戦線の魔法使い

ミケイラさんと結ばれた１ヶ月後 突如父に呼び出された

現在帝国は劣勢では無いが、共和国の武力が思ったよりも強力で、このままだと劣勢になる可能性があるらしい

内容は3ヶ月後、戦線に行って欲しいと

そこで、訓練期間として3ヶ月の猶予が与えられた

いつの間にかこんなにも大きくなった娘 成長し続けるお前を、俺はこれからも見届けたい

彼女はチチを抱き上げてスリッと頬に顔を擦り付けた

だからこそ、利用させてもらう

どんな犠牲を払ってでも トーマがお前に残そうとした神の力を完璧にする為に

そう言われてチチの首輪を見ると確かに魔石が埋め込まれていた

父はチチの首輪を外すと私の首輪を外してチチの首輪を装着した

急に目の色が変わったように父は続けた

頭の中に蘇る人が血を流す姿

指先が震え、父を見ると父は私の肩を掴んだ

小さい頃から私が怖がっている時、いつも大丈夫、大丈夫、と言ってくれ そして最後は「出来るよな」と言う

その言葉は私の背中を押す言葉

平和な日々は直ぐに消える いや、裏では人が死んでいる、か だけど、私の大切な人が戦線に行くのは許せない

父が言ってることは間違ってない、むしろ、今の状況だと正しい

でも、彼女を戦場に送りたくない もう、大切な人が居なくなるのは…嫌

ソファーに座りボソッと呟いた

父を見るといつもの無表情な顔でこちらを見ていた

父はタブレットを操作して空中モニターに映し出した

モニターに映し出されたのは魔石や魔力を利用して医療技術発達を促す物だった

モニターを消して父は私に向き合った

これは、挑戦だ お前は戦線に婚約者を指を咥えたまま見送るのか、と

自室に向かって様々な計画を考える

手を振って大型犬のように走ってくる彼女 腕を広げて飛びついてくるから、サッと避ける

彼女は隣に座ってワクワクと私が話し出すのを待っている

想像と、本当に想定外の言葉に彼女を見ると彼女は笑っていた

彼女は立ち上がって私を笑顔で見つめた

彼女は自分の首輪を撫でた

今、私の目の前で笑ってるこの子は誰？ この前まで人を殺して、泣いて、夜も眠れなくて、私がいないと…

なのに、今は笑顔で、言葉は違えど「沢山人を沢山殺してくる」と言っているのだ

急に彼女の顔が強ばった

声をかける前に彼女は走っていなくなってしまった

窓の外を見つめていると気配が近づいてきた

流石ドレイクさんの娘、威勢が良い

現に今俺のネクタイを掴んで威嚇しているではないか

彼は私の手を掴んで耳元で囁いた

ドンッと彼を押して距離をとる

彼はギュッと拳を握り込んだ

彼は後悔しているんだ 守れなかった自分が許せなくて、油断していたあの日を後悔しているんだ

神、神、神 ジルベール家の人間は皆、そう言う 私はそれがなんとなく違和感だった

確かに、神への誓いを捧げた途端力が増したように見えた