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#ギャンブル
りんご
904
19
朽華 歌仙
78
コメント
1件
第3試練、由香利と莉乃のペア、本当に胸が締め付けられました…。由香利の「マルでお願いします!」という必死の祈りと、莉乃の「助かった」という安堵――そのずれが痛いほどで。幼い頃から一緒だった2人の距離が、一瞬で断ち切られる怖さ。そして、死んだ由香利の輪郭が薄れていく感覚、ゾッとしました。残る菜々美と穂乃花のやりとりも、次の「慈悲」の予告と相まって、この先どうなるんだろう…と手が止まりました。続き、すごく気になります。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
由香利は、なかなか莉乃の袖を離せなかった。
納富由香利
和久井莉乃
その「たぶん」が、由香利をさらに不安にさせる。
だが、もう引き返せない。
2人が向かい合って座る。
金属製のベルトが伸び、胸元、腰、両手首を固定した。
納富由香利
和久井莉乃
莉乃の声は、普段より少し硬かった。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
2人の前に、黒い半透明のパネルが浮かび、それぞれ違う問題が映し出された。
由香利のパネルに表示された、“莉乃に関する問題”。
【SYSTEM】
納富由香利
納富由香利
由香利の頭に、過去の記憶が並び始める。
莉乃から、彼氏や好きな男の子の話は聞いたことがない。
それに、去年の臨海学校。
お風呂で、莉乃が妙に近くにいた気がする。
納富由香利
考えるほど、わからなくなっていく。
一方、莉乃のパネルには、“由香利に関する問題”が表示されていた。
【SYSTEM】
和久井莉乃
莉乃は顔をしかめた。
由香利は昔から空想癖が強く、怖がりで甘えん坊だった。
だから、“妄想日記”という言葉は、妙にしっくり来た。
けれど、それが事実かは別だ。
和久井莉乃
和久井莉乃
和久井莉乃
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
2人の頭上の装置が黒く光り、矢先が頭頂部を狙う。
由香利は目を潤ませた。
納富由香利
パネルの端に、2桁の数字が浮かぶ。
60。
59。
58。
時間が減っていく。
答えなくても、間違えても死ぬ。
由香利は莉乃を見た。
小学校から一緒だった。
泣けば、面倒くさそうにしながらも助けてくれた。
だから、自分が莉乃をいちばんよく知っていると思っていた。
けれど、今は違う。
目の前の問題が、幼馴染みという言葉を黒く塗り潰していく。
【SYSTEM】
和久井莉乃
最初に答えたのは、莉乃だった。
少し遅れて、由香利も口を開く。
納富由香利
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
いったい、どこまで把握されているのだろうか――
その言葉に、生徒たちの心が冷えた。
【SYSTEM】
和久井莉乃
納富由香利
2人は神にも縋る思いで、パネルを見つめる。
文字が切り替わる。
由香利――
不正解。
莉乃――
正解。
納富由香利
由香利は、椅子に縛られたまま身体をばたつかせた。
納富由香利
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
納富由香利
莉乃には、何もできなかった。
自分は正解し、助かった。
けれど、由香利は死ぬ。
事実と感情が、胸の中でずれていた。
幼馴染みが死ぬのに、身体はまず生き残ったことに安堵している。
和久井莉乃
納富由香利
由香利の頭上の装置から、矢が射出された。
短い金属音。
次の瞬間、矢が頭部を直撃する。
納富由香利
それが、最後の言葉だった。
涙を浮かべた目が焦点を失う。
由香利は椅子に固定されたまま、前へ項垂れた。
黒い部屋に、重い沈黙が落ちる。
和久井莉乃
莉乃は由香利を見ていた。
小学校から一緒だった。
泣き虫で怖がりで、いつも甘えてきた。
鬱陶しいと思ったことは何度もある。
けれど、見捨てたことはなかったはずだった。
和久井莉乃
安堵が先に来た。
そのことが、莉乃自身を傷つけた。
そして、次の瞬間。
和久井莉乃
記憶の中の由香利の輪郭が、わずかに揺らいだ。
名前も、死んだこともわかる。
目の前にいるのが由香利だということもわかる。
けれど、小学校からの思い出が、黒い水に沈むように遠ざかっていく。
和久井莉乃
そこで思考が止まった。
何を思い出そうとしたのか、一瞬わからなくなった。
黒い人影が、壁の奥から現れた。
由香利へ近づいてベルトを外し、物のように身体を持ち上げた。
片手が力なく垂れる。
その指先は、さっきまで莉乃の袖を掴んでいた。
菜々美は見ていた。
生島菜々美
生島菜々美
小さく呟く。
覚えておくために。
この部屋に奪われないために。
新倉穂乃花
穂乃花が隣で呟いた。
新倉穂乃花
菜々美は頷けなかった。
頷けば、認めることになる気がした。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
莉乃の身体を固定していたベルトが外れた。
莉乃は由香利が運ばれた方を見る。
そこにはもう何もない。
俯いたまま、テーブルを離れた。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
“黒の間”の光が、さらに深く沈んだ。
爽香と弥生は、すでに特別ルームへ進んでいる。
残された16人だけが、次の試練へ向かう。
菜々美は、黒いテーブルを見つめた。
理解。
この試練は、本当に誰かを理解するものだったのだろうか。
秘密を当てること。
隠された事実を暴くこと。
誤解を突きつけること。
それで命が決まる。
理解という言葉が、ひどく冷たかった。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
慈悲。
菜々美の胸に、嫌な予感が走った。
このゲームが差し出す慈悲など、きっと優しさではない。
誰かを助けるふりをして、誰かを見捨てさせるような試練かもしれない。
黒い部屋の壁が、音もなく開いた。
その向こうには、また動く床が続いている。
菜々美は、穂乃花と目を合わせた。
新倉穂乃花
生島菜々美
2人は、それ以上何も言わず歩き出した。
背後で、開いた壁が閉じる。
そこにいた少女たちの気配も、音も、少しずつ遠ざかっていった。
第3試練終了――
生徒ナンバー08・貝塚絹玖 脱落。 生徒ナンバー13・近藤姫羅莉 脱落。 生徒ナンバー27・納富由香利 脱落。
残り18名。