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恋愛短編集

13 - そのままの君でいい

♥

151

2019年10月13日

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青峰 紗良

小野君、今日の体育
難しかったね

小野

そう?楽しかったけど

真っ赤な夕焼けが二人の影を照らす。

青峰 紗良

小野君運動神経
いいからだよ

小野

へへ、ありがとー

こうして毎日二人きりで帰って いるが、決して付き合っている とかではない。

大人しい性格の青峰は、クラスも 同じでアパートも隣同士の友達だ。

青峰 紗良

あ、家ついちゃったね

青峰 紗良

じゃあ、バイバイ
小野君

小野

おう、バイバイ

二人、それぞれの家へ入った。

何時間かスマホを触って

そろそろ勉強しようかと、 鞄を開けた時

小野

あれ、これ青峰の
ノートだ

小野

席隣だし、間違えて
入れちゃったかな

小野

今日の課題だし、
早く届けた方がいい
よな…

こういう時、「お隣さん」とは 便利なものだ。

隣の部屋へ行き、インターホンを 押した。

青峰のお母さん

はーい

ガチャ

青峰のお母さん

ああ、小野君ね!

小野

青み…

小野

…紗良さんに用が
あるんですけど

青峰のお母さん

ごめんね、ちょっと今私
料理してる途中だから手が
離せなくて

青峰のお母さん

すぐキッチン戻らなきゃ
いけないから

青峰のお母さん

勝手に紗良の部屋
入っちゃっていいわよー

小野

え、いいんですか…?

青峰のお母さん

小野君だし特別よ!

青峰のお母さんから飛んできた ウインクを、曖昧に笑って返しながら

二階の青峰の部屋へと向かった。

コンコン

小野

おーい

返事がない。

恐る恐る、ゆっくりと扉を開けた。

小野

入るぞ、青み……

小野

青峰 紗良

あっ

青峰は、ド派手な色をした カツラをかぶって

アニメキャラの衣装を身にまとい

化粧をした顔で鏡の前で立っていた。

小野

あ、青峰…

小野

ごめ…

青峰 紗良

きゃー!

青峰 紗良

こんなところ見られ
ちゃった!

青峰 紗良

ま、ちょっと恥ずかしい
けど小野君だからいーや☆

小野

(…あー)

小野

(タイミング悪いところ
で来てしまったなあ)

大人しい青峰は、コスプレをすると 性格が変わる。

俺はノートを青峰にささっと渡して、 直ぐに家へ戻っていった。

今はもう、青峰のコスプレには 慣れたものだが

初めて見た時は、本当に びっくりした。

あれは、俺がこのアパートに 引っ越してきた時。

小野

今日転校してきた
小野です

小野

これからよろしく
お願いします

青峰 紗良

あ、あのっ
小野君

青峰 紗良

昨日、うちのアパート
の隣に引っ越してきた
子だよね…!

小野

あ!もしかして
青峰って苗字?

青峰 紗良

うんっ!

青峰 紗良

青峰 紗良って
いいます

小野

そっかー!

小野

アパートも学校の
クラスも同じだなんて
凄い偶然だなぁ

小野

ごめん、昨日は片付けとか
準備で忙しくて

小野

挨拶に行けなくて…

青峰 紗良

えっ、全然大丈夫だよ

小野

今日挨拶しに行くね

青峰 紗良

う、うん!
ありがとうっ

小野

(まさか同じアパートの
子が同じクラス
だったなんてなー)

小野

(青峰…)

小野

(大人しそうな
子だったな)

ガチャ

小野

ただいまー

小野

って、誰もいないか

小野

今日は父さんも
母さんも帰り遅いし

小野

…俺一人でも挨拶
行ってくるかー

菓子折りを手に、うちの玄関を 後にした。

隣の部屋の前まで行き、 インターホンを押す。

青峰 紗良

はーい

ガチャ

小野

あ!青峰…

小野

……青峰?

青峰 紗良

わぁ!小野君じゃーん!

青峰 紗良

お菓子持って来てくれたの?
あっりがとー!

小野

…え??

小野

(何そのふりっふりの服)

小野

(髪紫だし…
え、カツラ?)

青峰 紗良

とりあえず、家
上がってく?

小野

うん、ごめん

小野

頭の整理が
追いつかないわ

その出来事があった次の日

青峰は、コスプレすると性格が 変わってしまうことを

「昨日はごめん」と何度も言いながら 説明してくれた。

ピンポーン

小野

はーい

青峰 紗良

あっ!小野君!

青峰 紗良

さっきは本っっ当に
ごめん!!

扉を開けると、いつもの黒髪で、眉を八の字に下げた青峰が立っていた。

小野

謝らなくていいのに

小野

慣れてるし、全然
気にしてないよ

青峰 紗良

そんなこと言われても…

小野

……

小野

家上がってく?

小野

ゆっくり話そうよ

青峰は、首を縦に振った。

青峰 紗良

ごめんね、私コスプレ
がやめられないの

俺が青峰を椅子に座らせるなり、 青峰はそう言った。

青峰 紗良

コスプレしてる時の私は、
自分に自信があって

青峰 紗良

なんだか違う自分になって
いるような感じがして…

青峰 紗良

小野君に迷惑かけちゃう
の、分かってるけど…

小野

……

小野

確かに、最初は
びっくりしたけど

小野

いつもの青峰も、
コスプレしてる青峰も

小野

結局どっちも青峰
なんだし

小野

俺は、どっちの青峰も
好きだよ

青峰 紗良

す…?

青峰 紗良

す、好き…!?

小野

え!?そんな顔
真っ赤にすんなよ!

小野

と、友達として好き
ってこと!

小野

何だよ、こっちまで
恥ずかしくなるじゃん!

青峰 紗良

あ、そ、そっか

青峰 紗良

そうだよね!
友達としてだよね!

青峰 紗良

び、びっくりしたー

青峰の顔は、まだ熱を帯びていた。

青峰 紗良

……

青峰 紗良

ありがとう、小野君

小野

…うん!

俺たちは、その後何時間か 雑談をしてから別れた。

青峰は笑顔で手を振りながら うちを出て行った。

小野

今日は久しぶりの休み!

小野

土曜日だー!やっほーい!

気分もいいし、こんな暖かい日は 散歩でもしようと家を出た。

ちょうどその時、同時に隣の部屋の 扉が開いた。

青峰 紗良

あっ!小野君ー!

今日の青峰は、金色のカツラをかぶり

フリルのついたワンピース を着ていた。

小野

おー、青峰!

青峰は、だんだんこちらへ 向かって来る。

そして、勢いよく俺に飛びついた。

小野

え!?ちょ、青峰っ?

小野

何して…

青峰 紗良

昨日の小野君ー、

青峰 紗良

凄いかっこよかったよー!

青峰 紗良

コスプレしてる私を
受け入れてくれてー

青峰 紗良

めちゃめちゃ嬉しかったし!

小野

……!

性格が変わるといっても、全くの別人になる訳ではない。

これは、青峰の本音だろう。

小野

へへ、どーも!

なんだか嬉しくなって、俺も思わず 笑顔で抱きしめ返した。

青峰 紗良

私ー、

青峰 紗良

小野君のこと
好きかも!

小野

…へ?

自分の顔が熱くなっていくのが 分かった。

青峰 紗良

これから私

青峰 紗良

頑張るからね!

晴れた空は、ほんのりと暖かかった。

青峰の着ていたワンピースが、

風でふわりとなびいた。

この作品はいかがでしたか?

151

コメント

21

ユーザー

可愛い……! コスプレすることで自分を解放できる紗良ちゃんも、驚きつつも受け入れてくれる小野くんもとても可愛いです……! 素晴らしいお題の使い方でした!!(*´∀`)✨

ユーザー

いい関係だな~ 羨ましいな~ アイテノスキナコトヒテイシナイノステキネ!

ユーザー

小野君みたいに受け入れてくれる人が増えたら、こっそりじゃなくて堂々とコスプレだとか自分の好きなこと出来る人も増えたりするのかな😊カサミネちゃんの話、いつも心に染みる……

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