青峰 紗良
難しかったね
小野
真っ赤な夕焼けが二人の影を照らす。
青峰 紗良
いいからだよ
小野
こうして毎日二人きりで帰って いるが、決して付き合っている とかではない。
大人しい性格の青峰は、クラスも 同じでアパートも隣同士の友達だ。
青峰 紗良
青峰 紗良
小野君
小野
二人、それぞれの家へ入った。
何時間かスマホを触って
そろそろ勉強しようかと、 鞄を開けた時
小野
ノートだ
小野
入れちゃったかな
小野
早く届けた方がいい
よな…
こういう時、「お隣さん」とは 便利なものだ。
隣の部屋へ行き、インターホンを 押した。
青峰のお母さん
ガチャ
青峰のお母さん
小野
小野
あるんですけど
青峰のお母さん
料理してる途中だから手が
離せなくて
青峰のお母さん
いけないから
青峰のお母さん
入っちゃっていいわよー
小野
青峰のお母さん
青峰のお母さんから飛んできた ウインクを、曖昧に笑って返しながら
二階の青峰の部屋へと向かった。
コンコン
小野
返事がない。
恐る恐る、ゆっくりと扉を開けた。
小野
小野
青峰 紗良
青峰は、ド派手な色をした カツラをかぶって
アニメキャラの衣装を身にまとい
化粧をした顔で鏡の前で立っていた。
小野
小野
青峰 紗良
青峰 紗良
ちゃった!
青峰 紗良
けど小野君だからいーや☆
小野
小野
で来てしまったなあ)
大人しい青峰は、コスプレをすると 性格が変わる。
俺はノートを青峰にささっと渡して、 直ぐに家へ戻っていった。
今はもう、青峰のコスプレには 慣れたものだが
初めて見た時は、本当に びっくりした。
あれは、俺がこのアパートに 引っ越してきた時。
小野
小野です
小野
お願いします
青峰 紗良
小野君
青峰 紗良
の隣に引っ越してきた
子だよね…!
小野
青峰って苗字?
青峰 紗良
青峰 紗良
いいます
小野
小野
クラスも同じだなんて
凄い偶然だなぁ
小野
準備で忙しくて
小野
青峰 紗良
小野
青峰 紗良
ありがとうっ
小野
子が同じクラス
だったなんてなー)
小野
小野
子だったな)
ガチャ
小野
小野
小野
母さんも帰り遅いし
小野
行ってくるかー
菓子折りを手に、うちの玄関を 後にした。
隣の部屋の前まで行き、 インターホンを押す。
青峰 紗良
ガチャ
小野
小野
青峰 紗良
青峰 紗良
あっりがとー!
小野
小野
小野
え、カツラ?)
青峰 紗良
上がってく?
小野
小野
追いつかないわ
その出来事があった次の日
青峰は、コスプレすると性格が 変わってしまうことを
「昨日はごめん」と何度も言いながら 説明してくれた。
ピンポーン
小野
青峰 紗良
青峰 紗良
ごめん!!
扉を開けると、いつもの黒髪で、眉を八の字に下げた青峰が立っていた。
小野
小野
気にしてないよ
青峰 紗良
小野
小野
小野
青峰は、首を縦に振った。
青峰 紗良
がやめられないの
俺が青峰を椅子に座らせるなり、 青峰はそう言った。
青峰 紗良
自分に自信があって
青峰 紗良
いるような感じがして…
青峰 紗良
の、分かってるけど…
小野
小野
びっくりしたけど
小野
コスプレしてる青峰も
小野
なんだし
小野
好きだよ
青峰 紗良
青峰 紗良
小野
真っ赤にすんなよ!
小野
ってこと!
小野
恥ずかしくなるじゃん!
青峰 紗良
青峰 紗良
友達としてだよね!
青峰 紗良
青峰の顔は、まだ熱を帯びていた。
青峰 紗良
青峰 紗良
小野
俺たちは、その後何時間か 雑談をしてから別れた。
青峰は笑顔で手を振りながら うちを出て行った。
小野
小野
気分もいいし、こんな暖かい日は 散歩でもしようと家を出た。
ちょうどその時、同時に隣の部屋の 扉が開いた。
青峰 紗良
今日の青峰は、金色のカツラをかぶり
フリルのついたワンピース を着ていた。
小野
青峰は、だんだんこちらへ 向かって来る。
そして、勢いよく俺に飛びついた。
小野
小野
青峰 紗良
青峰 紗良
青峰 紗良
受け入れてくれてー
青峰 紗良
小野
性格が変わるといっても、全くの別人になる訳ではない。
これは、青峰の本音だろう。
小野
なんだか嬉しくなって、俺も思わず 笑顔で抱きしめ返した。
青峰 紗良
青峰 紗良
好きかも!
小野
自分の顔が熱くなっていくのが 分かった。
青峰 紗良
青峰 紗良
晴れた空は、ほんのりと暖かかった。
青峰の着ていたワンピースが、
風でふわりとなびいた。