静かな深夜、ひとりベッドに横たわるないこ。 眠りの中でまた、あの場所へと誘われていく。
白く、何もない空間。 そこに立っていたのは、見慣れた顔―― だけど、ないこ自身ではないふたりの少年だった。
冬心
また来てくれたんだね、ないこ
ないこ
……うん。なんとなく、会いたかった気がする
冬心の隣に立つ、もうひとりの少年が口を開く。
累
ずいぶん長い間、ここに来なかったな。……いや、来られなかった、か
ないこ
……ごめん。ふたりが“僕の一部”だってわかっても、まだ信じきれてなかったんだ
冬心
仕方ないよ。君は、あまりにも“いい子”でいようとしすぎた
累
そうやって全部忘れて、全部我慢して、“ないこ”を作ってきた
その声は、責めるようで、優しかった。 むしろ、誰よりも“ないこ”を想っていた。
ないこ
……僕は、ちゃんと生きてるつもりだったよ。誰かを笑わせたくて、誰かの居場所になりたくて
冬心
でもね、ないこ、それだけじゃ、君が壊れてしまう。君はまだ、“君自身”の居場所を知らないままだから
累
俺は、君が過去に置き去りにした“痛み”。冬心は、君が未来に期待した“希望”。ふたりとも、君の一部なんだ
ないこ
……じゃあ、どうすれば……僕は、僕を見つけられるの?
冬心
向き合って。怖くても、逃げずに。自分を嫌わないで
累
そして、抱きしめてくれ。こんな俺でも――“いてくれてよかった”って、そう言ってくれたら
ないこは目を閉じた。 静かに、一歩前へと進む。
ないこ
……僕は、君たちを受け入れる。忘れてた過去も、失ってた願いも――全部、僕だったんだね
冬心
ありがとう、ないこ
累
ようやく、スタートラインだな
白い空間に、光が差し込む。 その光の中で、ないこの心は ひとつずつほどけていった。
【第七話 了】