TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

証言通り 侵入するのは容易だった

鍵はかけられておらず 誰もいない

ドアを開けてすぐに、リビングボードが見える

前に進むと その隣にツインベッドがあった

丁寧にベッドメイキングがされていて 部屋自体が綺麗だった

埃の一つも見当たらない

清潔ではあるが どこかそれだけに無機質だ

生活感がまったくない

そのなかでも目を引くのは 大きなワークデスクであった

机上には大量の本や紙束がある

パッと目を通してみても さっぱり意味のわからないものばかりだ

……

加賀春樹

僕は何をしているんだ…。

こんなことは、許されないだろう

そう

僕はいま、新城夫妻の部屋にいた

許可など取っていない

無断で部屋に侵入したのだ

そして 新城賢太郎の机を調べている

これもすべて 疑念からくるものだった

あの冷静な推理に 立ち去る際の不穏な笑み

どうしても、信用ができない

いや、信用したいからこそ 今のうちに容疑から外れてほしいのかもしれなかった

加賀春樹

……だったら。

どちらにせよ もう後戻りはできない

そう決め込んで 開き直って徹底的に調査した

机上に乗った書籍や資料の見出しに目を通す

難しい内容のものばかりで 特に異変はない

他には 小さな時計や鏡が置かれていたり ペン立てが置かれていたり コースターが置かれていたり

写真立てが置かれていたり

加賀春樹

……幸せそうだな。

写真の中には 笑顔の新城賢太郎と秋穂が写っている

もう一つの写真立てには 無表情の例の双子が写っていた

見惚れるほど 写真の中の人物達は皆綺麗だった

僕はそれを見ると 途端に自身が汚らわしく思えた

ここは荒らしてはいけないのだ

この家族達だけの神域

そっとしておくべき場所……

加賀春樹

そうだ。ここは立ち行ってはいけないんだ。

加賀春樹

それに、僕はもうやるべきことを終えた。

加賀春樹

新城さんの容疑は、ただの思い違いだったんだ…そうに違いない。

納得……

出来ればよかった

やはり、引っかかる

本当に調査は十分なのか?

やるからには、徹底的に

そう決めたはずだ

しかし 良心が痛むという現実がある

……

……ならば

加賀春樹

ここで、最後だ。

加賀春樹

これで何も出なければ、もう調査なんかいらないんだ。

加賀春樹

そう、しよう…。

ワークデスクの引き出しに手をかけた

鍵はついていない

別荘だからか 本当に新城賢太郎は警戒していなかった

加賀春樹

い、いくぞ。

ゆっくりと、引き出しを開けていく

手には汗が滲んでいた

心臓が脈打つ音が聞こえる

何を緊張しているのだ

大丈夫

何もないはずだ

自身にそう言い聞かせて 今度は勢いよく引き出しを開けた

カラカラカラ

難なく開いた

そこにあったのは……

加賀春樹

……。

加賀春樹

また、写真か?

 一枚の紙片が裏返っている

他にも雑多な物が入っている

別に 何かを隠しているような気配でもない

なんて事はなかったのだ

加賀春樹

な、なんだ。

加賀春樹

結局、新城さんに怪しいところなんてなかったんじゃないか。まったく。

そう言いながら その裏返った写真をめくって見てみた

次の瞬間 僕の脳内に電流が走った

加賀春樹

う、うわぁぁっ!!

加賀春樹

こ、こいつは……!!

加賀春樹

どう言う、ことだ!?

加賀春樹

なぜ、僕は……!!

その写真に写っていた人物

それは……

???

私のことですかな?

加賀春樹

なっ!!お、お前!!

???

いやあ、昨日ぶりですかねぇ。

そう

新城賢太郎と著名人との会合写真 その脇に映る男

それが、この男だった

そして僕はこの男のことを……

???

知っていたというわけですか。

???

加賀春樹くん?

加賀春樹

い、いま、思い出したんだよ。

加賀春樹

そりゃあ忘れているわけだ。

加賀春樹

あんたとは、話したこともなかったんだからな。

???

ふっふっふ。確かに、面識はあるけれども会釈くらいしかしていなかったかな。

加賀春樹

お前の名前は。

加賀春樹

"佐久間浩樹"(さくま ひろき)だな。

佐久間浩樹

ご名答だね。春樹くん。

橘財閥会長・橘真(たちばな まこと)の秘書を務めているのが、この佐久間浩樹という男の正体だ

新城賢太郎と橘真は以前から交友があり 新城賢太郎の弟子のような立場にある僕も何度か顔を合わせたことがある

しかし 先程この男自身が言った通り、特別な関わりはなく、ただ面識はある程度の仲である

僕の名前を知っているのはまだしも なぜ僕の部屋に侵入していたり、関わりを持とうとしているのか

そもそも この男は今の事態を把握しているのか

いや

すっかり思い込んでいたのだが 新城家側が佐久間を公的に招待して今この場にいることを把握しているのか

ことの男について 考えれば考えるほど、分からなくなった

謎は膨らむばかりだ

佐久間浩樹

困り果てていますねえ。そんなに悩まなくてもいいのですよ。難しい話ではないのですから。

加賀春樹

ちょっと待て。

加賀春樹

確かあんたは心が読めたな?

佐久間浩樹

ええ、ええ。貴方のことなら手に取るようにわかります。

加賀春樹

なら、いま僕が考えた質問に全て答えてくれよ。そうじゃないと、あんたとは関わるつもりもないし、信用もできないからな。

佐久間浩樹

お堅い青年ですねえ。私の方がもう少し柔軟な考えができそうです。

加賀春樹

無駄口はいい。

加賀春樹

答えてくれよ。

佐久間浩樹

……ふう、まったく。

佐久間浩樹

貴方の部屋に入ったのは、私が貴方を助けるためなのですよ。機会を失えば間に合わない可能性もあるんです。

加賀春樹

僕を、助ける?

佐久間浩樹

それが、私が貴方と関わる最大の理由とも言えます。

加賀春樹

待ってくれ。それをちゃんと説明してくれないと、さっぱり分からない。

加賀春樹

守られる理由なんて、少しもない。

佐久間浩樹

残念ながら、説明はできないのですよ。

加賀春樹

だからなぜだ!?

佐久間浩樹

そう、感情を昂らせないで。

佐久間浩樹

私自身も随分ともどかしいと言わざるおえない状況です。強いて言うなら、"口止め"をされていると言いましょうか。言い方を変えるなら、"脅迫"です。

加賀春樹

き、脅迫だと?

 この男が誰かに脅迫されている?

 一体、誰に、そして何故?

佐久間浩樹

もちろんですが、今お考えになられたことに対しても答えあぐねます。

加賀春樹

……。

加賀春樹

分かった。取り敢えずそれはいいとして、だ。いま何が起こっているのかを知っているか、そして新城家側はあんたがいることを知っているのかを教えてくれないか。

佐久間浩樹

前者はyes。後者はnoです。

加賀春樹

……ますます、そうなるとあんたが怪しく思えてくるんだが。

佐久間浩樹

まあ、私を疑ってくれても全然構わないわけです。それでも差し支えは微塵もないのですからねえ。

加賀春樹

そんなことを言って、随分と余裕なんだな?発言毎に、疑惑は膨らんでいくばかりだぞ。

佐久間浩樹

ふっふっふ。結構結構。

佐久間浩樹

それと、私が前回言ったことをちゃんと覚えてくれていますか?

加賀春樹

……。

加賀春樹

あんたの正体を見極めれば、あんたを殺すことができて、真相さえも分かってしまうって話か?

佐久間浩樹

おお!!
予想以上の記憶力です!!

加賀春樹

なら、いま既に正体を見破った。

加賀春樹

この言葉の真意も説明してもらう。

佐久間浩樹

ふっ。ふふ。ふっふっふ。

「はっはっはっは!!」

佐久間は大笑いをした

そして馬鹿にしたように 顔と指を横に振って否定した

佐久間浩樹

貴方は何も分かっていない。

加賀春樹

……嘘をつくな。約束を守れないなら僕はあんたともう関わらないぞ。

佐久間浩樹

人に質問ばかりしていないできちんと自分で考えてみなさい。

佐久間浩樹

私の真意は名前が分かった程度の話で済むはずがないでしょう?

佐久間浩樹

そんなものは、仮初のようなものですよ。

加賀春樹

何だと?

佐久間浩樹

謎を解く鍵を、既に貴方は何度も目にしてきているのです。

佐久間浩樹

しかし、私もこればかりは確かではないのですが、貴方の買った本の内容に何かヒントになることがあるかもしれませんねえ。

加賀春樹

それは一体……。

佐久間浩樹

あと、あの少女達には積極的に関わってみてはいかがです?

加賀春樹

少女達に?

佐久間浩樹

ええ。事件の解明につながる証拠を持っているかもしれませんね。

佐久間浩樹

…さて、そろそろ失礼致します。

加賀春樹

ま、待ってくれよ!!

佐久間浩樹

はい?

加賀春樹

あんたは。

加賀春樹

あんたはこの事件の"犯人"が分かっているのか!?

佐久間はニヤリと笑った

そして、こんなことを言った

佐久間浩樹

"分かっているし分かっていない"という答え方しかできませんよ。貴方に、この意味がわかるといいですね。

佐久間浩樹

では、ご機嫌よう。

佐久間は寝室の窓を開けて 枠に足をかけて登った

ご丁寧にも後ろ手で窓を閉め そのまま飛び降りた

2階とはいえ ここはかなりの高度がある

生身で落ちれば、無事では済まない

慌てて駆け寄るが、結果は同じだった

加賀春樹

……まったく!!

加賀春樹

ここに来てから、意味がわからないことだらけじゃないか!!

また、あの男は消失していた

マーダーゲームZERO

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

5

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚