朱里(あかり)
私の家族は無類の温泉好きで 全員が休みとなると決まって 温泉に行く程足繁く通っていました
朱里(あかり)
お母さん
お父さん
その日は紅葉を見ながら 温泉を楽しもうと 露天風呂が人気の温泉旅館に 行くこととなりました
温泉というのは昼間に あまり人が居ないもので 私達の他には客がいませんでした
朱里(あかり)
お母さん
朱里(あかり)
お父さん
いい天気だったから 外の空気を吸いながら入る露天風は気持ちがいいだろうと期待を胸に 母親と脱衣所へと向かいます
脱衣所には綺麗にカゴが並び 掃除もされている状態でした
気持ち良く脱衣所で 服を脱いでいると
お母さん
朱里(あかり)
母親の背中に向かって言いましたがそれよりも心の中では 広い露天風呂を独り占めできる 喜びでルンルンです
朱里(あかり)
早く服を脱いでしまおうと シャツのボタンに手を かけた時でした… 脱衣所の空気が変わったのです
先ほどまではいい雰囲気だったのが急に重い空気へと変化しました
朱里(あかり)
それでも早く露天風呂に 入りたいとの強い気持ちが 強い私は気にせず脱衣所から出て 露天風呂へと向かいます
外に出るとカラッとした すがすがしい空気が漂います
朱里(あかり)
軽く体を洗った後 温泉のお湯を確かめて 露天風呂へと入りました
両目を瞑り全身で温泉の 気持ち良さを感じると
朱里(あかり)
ふと両目を開けると目の前は 白い湯気が漂っています その湯気の中にうっすらと 人影のようなものが見えました
朱里(あかり)
いくら両目を瞑っていても 人が入ってくれば僅かでも足音は するでしょうしお湯の中に 入る時でも水の音はするのに
人影はグレーのような色で 湯気でハッキリとは見えませんが 女性のシルエットをしています 女風呂なので当然です
朱里(あかり)
髪の毛は頭の上で一つに結んでいて20代後半か30代前半のような 若い感じがしました
私はお湯を手ですくい 肩にゆっくりとかけている その女性の人影をただ見ていました
朱里(あかり)
いらぬ妄想をしながら両目を瞑りまた開けた瞬間 私は鳥肌が立ちました
朱里(あかり)
目の前から女性の人影が いなくなっていたのです
両目を瞑ったのはほんの1~2分 その間全く物音一つせず ドアを開けた音もしません
異常な事態に私は温泉どころでは なくなってしまいました
急いで露天風呂から出て 脱衣所へと向かうためにドアの方を見れば脱衣所に人がいます
朱里(あかり)
朱里(あかり)
ホッとしつつも脱衣所の ドアへ手をかけた時後ろに人の 気配を感じて振り向くと 誰もいなかった
朱里(あかり)
今まで出したこともない 声を出しながら脱衣所に 駆け込んで急いで浴衣を身に付け 外へと出ました
朱里(あかり)
廊下を出てロビーに行く手前 母親とバッタリ会いました
お母さん
慌てて走ってくる事に 疑問を持った母に 私が先ほどの話を報告します
すると丁度通りかかった フロントの方が寄ってきて
フロントの人
〔見た〕というだけで それ以上の事は無いですが 度々女性の幽霊が客の前に 現れるのだそうです
朱里(あかり)
朱里(あかり)
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