんなことに───!)

時は少し前に遡る。

さくらはひらにもこのことを話した。"このこと"とはもちろん、さくらの恋の話である。

そうすると、ひらはさくらが数Bが分からないと嘆いたのに対して佐野さんを斡旋した。

佐野さんは控えめに、俺も数学そんなできないけど…と苦笑しつつ、何故かいいよと言ってくれた。

そうして今、バイト終わり。先輩は藤谷さんが上がるのを待つらしく、空き時間で教えてくれている。

さくら

(な、なんか申し訳ないな)

さくら

(友達が協力してくれるのってこんなにヒヤヒヤするんだ…)

佐野さん

…うん、そう

佐野さん

そしたら?

さくら

一般項が…わ、合ってる

さくら

すご!!なんで分かるんですか!?

佐野さん

一応履修済みだから笑

さくら

私なんて前のテスト範囲でさえもう分からないのに…!

佐野さん

でも暗記得意なんじゃないの?社会できるんでしょ

さくら

そんなですよ…佐野さんはなんでもこなしそうですよね

佐野さん

どこが?俺も文系だけど、でも全然だった

さくら

国語だけですよね、点数勝手に取れるの

佐野さん

ね。俺も国語だけ得意だった

佐野さん

はい、じゃー、次は?

さくら

えっと…

さくら

ここがこっからこうなるのが分からなくて

佐野さん

答えは?

さくら

これです

佐野さん

あー…待ってね、ああ、なんかめっちゃ飛んでるね

んー、と声を漏らしながら、先輩はさくらの目の前のノートと答えを見比べる

なんとなくいつもより近い距離に、さくらは息が止まりそうになりながら、できるだけふつうの顔をした。

佐野さん

ここにこれが入るって考えたら分かる?

佐野さん

で、まあ、最後のはこれただ見やすく整理してるだけだから

さくら

あ、これが使えるからこうなるんですか!

佐野さん

そうそう

パッと顔を上げると、佐野さんと目が合う

たったそれだけが、さくらの鼓動をまた速くする。

ただ隣に座っていることさえもが、さくらにとっては特別なことだった。

と、そのとき、佐野さんに強めの衝撃が伝わった。

佐野さん

あ、颯真

藤谷さん

おつかれ央生くーーん

藤谷さん

あと、おつかれさくらちゃん。むずそうなことやってんね!

さくら

めっちゃむずいです笑むりです

藤谷さん

わはは

佐野さん

あといけそう?

さくら

はい!ありがとうございます!

佐野さん

うん、そろそろ俺たち行くね

佐野さん

まあ…また困ったら俺んとこおいで

佐野さん

じゃあおつかれ

藤谷さん

ばいばーい♪

さくら

っあ、はい、!ありがとうございます!

さくら

(「俺んとこ」、「おいで」、俺んとこ…おいで)

さくらはその言葉を頭の中で反芻した

見守っていたらしいひらが裏から出てくると、ひらは親指を立てて笑った。

ひら

はい。もー今日は帰しません。もう、話したいことが山ほどあります

 

空太助っ人ありがとーー!じゃなーー!

空太

ういお疲れい

空太は友達に向かってバスケのシューズを投げると、ふう、と息を吐いた。

空太

(やっぱ疲れんな、おもろいけど)

トントンとつま先を鳴らし、靴を履く

ロッカーが1番下なので屈んで上靴をしまう。

そこでダン、とロッカーから音が聞こえたかと思うと、視界には誰かの足があった。

空太

…?

のあちん

おーす。おつかれー。

顔を上げると、ロッカーにもたれかかったのあちんが、空太を見下ろしていた。

空太

…どうした?

のあちん

別にぃ?あたしがアンタと話すことくらいあるでしょ?

空太

あるけど…なんか違うんだろ?

のあちん

カンいーじゃんかよ

タッとのあちんはロッカーから自立し、空太に向かい合う。

のあちん

アンタこのままでいーの?

空太

…はぁ?

のあちん

カンのいい西岡クンが気付いてないわけないですよねぇ

のあちん

さくらのこーと。

空太

っ…え

のあちん

好きなんだろぉ取られたくないんだろぉ

のあちん

いつまでも見栄張ってないでさぁ

のあちん

早く告っちゃえよ。

空太

…いや

のあちん

なに、まだ言い訳?男らしくないぞ───

空太

俺が告ったって、振られるだけじゃん…

のあちん

…へっ?

空太

分かってるよ俺だって…

空太

ずっとかっこ悪りぃし…なんならダセェし?強がって好きなコにサイテーなことも何度も言ってんだよ

空太

でもダメだって分かってても好きじゃないふりしてずっと側にいてえから強がっちまうし

空太

でも今更アプローチ?とかできっこねえし!好きってバレたらもうこの距離失うしかねえし!

のあちん

ス、ストップストップ!!

のあちん

…な……なんて?

空太

空太

ごめん。帰るわ

のあちんは呆然として、空太の歩くのを見送った。

かと思いきや、ダッシュして追いついてきて、空太の袖を掴み、強引に振り返らせた。

のあちん

いや、遅いとかないから!!!

空太

…へっ?

のあちん

それまだ自分守ってるだけだし!

のあちん

取られて後悔するくらいなら、本気で追えよ!!

のあちん

お前そんなくよくよするやつじゃねーだろ!バカ空太!

それだけ言うと、のあちんは空太を追い越して帰って行った。

空太

(「遅いとか」…「ない」……)

空太

(「自分を守ってるだけ」……)

空太

…それも、そーか。

空太はふっと笑うと、やっと、強く足を踏み出した。

空太

(俺も、頑張んなきゃ。)

空太

(これじゃまだ…)

空太

(さくらに負けっぱなしだ。)

颯真

なーんか変な央生

央生

いきなり何?

颯真

いや?

颯真

お前って基本受け身じゃん。俺に色々言ってくるようになったのも最近だし

央生

まあ

颯真

そんな央生が、あんな出会ってすぐの女子に

颯真

「困ったらおいで」ぇ?ふ〜ん…

央生

え何嫉妬すか?笑

颯真

何でだよ笑

颯真

正直どーなん?さくらちゃんのこと、どう思ってんの

央生

え、ガチの話?

颯真

ウン

央生

別に…ふつうだけど

颯真

好きとかはねーんだ?

央生

好きって…いや、相手未成年だよ

颯真

"未成年"…か、生ぁ意気

颯真

お前だってこの間まで未成年だったろーが?なあ

央生

はいはい先輩

颯真

まあそういう考えはわかるけど…枷になるほどのことじゃねえよ

央生

颯真は俺が恋愛してんの見たいだけでしょ

颯真

あ、バレた?それはずっとそう

颯真

恋に燃えてる央生とかおもろ過ぎて

央生

言うけど、俺別に何も変わんないよ

颯真

んは!ぽいぽい

隣を歩いていたその男は、何気なくスマホを手に取った。

央生

多分時間を確認するのだろうと思っていたのに、なかなか彼は画面から目を離さない。

颯真

央生ー?

央生

ん?

颯真

────…

顔を上げて笑ったその男のその顔は

颯真

おぉい、DMの相手、誰だよ!

央生

へ?なんで

颯真

お前…分っかりやす!

颯真

ぜったい好きなコだろ!むちゃくちゃ嬉しそうじゃん!

央生

恋する人間の顔、そのものだった。

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コメント

1

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さくらちゃんは佐野さんに勉強を教えて貰えて嬉しそうで、空太くんはさくらちゃんとの関係を変えようと前を向き始めて、佐野さんは好きな人(?)からの連絡に喜んで……、複雑な三角関係…いや、四角関係になりそう……😵‍💫😵‍💫 恋は必ずしも成功するとは限らないもんね……うわー!これからどうなるんだろ??

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