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朝食のために 橘真衣を呼びに行った中村雨音

しかし、何度部屋の前で呼びかけても 橘真衣は応答しなかったと言う

不審に思った我々は 同じように呼びかけるがやはり反応はない

そこで 神崎隼也と新海拓馬は扉の鍵を壊し

一同は部屋の侵入に成功する

しかし、そこで見たものは……

ナイフが深々と刺さった 橘真衣の死体と

「マーダーゲームハ オワラナイ」

そう書きつけられた "絶望"の吐瀉物であった……

野嶋隆

た、ちばな、くん……?

新海拓馬

は、はあ?

新海拓馬

はははは。ははは。

中村雨音

あ、あ、あれ? え? まい、ちゃん?

新城綾香

橘……さん?

神崎隼也

なんだよ……これ?

神崎隼也

ど、どういうことだよっ!!

状況を飲み込めない

これは自殺……? 待て待て、橘真衣は死んだのか?

なぜ?

なぜ

中村雨音

中村雨音

きゃああああああああ!!!!

いま思えば

神崎隼也

な、中村!

新城綾香

不味いわ。完全に錯乱しているわね。神崎くん! 追って!!

神崎隼也

ちっ。くそ!!

マーダーゲームは

新海拓馬

ああ、ああぁ。

新海拓馬

神様……。僕を救ってくれ。

ここから始まったようなものだ

まただ

確か最初に殺人が起きた時にも 俺は中村を追った

その時も 中村は錯乱していた

前回と違うこと……

それは

俺も錯乱しているということだ

神崎隼也

なぜだ? 何がどうなってるんだ。

神崎隼也

……いや、分かってるはずだ。

思考に集中する

神崎隼也

きっと、これをやったやつからのメッセージに違いない。

神崎隼也

だとすれば、何を意味する?

一つだけ、その文言が浮かんだ

神崎隼也

……まさか。

神崎隼也

"橘真衣は犯人じゃない?"

神崎隼也

そんな、そんなことは!!

あり得るかもしれない

神崎隼也

そうだ。そう確証付けるかのように、"あの忌々しい文書"はあったじゃないか!!

神崎隼也

でもどうやって……どうやって。

神崎隼也

"密室を作り上げたんだよ!!"

神崎隼也は狼狽した

僕は優秀な人間だ

地元では有名な 進学校に通っているし

ある出版社の公募に自作の小説を寄稿して 最優秀賞をもらったことだってある

"周り"からは将来を嘱望され 憧憬の眼差しを向けられる

それが僕という存在の常だ

"周り"、か……

嫌いだ というよりは、気に入らない

いつも僕の後をついてきて いつも僕に対しては甘い

そんな人間が気に入らない 常に正直でありたい

だからこそ 僕はものをはっきりと言う

時には、言い過ぎだとも言われる 調子に乗りすぎだ、とも

そんなことを好き勝手言うが

自分の意思もない "他人に言われるがままの操り人形" なんてごめんだ

だからこそ 嫌われてもいいから僕というものを貫いた

周りの無能な人間なんか使えはしない 僕の頭脳だけが道を切り拓く

それはどんな場合でも 謎というものがあれば機能する

はずだったのに……

新海拓馬

な、な、な、なんだよ…これは!

ここにきてからというもの 僕は無能でしかない

新城綾香

どうやら、これは殺人みたいね。

野嶋隆

殺人……そうだな。自殺の線も考えられると思ったが、どうやらそれは違う。この紙に書かれた文言は、昨日の橘くんの様子とはまるで異なる。

新城綾香

あら、見てください。野嶋さん。

野嶋隆

ん? 何だね。

新城綾香

これ、私達のスマホね……。

野嶋隆

しかし、全てが壊されているな。
やはり犯人は別にいるということか……一体、誰が。

なぜだ?

なぜ こんなにも落ち着いて推理できる?

野嶋のじいさん……

野嶋隆

橘くんの両手はナイフのグリップ部分を握っている。これは、不自然じゃないか?

新城綾香

ええ。これはおかしいわね。

野嶋隆

普通、咄嗟に刺されて思わずナイフを掴んだにしても、腕から力が抜けていき、だらりと垂れ下がるはずだ。

野嶋隆

これが寝そべった状態なら話は少し変わるのかもしれないが、橘くんは半身を起こしている。ということは、自らがこの状態を維持するのは不可能。

野嶋隆

……まさか、自殺に見せかけようとしたと言うのか?

新城綾香

不自然ねぇ。本当に自殺に見せかけようとしたお馬鹿さんでもないでしょうに。

野嶋隆

それはないでしょうな。犯人はこの文書を残し、橘くんの発言と食い違うスマホの破壊を遂行している。

野嶋隆

犯人像もそれとは違う。これまでの傾向からして、かなり用意周到で狡猾な人物ではないかと考えられる。

野嶋隆

……どうも、ちぐはぐな事件だ。

新城綾香

同意見ね。

会話に参入できない じいさんは一般人かのように振る舞うが、僕の読みでは違う

新城綾香という女も ただ者じゃない

どちらも情報の取捨選択が速いし 情報の連結からくる推理を確実なものにしている

そこから分析をし 実証し……

理論を確実なものにする

新海拓馬

かの学者も、そうやって解き明かしたじゃないか……。

野嶋隆

新海くん、何か言ったかい?

確か「ミステリ談義会」のチャットで 僕はそう言っていたな

口だけなのだ 行動なんか、常人にはできない

そうだよ 常人にはできないんだよ

野嶋隆

……新海くん?

中村雨音

あの馬鹿そうな女は 僕と同じだ

同じ普通の人間さ

僕は、何もできない

野嶋隆

新海くん!

新海拓馬

うわ、な、な、何だじいさん!

野嶋隆

こっちが聞きたいくらいだ。橘くんが殺されて、犯人がまだいることが判明した。それは、確かに耳が遠くなるより絶望的なことだ。

野嶋隆

しかし、我々は生きて帰るんだ。生きて帰るために、気をしっかり持て。

野嶋隆

今は事件を解決するしかないんだ。

新海拓馬

そ、そうか……。

事件を解決するしかない、か

それは既に話し合ったことで 理屈としても理解している

だけど

理屈通りになんか、ならないさ

新城綾香

……野嶋さん。他に何か気付いたことはありませんか? 私は前提となるこの状況が、かなり不味いと思うの。

野嶋隆

前提となるこの状況? すまないが、説明してくれないか。

新城綾香

私達は橘真衣さんの部屋へと侵入しましたわよね?

野嶋隆

ドアを打ち破ってまで、だな。

新城綾香

そうですね。何かピンとくることって……ないかしらね?

野嶋隆

……そうか!!

野嶋隆

この状況は、"密室殺人"だ!!

野嶋隆

こんなことが起こり得るとは。

新城綾香

はあ、全くですわ……少しずつでも、謎を解いていくしかないようね。

野嶋隆

ああ。やるしかないようだな。

いやだ、やりたくない

もう、疲れたんだ

野嶋隆

ではまず、遺体から調べるか……

新海拓馬

……僕は、休憩するよ。

野嶋隆

どうしたんだい。君らしくないな。

新城綾香

あら、いつもなら周りを出し抜いてやると言わんばかりに元気なのに、今日はお眠なのかしら?

新海拓馬

……まぁ、そんなところかな。

いけすかない女の挑発も いまは気にならない

とにかく 休みたかった

僕は 書斎へと足を動かした

やはり大きい

紙の匂いが部屋に充満している とても心地よかった

僕は椅子に座って辺りを見渡す

ミステリ、SF、サスペンス、コメディー、ラブストーリー、純文学……

哲学書や自己啓発書 図鑑、児童書、エッセイ、専門書……

媒体についても言うと 本だけじゃなく、論文や新聞なんかも揃えられている

並の本屋を上回っている量だ

一言で言えば、壮観だな

僕はすぐに椅子から立ち上がった

内容としては現実とリンクするから あまり好ましくはないが

ミステリのコーナーに立ち寄った

いや、リンクなどしないか

別にフィクションだからいいのだ 人が殺されても

あくまでそれは 記号化されたものでしかないのだから

しかし、現実は違う そこに様々な感情がダイレクトに絡んでしまう

小説の中だけで十分だ

新海拓馬

……これは。

高島 詩乃

新海拓馬

ふっ。ここにもあるんだな……。

僕のお気に入りの作家だ

ミステリ界隈では有名で 数々の名作を生んできた巨匠である

論理を重んじ、論理に終わる

そんなクールな主義を掲げ 事件を颯爽と解決していく探偵

これを見事に描き切っている

そう 探偵とは、ヒーローのようなものだ

力を持ち、人々を導く

それが物理的な力であろうと 知性に傾倒したものであろうと

ヒーローはヒーローである

だから 僕はミステリを愛してやまない

そう思うと 無性にミステリを読みたくなった

高島詩乃の代表作 「慧眼の使者」 を僕は手に取った

新海拓馬

本当、何度読んだだろうな。

野嶋隆

新海くん、大丈夫かい。

新海拓馬

うおっ!! じ、じいさんなんだいきなりはなしかけてほんとうになにもまなばないなあんたはこのやろう

野嶋隆

すまないすまない。君の様子があまりに変だったから、現場は新城さんに任せて君を追ってきたんだよ。

新海拓馬

な、何だ。そんなことだったのか。まったく、僕は心臓が弱いと言っただろう?

野嶋隆

そうだったね。以後気をつけよう。

野嶋隆

……おや、何の本を持ってるんだい?

新海拓馬

ん? ああ、これか。

新海拓馬

高島詩乃の「慧眼の使者」だよ。
僕の一番好きな作家でね。

新海拓馬

じいさんは読んだことあるか?
まあ、ミステリ好きなら一度はあるだろうけれどね。

野嶋隆

うん? ま、まあな。

新海拓馬

……何だ、ないのか?

野嶋隆

いや、あるんだが……。
何というかだな。

新海拓馬

何でそんな歯切れが悪いんだよ?
まさか、"ニワカ"の口か。

野嶋隆

ニワカも何も、なあ。

新海拓馬

何だよ。

やはり歯切れ悪く 言いにくそうにじいさんは言い放った

野嶋隆

私がその本の作者…なんだよ。

新海拓馬

………………………。

新海拓馬

………………は、はあ!?

じいさんは照れ臭そうに言った

……嘘か

いや、それはない と、瞬時に思い直した

このじいさんは冗談をあまり言わない なぜなら、頭が硬いからだ

それに 常人より落ち着いて推理を行うことができるのも

その肩書きがあれば説明がつく

しかし そうなれば本当に……

野嶋隆

嘘だと思うかい。なら、その高島詩乃をローマ字に並べてご覧。

新海拓馬

まさか、"アナグラム"か?

野嶋隆

はは、ご名答だ。
流石、ミステリ好きの青年だな。

アナグラムとは 文字を入れ替えると別の意味合いになる

いわゆる 言葉遊びや暗号化のことである

それをもとに考えると…

高島詩乃は TAKAJIMA SHINO 野嶋隆は NOJIMA TAKASHI

これを入れ替えると……

確かに どちらにも一致する

新海拓馬

……は、はは。

新海拓馬

ここに来てから、何が起こったろうな。気付けば地下室に拉致されていて、夫婦の刺殺体が現れて、僕たちの中に犯人がいる。

新海拓馬

それも、事件を解き明かさなければ帰れないなんてことになって、犯人だと思われた奴が殺された。途方に暮れていたら、偶然にもじいさんの正体が有名作家で……

新海拓馬

……畜生。何だってんだよ。

野嶋隆

本当に、事実は小説よりも奇なり、だな。

新海拓馬

本当にそうだよ。参ったね。

僕は思い切り伸びをした

やってられるかと 何かがふっきれたのだ

目の前には憧れの大作家 嬉しくは思う

しかし感動はない それはこの状況に殺された……

マーダーゲームか

新海拓馬

……そうだ。あんた、じいさんに比べたら僕なんか大したことはないが、実は地元ではちょっとした有名人なんだぜ。

野嶋隆

ほう。それは興味深いな。

新海拓馬

そうだな……新聞コーナーにでもあるかもしれない。

野嶋隆

新聞? というと、かなり大物かな。新海くん。

新海拓馬

ちっ。嫌味にしか聞こえねえや。

僕とじいさんは 新聞コーナーの前まで来た

几帳面にも年代別に整理され これだけの量でも探すのは容易そうだった

新海拓馬

あるだろうかな。

野嶋隆

……そう言えば。

新海拓馬

ん? 何だよ。

野嶋隆

いや、ちょっとね。

そういってじいさんは 僕と並んで少し隣のコーナーを見る

何を探しているんだ?

野嶋隆

そうだ。わざわざ日付なんか聞いていなかったな。

新海拓馬

勿体ぶらずに何かを言えよ。

野嶋隆

いやね、中村くんのことなんだが。

じいさんから 中村雨音という女が 過去に感謝状を贈られたと言う話を聞いた

新海拓馬

……ふうん。記憶力がいい、か。

新海拓馬

ちっ。自惚れやがって。

野嶋隆

自惚れではないだろう。中村くんは、その日買ったものまで詳細に覚えていたんだからね。

新海拓馬

はっ。まあ、ここに来てからはそのご自慢の記憶力とやらも、どうやら発揮できていないみたいだけどね。

野嶋隆

どうも、嫌な風にその力が働いているらしかったがな。

それは僕も同じなのだ

こういうところは 正直になれない

"周り"を認めたくないがために 信条としている正直な気持ち

それがすっかり 信条というものによって 信条という気持ちが殺されている

滑稽だ

新海拓馬

……それにしても、確かこの日付だったのにないな。

野嶋隆

地方新聞だったんじゃないか?

新海拓馬

じいさん、ここに揃ってるのは全国新聞もあるが、地方新聞がほとんどだぜ。

野嶋隆

……そうなると、ここは。

新海拓馬

どうかしたか。

野嶋隆

今まで意識しなかったが、同県内にこの橘邸は立地していることになるな。

新海拓馬

ああ、そう言えばそうだな。

野嶋隆

ん? 新海くんもX県に住んでいるのかい。

新海拓馬

いや、それはそうじゃないか?
拉致されたと言っても、そんな大規模に行うのは組織的犯行じゃないと……

新海拓馬

……ん?

野嶋隆

気付いたかい、この違和感に。

待てよ

ここがX県内で 同じくX県出身の大作家がいる

しかし 僕たちは"偶然にも"オンラインチャットで知り合った他人だ

ならば

新海拓馬

おい!!どういうことだ!!

野嶋隆

……ああ。

野嶋隆

どうやら、"「ミステリ談義会」に入会した時から、この事件は仕組まれていたらしいな"。他のみんなも、X県内の住人だろう。

新海拓馬

そ、そんなことが!!

野嶋隆

できるのかもしれない。

野嶋隆

そもそも、前提がおかしかったんだ。橘真衣が犯人だと仮定して、私達はどうやって連れてこられた?

野嶋隆

一介の少女が成し遂げられる芸当じゃない。これは、何か大きな力が働いている計画的犯行だ。

新海拓馬

じ、じゃあ組織的犯行なのか?

野嶋隆

分からない。普通はそう考えたくなる。しかしだな、いつかの神崎くんの推理では、監視カメラがなく外部からも侵入が困難で、目立ってしまうほどに封鎖された外部との接続部分。

野嶋隆

これがある限り、私たちの中に全てをやり遂げた犯人がいると考えるのが妥当じゃないか。

新海拓馬

そ、そ、そんな。

そんなことが

野嶋隆

……………できる、みたいだ。

じいさんは片手でそれを拾い上げた

野嶋隆

……これも意図的なのだろうな。見てくれ。

僕はそれを受け取った

新聞のスクラップのようだった

そこには僕の受賞した 「高校生ミステリGP」 という出版社が公募したなかで

新海拓馬(17)さんが最優秀賞を受賞 という本文が掲載されていた

任意で応じた 不機嫌そうな僕の顔写真も載っている

さらには 中村雨音の記事も掲載されており

確かに 盗難車の犯人逮捕に貢献したと 書かれている

わざわざ この二つの記事をスクラップにして ここに置かれていた

野嶋隆

"全てが作為的'"だったのか。

新海拓馬

あ、ああ。

野嶋隆

何らかの基準で私達は犯人に選ばれた。

新海拓馬

そ、そうだ。そういうことに……

なってしまう

僕は、いや僕たちは

とんでもない化け物に

魅入られたのかもしれない

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