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…あの出来事から、 75年が経ち、 気がつけば、時は2026年
慎一はすっかり、 腰が曲がったおじいさんになっていた
慎一は杖をつきながら、 ゆっくりと歩く
都築慎一
慎一は誰もいない、孤独なリビングで、 勲が写る学校での写真と、 露子が写る夕焼けの空の写真を見つめる
その写真は白黒で、 長い間放置されていたからか、 埃を被っている
都築慎一
慎一はもう88歳 75年前に起きた、あの凄惨な出来事も、 露子と勲のことも、 慎一は思い出せずにいた
しかし、 二枚の写真が、数滴の雫で濡れる
慎一は、 この二人の写真を見ると、 訳もわからず涙が溢れ出てきた
歳をとって涙脆くなったのか、 魂がこの二人を覚えているのか、 まだわからない
慎一は数日前から感覚が鈍るのを感じており、 ほとんどの時間を眠って過ごしていた
ヨボヨボになった手足は冷えて、 食事を受け付けなくなった
そんな時、 突然一人の少女の声が、慎一の耳に届く
一ノ瀬露子
幽霊になった露子が、 慎一の目の前に現れた
服装も声も当時のまま 露子はあの頃と何も変わらない、 儚い笑顔を見せる
都築慎一
一ノ瀬露子
一ノ瀬露子
露子は涙を堪えるような表情で、 小さな声で呟く
慎一は耳が遠いため、 露子の消えるような声量の言葉は、 途切れるようにして、上手く聞こえなかった
都築慎一
そして、 もう一人の少年の声も、慎一の耳に入る
古賀勲
幽霊になった、 勲の姿があった
実体はないものの、 そこには強がりの仮面なんか、 少しもない
古賀勲
都築慎一
慎一は、目の前の少年が誰だかわからない だけど、 慎一は若い頃には滅多に見せなかった、 優しい笑顔で、彼の手を握り返した
幽霊だから、 本当なら触れられないはずだが、 その手には、しっかりと温もりがあった
都築慎一
慎一は、再び涙を流す
記憶は忘れていても、 彼の魂が、 あの頃の「帰り道」を覚えていた
そして、 気がついた頃には、 勲と露子の幽霊は消えていた
翌日
慎一は痛みや苦しみはなく、 体の力が抜けるような感覚を覚えた
瞼が重たくなったその時、 慎一は埋まっていなかったパズルのピースが、 カチリとはまる
都築慎一
自分の死期を悟ったその瞬間、 写真に写り、 幽霊として目の前に現れた二人の名前を、 突然思い出した
雪崩のように75年前の出来事が浮かんできて、 慎一は天井を見ながら、涙を流す
あの出来事の後は、 慎一は普通の人生を歩み、 他の人とたくさん関わってきたはず
しかし、 彼の魂の核にあるものは、 あの夕焼け空の下で失った「露子」と、 自分の腕の中で口元を緩めて逝った「勲」のまま、 動くことはなかった
例え、 老化で記憶を失ったとしても、 魂だけは覚えていた
都築慎一
慎一は二人の名前を呼ぶと、 微笑むように旅立った
息を引き取った慎一の魂は、 ようやくあの日の夕焼け空へと戻り、 狂気も痛みもない、「本当の遊戯」を始めれた
そう、信じたい…
〜完〜
コメント
3件
ああっ…読んだ…読んじゃったよ…😭💦💦 慎一、最后はちゃんと思い出せてよかったね…魂が覚えてたんだね。特に「手、繋いで…」のシーンで涙腺崩壊した…あの強がりだった勲が素直になってて、もう…。 露子の「一緒におばあちゃんになりたかった」も刺さりすぎて何も言えなくなったよ…。75年経っても変わらない絆、美しすぎる…最終話、全部持ってかれたっす…🌸✨