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――バルコニー。

誕生パーティーでの情報収集に 行き詰まったウェンデッタが 出会ったのは、

ミステリアスな青年 『ノクトル』。

ノクトル

――物心ついたときから
『魔塔』で暮らしてるし…

ウェンデッタ

魔塔で⁉

ノクトルの口から 『魔塔』という単語が 出た瞬間。

令嬢の脳内で、 足りなかったピースが はまった。

ウェンデッタ

(――『魔塔』)

ウェンデッタ

(魔術師たちの組合で、
どこにも与しない
完全独立組織…)

ウェンデッタ

(所属魔術師の多くは
一般との交流を断っており
その内情はほとんど
知られていない…)

ウェンデッタ

(…とはいえ私は
皇妃教育の一環として
魔塔や魔術のことも
割と学んではいるけどね)

頭の中で『魔塔』の基礎知識を おさらいしつつ、 ウェンデッタは話を続ける。

ウェンデッタ

――私、魔塔の方と
きちんとお話しするのは
初めてかもしれないわ

ウェンデッタ

噂では、日夜を問わず
魔術の研究に勤しんで
おられる方が多いとか?

ノクトル

…君、魔塔に
興味あるの?

ウェンデッタ

ええ

ノクトル

皇太子の婚約者
なのに?

ノクトル

だって、
今の皇帝と
魔塔は――

ウェンデッタ

“犬猿の仲”、
でしょ?

魔塔は、この皇国において、 皇族や貴族に対抗しうる 『第三の権力』だ。

魔塔には『強力な術者』も多く所属し その気になれば国を滅ぼせるほどの 力を持つ。

現状は“中立”を公言することで、 うかつに皇族や貴族が手出しできない 独立状態を保っているが、

その均衡は、今代皇帝が 即位してからの ここ十数年で崩れつつある。

何かあれば争いに発展しかねないほどの “一触即発”状態といえるだろう。

ウェンデッタ

(――そして半年後、
魔塔は解体されるわ)

ウェンデッタ

(“あの事件”の責任を
取らされて、ね…)

2度目の人生を送る 彼女は、 よく知っている。

前世で 『聖アマツミヤ国の勢力図』 を書き換えた あの“重大事件”の詳細を。

ウェンデッタ

(…だけど)

ウェンデッタ

(今なら…
このタイミングなら、
止められる…!)

ウェンデッタ

(うまくいけば、
皇族を――)

ウェンデッタ

(――アルスを
牽制できるわッ!)

一瞬で“仮の計略”を組み立てた ウェンデッタは、 ノクトルへと向き直った。

ウェンデッタ

ところで
相談なのだけれど

ウェンデッタ

魔塔主様へ、
内密に『伝言』を
お願いすることは
できるかしら?

ノクトル

内容に
よるかな…

ノクトル

…なに?

ウェンデッタは笑顔を崩さず、 言葉を続けた。

ウェンデッタ

「極々内密に、
お話がございます――

ウェンデッタ

――『ミカゲ様』の件で」

ノクトル

ッ⁉

明らかに 顔色を変えるノクトル。

――星空を見つめること、数秒。

ノクトル

…………

ノクトル

…わかった

――翌日の午後。

しっかり休み、 パーティーの疲れも癒えた頃。

ウェンデッタは自室で、 専属執事のダニエルとともに 収集情報をまとめていた。

ウェンデッタ

昨夜は本当に
大変だったけれど

ウェンデッタ

振り返ってみれば、
期待以上の収穫
だったわね…

満足げな顔で ウェンデッタが紅茶をすする。

ウェンデッタ

これもダンが
頑張ってくれた
おかげよ!

ダニエル

えへんっ!

冗談っぽく 胸を張るダニエル。

うふふと上機嫌に 微笑むウェンデッタ。

ウェンデッタ

特に収穫だったのは

ウェンデッタ

五大貴族のうち、
私たちシラヌイ以外の
四家――

ウェンデッタ

――つまり
『ミスミ家』
『フーレン家』
『キガンジ家』…

ウェンデッタ

そして皇家でもある
『アマツミヤ家』に
関する動向ね…

『皇国五大貴族』とは、 皇国を建国した5名をそれぞれ祖とする 五つの貴族家のことだ。

伝説によれば、 建国の祖となる5名は、 悪しき『闇の者』を封じたらしい。

それぞれが 『聖霊から授かった特別な力』を持っており、 五大貴族の子孫が 代々受け継いだとされている。

ウェンデッタ

(――ま、あくまで
“おとぎ話”に
過ぎないけれど…)

ウェンデッタ

(…私も家族も
多少魔力があるだけで、
そこまで凄い力は無いもの)

ダニエル

でもお嬢、どうして
わざわざ俺に情報を
集めさせたんですか?

ダニエル

貴族五家については
前世とかで詳しく
ご存知なんですよね?

ウェンデッタ

あら、
“知ってるからこそ”
必要だったのよ♪

ウェンデッタ

前世と今世では、
既に状況が
変わりつつある…

ウェンデッタ

その“微妙な違い”を
初期段階で把握できるか
どうかは

ウェンデッタ

今後の戦況を
変えうるカギと
なるはずよ!

ダニエル

どういうことです?

ウェンデッタ

そのうち嫌でも
実感する羽目になるわ!

ウェンデッタ

それとね――

――コンコン

急に何かを叩く音。

ウェンデッタ

ダニエル

2人が外を見ると、 そこにいたのは――

ダニエル

…鳥??

――くちばしで 窓枠を叩く小鳥。

ウェンデッタ

さっそく
食いついたわね!

ウェンデッタ

ダン、
窓を開けて

ダニエル

あっ…

ダニエル

…はい!

慌てて指示に従う ダニエル。

大きな窓を開けた瞬間、

小鳥は、優雅に 室内へと飛び込んだ。

ひらりひらりと天井を舞ってから、 ウェンデッタの前で 止まると――

――ぽわんっ

ダニエル

手紙に
化けたッ⁉

驚くダニエルを前に、 ウェンデッタは顔色を変えることなく 空中に浮かぶ封筒を見つめる。

ウェンデッタ

逆よ、逆

ウェンデッタ

『手紙』を
『小鳥』に変えて、
相手に直接
送り届ける魔術――

ウェンデッタ

定番術式の
1つで

ウェンデッタ

それなりの魔術師なら
誰でも使えるわ

ダニエル

へ~

ダニエル

でも、いったい
どなたが?

ウェンデッタ

決まってる
じゃない…

ウェンデッタ

…“魔塔主”様
からのお返事よ!

と断言し、 手紙を手に取る令嬢。

その封筒の口を止める封蝋には、 特徴的な『魔塔の紋章』が 刻印されていた。

――3日後。

ダニエル

――お嬢、
“約束”のお時間です

ウェンデッタ

いよいよね!

先日送られてきた 魔塔主からの返事を 要約すると――

――『詳しくは 直接聞きたいので、 魔塔へと招待する』

というものだった。

ウェンデッタ

(ここまでは
計算通りよ…)

ウェンデッタ

(あとは、私の交渉に
全てかかっているわ!)

ウェンデッタ

ふゥ…

気持ちを落ち着けるように、 深く深く息を吐きだす ウェンデッタ。

魔塔主より送られた 封筒から 取り出したのは――

――古びた鍵型の 魔導具。

ウェンデッタ

それじゃ
ダン

ウェンデッタ

私の腕に
掴まってちょうだい

ダニエル

ええっと…

ダニエル

…こんな感じで
いいっすか…?

慣れない様子で、恐る恐る ウェンデッタの腕にしがみつく ダニエル。

ウェンデッタ

問題ないわ

ウェンデッタ

では、
参りますわよッ!

ウェンデッタが、 握りしめた鍵へと 『魔力』を流す。

それに呼応し、足元へ 出現したのは――

――光り輝く魔法陣。

と同時に2人を 魔力の光が 包み込んだかと思うと――

――魔塔の中。

ウェンデッタとダニエルは、 魔法陣が描かれた怪しげな部屋へ ワープした。

??

――なぜ
2人いるんです?

挨拶もなく 怪訝な顔で尋ねてきたのは、 不機嫌そうに 眉を吊り上げた眼鏡の男。

??

“内密に話がある”と
言ったのはあなたでしょう

??

シラヌイの御令嬢

ウェンデッタ

ごきげんよう、
魔塔主イザック様

――イザック・ハヤテ。

4年前、20歳にして 『魔塔主』の座を継いだ 若き天才魔術師。

ウェンデッタ

頂いた招待状には
『1人で来るように』
とのご指定は
ありませんでしたわよ

イザック

『此度の招待について、
誰にも知らせるな』とは
書いたはずですが?

ウェンデッタ

知らせたつもりは
ございませんが…

ウェンデッタ

…招待状を
開封いたしました折、
この子も
隣におりましたのよ

イザック

屁理屈をッ…

ウェンデッタ

ですが
ご安心ください

ウェンデッタ

このダニエルは、
私がただ1人
信頼する従者――

ウェンデッタ

例え
天地が返ろうとも
裏切るなど
ありませんわ!

ウェンデッタ

…そうよね
ダン?

ダニエル

もちろんで
ございますっ

ダニエル

このダニエル・カガリ

ダニエル

お嬢の顔に泥を塗る
真似はいたしません!

堂々と 言い放つ執事。

イザック

…………

見定めるように ダニエルを眺めてから、 イザックは首を静かに振った。

イザック

……まぁ
良いでしょう

イザック

既に来てしまった以上、
仕方がない…

イザック

――“ミカゲ”の件、
聞かせてもらいましょうか

イザックの瞳が 鋭く光った。

虚飾悪女のウェンデッタ ~二度目の人生、元凶皇子と恋する暇などありません!~

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