同級生
俺◯◯高受けるんだよね〜
同級生
えっ!めっちゃ近いじゃん!
同級生
いいな〜通学するの超楽じゃん…
同級生
あ、彼方は?
彼方
えっ…?
彼方
お、俺は…
彼方
……内緒
同級生
え〜なんだよそれーw
彼方
高校進学したら、教えるから
同級生
わかった、約束だぞ〜?
彼方
うん、約束………
彼方
………
教師
本当にいいのか彼方?
教師
一応お前のランクを考えたら、入学はできるが…
教師
直前での方向転換は、かなり大変だぞ?
彼方
大丈夫です
彼方
…どうしても、花宮がいいんです
そして俺は、同級生の人たちに何もいうこと無く、花宮高校への入学を目指した
卒業式
同級生
おーい、先生が式終わったから写真撮りたいってさ!
同級生
分かった!おーい彼方…
同級生
……彼方?
俺は式に出た後、誰とも話さずに学校をあとにした
この日は運良く、監視をしている奴らが父のいる地方へ出ていた
もう少ししたら帰ってくると思い、俺はそそくさと帰ったんだ
彼方の家
部下
彼方さん、おりますか…
部下
っ彼方さん…?
部下
おい、今すぐ社長に電話を繋げ!!
彼方
はぁ…はぁ…っ
彼方
(これで、これでいいはずなんだ)
彼方
(誰も俺のいる場所を知らない、誰も俺の父親のことも家のこともわからないところへ行ける)
彼方
(いい、はずなんだ……)
ほとんど知らない道を彷徨いながら、俺は花宮高校の近くにある駅へと向かって行った
俺が家を出たのは、中3でも高1でもない、間の春のことだった
真冬
…………
彼方
でもまさか、ここにあいつらが追ってくるとは思わなかった
彼方
ここにきて、幸せになって、油断してた
何だか、らしくもなく自分のことをたくさん真冬に話したな
彼方
…ごめん、なんか暗い話で
真冬
い、いや!そんなことありませんよ!
真冬
…………
真冬
彼方さん、『後悔してる』んじゃないですか?
彼方
え…?
真冬
だって、卒業式も満足に出られなくて、友達とも仲良くできなくて…
真冬
僕だったら、耐えられないなって
彼方
っ……
確かに真冬の言う通りだ
好きなものや趣味も制限されて
家の人に脅されながら生活して
中学校の同級生とも、別れたくなかったのに別れて
世間の一般論だったら、これは『不幸』とか言われてもおかしくない
でも、俺はそんなことないって思っていた
昔からこうだから、もう慣れているんだって心に聞かせていた
彼方
(……でも)
彼方
本当は、みんなと同じ学校がよかった
彼方
みんなと同じ学校に通って、その上で真冬たちと会えてたらどれだけよかったのかなって、時々思う
真冬
…!
彼方
でも、そもそも家がああいうのだったら出会っても同じ学校でも意味無いのかなって…
真冬
…僕が、もし他の学校に通ってる彼方さんと出会ってたら
真冬
変わらず、彼方さんのこと支えたいなって思ってたと思いますよ
彼方
っ!
真冬
それに彼方さんなら、僕の家のことも変わらず救ってくれてたと思いますし…
彼方
(あぁ、そっか)
結局、どんな世界でも"これ"は変わらないんだ
彼方
(でも、俺はこの世界でよかったかもしれない)
彼方
(だってこんなに良い人に恵まれて、たまに辛いことがあっても背中を支えてくれる友達がいて)
彼方
……ありがとう、真冬
彼方
俺と出会ってくれて、ありがとう
真冬
…!!
彼方
…あ〜、なんか休みすぎて恥ずかしい事言っちゃった
暗い話をしちゃったから、少しいつもより明るめに振る舞った
彼方
ほら、そろそろ戻ろう
真冬
…はい!
彼方
(らしくない事言ったなんて思ったけど、本当に感謝してるんだよ)
彼方
(俺のこと助けてくれて、支えようとしてくれて)
本当にありがとう