「赤い」
赤い赤いこの思いで
真っ白なキャンバスを
紬
汚して…しまいたい…
この感情は…
人として 普通の事だよね?
紬
赤が、足りない…
わたしの絵の具は
いつも赤が足りなくなる
赤が好きな訳でも
赤が多い訳でもないのに
紬
赤いもの、赤いもの…
赤を探す
紬
足りない…足りない…足りない…足りない…
紬
この絵を本物にするには…
紬
赤が必要なのにっ!!
その時
校内放送が 下校時刻を知らせた
紬
そうだ…
紬
隣のクラスの人に
紬
呼び出されてたんだった…
樹
よかった…来てくれて
紬
…話って、なに?
樹
えっと、僕
樹
ずっと、紬さんが──
紬
(恋愛がらみ?)
紬
(興味ないし、どうでもいい…)
男の話を聞き流し
赤を探す
紬
(ネクタイ?)
紬
(ボールペン?)
紬
(それとも…)
紬
ねえ、そのアゴ
紬
どうしたの?
男のアゴには
赤い染みのついた絆創膏
樹
あ、これ?
樹
家の猫に、引っ掻かれてさ…
紬
へぇ?
紬
絆創膏、汚れてる…
樹
朝から付けてたから…
紬
……
紬
じっと、してて?
樹
えっ
紬
替えてあげるから
樹
あ…ありがとう
紬
紬
きれいな色だね?
傷口に触れると
男子生徒の頬が 夕日色に染まった
樹
そう、かな?
樹
普通の絆創膏だけど…
紬
ねえ、これちょうだい?
樹
…いいけど
樹
そんな物が欲しいの?
紬
そうじゃなくて…
紬
あなたの血よ!!
カッターナイフを握りしめ
男の首に突き立てる
樹
うわぁ!
樹
な、なにを…!
紬
もっと…
紬
もっと欲しい…!
グサッ!
樹
ぐっ…ぅ…
飛び散る血が
わたしのを赤く彩る
紬
うふふ…
紬
カッターナイフ
紬
持ってて、よかった…
紬
これで…完成ね…?
今のわたしは赤に染まり
嬉しそうに微笑んでいる
絵の中の自画像と
同じ、表情で…
END―4 「赤に染まる思い」