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きっかけはそう、些細な事だった
偶然、本当に偶然僕が屋上の扉を開けたこと
それがすべての始まりだった
普段僕は昼食を屋上に続く階段で一人寂しく食べているのだが
この日はなぜか屋上の扉が少し開いていたのだ
どの学校でも屋上の立ち入りは禁止されており、施錠もされてるし屋上に続く階段も立ち入り禁止のひもみたいなのがかけられているだろう
うちの学校はひもは無いが施錠がされており普通は入れないようになっているはずだが、今日は違った
扉が少し開いており、屋上の景色がちらりと見れるようになっていた
不自然な状態であるのは明らかだが、普段閉まっている屋上の扉が開いている
そこに、僅かながらの好奇心が刺激されるのは僕だけではない
行くな、やるな、触るな。そういった行動を禁ずる言葉や隠されたものがあると人は無性に「それ」を犯したくなる
これが俗にいうカリギュラ効果というものだ
そして、僕はそのカリギュラ効果によって屋上の扉に手をかけて屋上にと進んでしまった
そこで目にしたのは柵に手をかける一人の女の子
スラっとした体躯に風で揺れる漆黒の長髪
良くは見えないが少し鋭い目つき、なのにどこか儚い雰囲気を感じる、そんな不思議な女性が立っていた
そしてその子はこちらに気が付き僕と目が合う
お互い今どんな状況なのかを把握するのに時間がかかり、時が止まる
整理できたのかその子は再び柵に手をかけ青い空を見上げる
風が強いためか流れる雲は早く、日差しが彼女を激しく照り付けていた
そんな光景に見惚れていたが、ふと我に返り彼女に声をかける
アキト
アキト
レイナ
アキト
レイナ
レイナ
レイナ
アキト
勢い任せに話した結果がこれだ
彼女の言う通り僕は彼女を微塵も知らない
そしてそれは彼女にも同じことが言える
これが入学初日ならば自己紹介などを行い、これから友達にでもなるようなら声をかけたことに意味はあるが
今この現状はそんな優しい世界の話ではない
赤の他人が、赤の他人に突然声をかけられているのだ
幸いここが学校であるからこの程度で済んでいるが、これが町中ならきっと地獄のような空気になっていただろう
もうあの場面で彼女との「会話」は終わっている
ならばやることは一つ、これ以上関わらないことだ
無理に話しかけてもそれはお互い苦しい思いをするだけ
だから、会話が終わったのなら大人しく引き返せばいい
頭ではそう結論を出したはずなのに体はそれとは真反対のことをしていた
アキト
アキト
アキト
レイナ
レイナ
レイナ
アキト
アキト
アキト
アキト
アキト
そっとしておけばいいのに気が付いたら口走っていた言葉
『また明日』なんてセリフは完全に余計なお世話だ
僕は一体何してるんだろうか……
今の僕と彼女を勝手ながらに重ねたから出た言葉なのか
発したその言葉はきっと僕が誰かに言ってほしかった言葉だったのだろうか
原因は分からないけど、ついて出た余計な言葉
言葉を出した僕も何故そんな言葉をかけたのか分からないまま屋上の扉を閉めて、数段降りた階段でお昼ご飯を食べる
今日のご飯は冷食のハンバーグでケチャップもついてたのに不思議と味はしなかった
翌日、僕は普段通り屋上前の階段で昼食をとる
昨日あんなことを言ってしまった手前今日に限ってここには来ないなんて選択は僕にはなかった
しかし、ここに彼女が来るかどうかは別問題ではある
結局のところあれは僕のお節介であり自分を慰めるために出た言葉でもあった
ただ自分が自分であるために他人を利用し、そのエゴで心を保とうとする
そんな保守的で卑しい心持ちの男から出た、綺麗事
期待せずいつものようにお弁当を開けて黙々と食べる
途中スマホを取り出してSNSに目を通す
気になっていたアニメの情報や最近ハマッているソシャゲの新キャラの情報
デイリー消化を終えて、動画アプリを開きイヤホンを耳にかけてお弁当に入ったおかずを食べていく
変わらない日常
昨日の出来事はその日常に少しノイズが入っただけ
それが毎日起きることはないし、起きたら起きたでたまったものではない
同じサイクルの日々の中で、その日の内容が少し変わったそれだけ
だけれども、嫌に記憶にこびりつく
普段言わないあんなセリフに、あんな態度に……
そして、名の知れぬ彼女のあんな表情……
昔からそうだ、関わらなければいいことに首を突っ込んで痛い目を見てきたのに僕はその経験を活かせていない
偽善者かもしれないけど、そういわれても反論もできないけどそれでも目の前で誰かが悲しい顔をしていたら僕は手を差し伸べてしまう
僕は馬鹿だ……。大バカ者だ……。
アキト
アキト
レイナ
レイナ
アキト
誰かが僕に話しかけてきた
その声の主は僕は知っている、だって昨日僕がお節介で声をかけたその人なんだから……
アキト
レイナ
アキト
レイナ
アキト
アキト
アキト
レイナ
レイナ
レイナ
アキト
アキト
アキト
レイナ
レイナ
アキト
荷物を階段の端に寄せて自分もそちら側に寄る
アキト
レイナ
そういい彼女は僕の横を通り過ぎ屋上のカギを難なく開ける
レイナ
レイナ
アキト
レイナ
レイナ
レイナ
レイナ
アキト
アキト
レイナ
レイナ
アキト
レイナ
アキト
これがすべての始まり