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前哨戦

137 - 前哨戦 #137 アズキの過去①

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2024年01月04日

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私は下僕だった

 

私の祖先はアンカー家に買い取られ下僕として働いていた

下僕だからもちろん普通の生活はできない

激務をこなしてやっと最低限のお金をもらえる

アンカー家は昔気質な人間が多い

そういう教育を施され続けてきているから

アレンやナギサは異質

多分あの2人みたいな人間は何十年に数人しかいない

 

余談はそこまでにして話を戻そう、私の家系、ガーナは何故か女しか生まれない

そのため祖先は主であるアンカー家の男と交わり代々女を残す

そしてまたその子孫もアンカー家の男と交わり女を残す

旧世界なら法に触れそうなことを続けて生き延びてきたのが私の家系だ

 

アンカー家のお堅い連中は私達をただの女としか見ていない

そして女である以前に下僕

祖先の半分以上は処刑されて生涯を終えている

主であるアンカー家当主に死罰を命じられる

理由は様々だけど大抵理不尽

不敬だのなんだのと騒いでみたり、

容姿が老いで衰えると用済みだと殺されたり

人の心なんてありゃしない

私達はまるで人間じゃないみたいな扱いだった

 

私の母も例外なく下僕

そして私の母はアレンやナギサの祖父になる人物に強制され関係を持ち孕んだ

後に生まれるのが私だ

拒否すれば殺されるから任意と言いながら選択権なんてない

死ぬか身体を許すか

後者を選び続ける母を見て育った私、

下僕の私は物心が付く頃には生きることに執着するようになっていた

どんなに身体を滅茶苦茶にされようと、

心をズタズタに引き裂かれようと、

この命が尽きなければ無傷と変わりない

心の傷は他の考え事で誤魔化せる

身体を無茶苦茶にされても痛みに耐えれば乗り越えられる

まだ私は生きていられる

 

もちろん死にたいとも思った

祖先と例外なく下僕として務める私は自ら命を断ちたいと何度も思った

でもできなかった

私が処刑されるのを防ぐために母は何度も何度も身体を許した

獣と大差ない邸に勤める男に痛めつけられた

心身ともに、

毎夜毎夜強要される時もあった

それに耐えてまで私を生かそうとする母を見た私は、

何時しか自殺なんてものは頭から捨てていた

そこまでして繋がれた命、

私には到底断つことなんてできない

齢17で私を産んだ母は私が14の時、

母は31の時、

処刑を宣告された

私の容姿が大人になってしまったからか、

それとも母が衰え始めたからか

用済みだと言わんばかりに宣告された

 

処刑を宣告された数日後、

母は私を連れ邸から抜け出した

名家の警備が緩いはずもなく逃避行の途中、

母は惨殺された

私は逃げた

母の最後の言葉、

「生きて、アズキ」

それが心の支えとなるかのように、

私の呪縛となるかのように、

ずっと私の胸に、頭に残る

こんな最悪の形で私の下僕生活は終わった

 

名前も知らない、顔も知らない、

母が殺され、私は逃げたことで主が下僕のガーナ家の人間を処理に使う風習はアレンの祖父の代で絶たれた

けど私の心には残り続ける

痛い、苦しい記憶が、

わずか10歳の頃、

名も知らない男に強要されたこと

拒否すれば殺すと脅されたこと

何時間も痛く、苦しく、辛く、怖く、

多少心地よい時間を過ごしたこと

今振り返ればトラウマでしかない

 

そうして1人世界に放り投げられた私はただ生きることにした

死ななければ生きている

苦しいと感じるならこんな心いらない

捨てたかった

感情も心も思想も

邪魔だから

生きるだけの生活に必要ないから

 

幸か不幸か能力者だった私はそれを生かすべく祓霊者となった

そうして死と生の瀬戸際に何度も触れていくうち、

私は感情も心も思想も薄れていった

辛い過去は風化する

痛い傷はそのうち治る

そうして下僕時代よりはるかに多い報酬で食い繋ぎ、

ただ生きてきた

 

2年前、

これも幸か不幸か、

出会ってしまった

私の運命を変える人に

ジュラト・グラビティに

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