キヨ。
わざとわかるようにその顔を見る。
レトルト
あまり表情を変えずに頷く。
すごく居心地が悪い。
『あなたが好き』
『愛してる』
ラストのキスシーン。
ここを見るのは2回目だ。
ふと隣を見ると、退屈そうな顔で 画面を見ているレトさん。
何を考えているんだろう?
やっぱり恋愛なんて… と思っているのだろうか。
エンドロールが流れようとしている。
終わるまで待てない。
キヨ。
レトルト
俺はレトさんの手を引っ張って 映画館を出た。
レトさんの手を引きながら うっしーのバーに向かう。
道中電話して、行くことは伝えてあった。
飲む以外来んじゃねぇって すごく文句は言われたけれど。
でもまずは…
キヨ。
立ち止まって振り返る。
人の往来なんて気にしている余裕はなかった。
キヨ。
キヨ。
心の余裕のなさ。
ほんと、最低だ。
キヨ。
キヨ。
レトルト
レトさんが手に力を入れる。
キヨ。
キヨ。
キヨ。
ちょっと迷ったのか 目を泳がせているが
コクっと小さく頷いてくれた。
映画館の暗闇ではわからなかったけれど
街の明かりの中でならすぐにわかった。
レトさんの目が赤くなっていたこと。
カラン…
牛沢
俺の親友は本当に気が利く奴だ。
店の扉には、また『CLOSED』 と書かれていたのだ。
牛沢
キヨ。
真剣な顔の俺と 目を真っ赤にしたレトさんを見て
うっしーは安堵の表情を浮かべる。
キヨ。
牛沢
キヨ。
レトルト
キヨ。
牛沢
目の前に出された異彩を放つカクテル。
牛沢
それだけをカウンターに置き、 店の奥へと消えていく。
俺は出されたカクテルを一口飲んだ。
カクテル言葉は―
『覚悟』
キヨ。
レトルト
キヨ。
キヨ。
レトルト
キヨ。
レトルト
レトルト
少し雰囲気が元に戻ってきたようだ。
俺は職場で言われたことを話した。
キヨ。
キヨ。
キヨ。
キヨ。
レトルト
残った酒を一気に飲み干す。
目の前がクラクラした。
キヨ。
キヨ。
レトルト
キヨ。
キヨ。
キヨ。
ドクンドクンと心臓の音がうるさい。
手汗もかいてきた。
牛沢
俺の話を聞いていたのかいないのか
静かに置かれたカクテル。
ちらっとこっちを見てまた去っていく。
ああ…お前は本当マスターに向いてるよ…
レトルト
キヨ。
キヨ。
キヨ。
キヨ。
キヨ。
これもまた異彩を放つカクテルだ。
キヨ。
レトルト
キヨ。
その瞬間、レトさんの赤くなった目から
涙が一筋こぼれた。
レトルト
レトルト
嗚咽混じりに必死に言葉を紡ごうとする。
俺はそんなレトさんの言葉を聞き逃すまいと
少しの表情の変化もわかるくらいに じっと見つめていた。
TO BE CONTINUED…
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