夜桜猫
…ないですね。
アマリス
だね。
リリー
……。
夜桜猫とアマリスは
分厚い本を読み、
調べものをしていた。
夜桜猫
(これが
最後に名前が
ついていた時代。)
夜桜猫
(妖魔の森、
花の森、廻転の森…か。)
夜桜猫
(巡る森は
書いてないな…)
アマリス
古き巡る森の
中心部か…
夜桜猫
アマリスさんは
『巡る森』を
知ってますか?
アマリス
いや、
知らないね。
アマリス
全ページ
確認したけど、
どこにも記載
されてなかった。
夜桜猫
そうですか。
夜桜猫
そういえば、
今日は眼鏡
かけてるんですね?
アマリス
魔眼の対策さ。
アマリス
今日はちょっと
暴走気味でね、
アマリス
目があった対象を
確実に狂わせるからね。
夜桜猫
大変ですね…
夜桜猫
(じゃあ、あまり眼を
見ないように
しないと。)
夜桜猫
(それにしても、)
夜桜猫
これって始まりから?
アマリス
ああ、
夜桜猫
よく残ってるますね…
夜桜猫
(ネットで調べても
まったく出て
こなかったのに…)
アマリス
この館の役割のおかげさ。
アマリス
今じゃ『人形の館』
となってるけれど、
アマリス
ここは本来、
過去の記録や物を
残すための館。
アマリス
僕の先祖、
つまり初代の館主が
時代の記録を保存し、
アマリス
それらを
管理する事を
継がせていった。
夜桜猫
(先祖代々、
受け継いできた
役割か。)
夜桜猫
(ん?)
夜桜猫
え、アマリスさん、
両親いるんですか?
アマリス
ああ、
夜桜猫
(いるんだ…)
アマリス
なんで
驚いた顔を
しているんだい?
アマリス
普通の事だと
思うけど??
夜桜猫
す、すいません。
夜桜猫
吸血鬼は
死んだ人間が
蘇った姿とか
聞きますので、
夜桜猫
アマリスさんは
生き返ったのかと…
アマリス
それはおそらく、
吸血され死んだ者だね。
アマリス
僕は普通に
吸血鬼同士の間で
生まれてるから、
死人ではない。
夜桜猫
失礼しました…
アマリス
でも、
吸血鬼の始まりは
そうだと思うよ。
夜桜猫
え?
アマリス
死んだ生物の魂が
強い念を残し、
別の個体へと
変化させた。
アマリス
もしくは
別々の生き物の魂が
共鳴して変化したか。
アマリス
僕はその二説だと
考えてるんだ。
アマリス
まぁ、正しいかは
一生分からないかもね。
夜桜猫
(難題だね。)
アマリス
ちなみに
僕の家族は
もういないよ。
アマリス
リリーだけさ。
アマリス
皆、僕が若い時に
亡くなった。
夜桜猫
そうですか…
夜桜猫
(寂しいよね。)
アマリス
話戻すけど、
アマリス
古き巡る森は
他の地域かも
しれないね。
夜桜猫
書き忘れたとかは?
アマリス
絶対ないね。
アマリス
書いたの僕だし、
夜桜猫
自信満々ですね…
夜桜猫
(このまま
巡る森に関する
情報がなければ、)
夜桜猫
(依頼は
解決できない。)
アマリス
巡る森の中心部か…。
夜桜猫
(依頼が達成
できなかったら、
どうしようか。)
アマリス
巡る…。
夜桜猫
(差出人の名前は
書いてなかったから、)
夜桜猫
(出来ないって
伝えることも無理だね。)
アマリス
回る…森の…中心、
夜桜猫
(今、考えると
凄い大変な依頼を
担当されたな。)
夜桜猫
(私に解決
できるだろうか?)
アマリス
あ、
突然、アマリスが
何か思いついたように
声を発した。
アマリス
…そういう事か。
夜桜猫
どうしましたか?
アマリス
おそらく
手紙の差出し人は、
アマリス
言葉を同じ意味のまま
別の言葉に変換して
書いたんだ。
夜桜猫
え??
アマリス
巡るの意味を、
知ってるかい?
アマリス
複数あるけど、
その中で
『1周するように回る』。
アマリス
『回ってまた戻る。』
ってあるんだけど、
アマリス
これを似た言葉に
変換したもの。
アマリス
回る、廻る、回旋、回転…
夜桜猫
あ!
アマリス
もう分かったかい?
リリー
……。
リリー が
開いた本の上に座り、
場所を指差した。
夜桜猫
(廻転の森。)
アマリス
ここから北に
ある森さ。
アマリス
そこはね、
森の中央に決して
辿り着けないんだ。
夜桜猫
(え、)
アマリス
入ったら方角を失い、
いつの間にか
入ってきた所に
出てくるんだ。
アマリス
それも
森の周りを
一周してね。
アマリス
方位磁針などが
あっても狂って
使い物にならない。
夜桜猫
な、なにそれ…
アマリス
原因は森の中央に
住む者の魔法。
アマリス
彼女は、
強力な力を扱う
魔法使いで、
アマリス
廻転の森の
中心部に住んでいた。
夜桜猫
じゃあ、
目的地は
魔法使いの家で、
夜桜猫
手紙の差出人は
その魔法使い?
アマリス
僕の考えが
正しければ、
目的地はそうだね。
アマリス
でも、
手紙の差出し人は
分からない。
アマリス
魔法使いは
1100年前のあれで
確実に亡くなってるし…
夜桜猫
(亡くなってるんだ。)
夜桜猫
(なら、今
書いて届けるのは
不可能??)
アマリス
…依頼の手紙、
今持ってるかい?
夜桜猫
え?
アマリス
ちょっと見せて
もらえないかい?
アマリス
中は見ないからさ。
夜桜猫
…は、はい。
夜桜猫は依頼の封筒を取り出し、
アマリスに渡した。
アマリス
…これ、
魔法道具じゃないか。
夜桜猫
えっ、魔法道具?
アマリス
昔、郵便局は
なくてね、
アマリス
1100年前まで
魔法や動物を使い
やり取りをしてたんだ。
アマリス
そして、これは
街で多く売られていた
魔法道具で、
アマリス
封筒に宛先を
書き込めば
直接届けてくれるんだ。
夜桜猫
うわ~、
便利ですね!
夜桜猫
って事は、
昔は魔法が発展
してたんですか?
アマリス
そうだね。
夜桜猫
(その時代、
行ってみたいな。)
アマリスは
左手を封筒の上に
かざし、魔法を使った。
アマリス
……。
夜桜猫
何してるんですか?
アマリス
手紙の書かれた
住所の特定さ。
アマリス
この封筒は、
僕と似た分類の
魔法なんだ。
アマリス
差出し人が
封筒に住所を書き、
指示をする。
アマリス
だから、
主導権を僕に
変更して、
アマリス
『差出し人の所へ』と
命令すれば特定できる。
夜桜猫
(なら、
直接本人に
話を聞ける?)
アマリス
でも、残念ながら
この封筒は
できないね。
アマリス
上手く隠される。
夜桜猫
(残念…)
アマリス
魔法使いの家に行くなら、
闇ちゃんが方法を
知ってるかもしれない。
夜桜猫
闇桜が?
アマリス
彼女、
その魔法使いと
仲良かったんだ。
アマリス
一時期、
家に居候してたから
森を出入りしてた
はずだよ。
アマリス
でも、
彼女が知らければ、
僕も分からない。
アマリス
そこへ行けるのは
魔法使い自身だけ、
夜桜猫
そうですか。
夜桜猫
(後は最後の一文が
手がかり…か。)
夜桜猫
(一体
どういう意味
なんだろう?)
アマリス
後、
彼女の…
飼ってた生き物か。
夜桜猫
え??
アマリス
闇ちゃんから
ちらっと聞いたんだけど、
アマリス
魔法使いは
何か生き物を
放飼いしてた?って
聞いたんだよ…。
夜桜猫
何の生き物ですか?
アマリス
うむ…。
アマリス
まぁ、忘れたから、
闇ちゃんに聞いてくれ。
夜桜猫
あ、はい…
アマリス
ところで
森に行くなら、
武器も必要じゃないかい?
夜桜猫
武器?
アマリス
おそらく
手紙の差出し人は
只者ではない。
アマリス
あの森は
謎が多いから
危険なものがある
可能性もある。
夜桜猫
(つまり、
得体知れない
森って事か。)
アマリス
それに、昔
ある事件が多発して
たんだよね。
夜桜猫
じ、事件?
アマリス
そう、
アマリス
森に迷った者が
同じく迷った
野生動物に
襲われるってね♪
夜桜猫
うわっ…
夜桜猫
(凄い最悪な事件。)
アマリス
森は野生動物の
住処だからね~♪
夜桜猫
お金、
どれぐらい
かかります?
アマリス
無償で
作ってあげるよ。
アマリス
お金は
有り余ってるから♪
夜桜猫
(羨ましい発言。)
夜桜猫
あ、でも、
私武器持った
事なくて…
アマリス
全くかい?
夜桜猫
…はい。
夜桜猫
ただの
受付担当ですので、
アマリス
そうかい。
夜桜猫
…なんか、
変ですよね。
夜桜猫
魔法の使えない
非戦闘員が
いるなんて、
アマリス
変とかは
よく分からないけど、
アマリス
確かに
不思議に思うね。
夜桜猫
ですよね…
夜桜猫
(本来であれば、
私の居るべき
場所じゃないよね。)
アマリス
君、この街の
人間じゃないだろう?
夜桜猫
え?
アマリスは
先程と違った雰囲気、
真剣な表情で夜桜猫に問いかけた。
アマリス
確かに現代の者は、
消しさられた過去を
知らないのは当たり前。
アマリス
けど、君は
何かそれとまた違う。
アマリス
他の人間よりも
知らなすぎる。
夜桜猫
……。
アマリス
まぁ、話す
必要はないさ。
アマリス
隠し事なんて
誰にでもあるしね♪
夜桜猫
…そうですね。
夜桜猫
(でも、いずれ、
話さないと
いけないね。)
アマリス
後、その手首のは
闇ちゃんから?
夜桜猫
あ、はい。
夜桜猫
プレゼントして
もらいました。
夜桜猫
けど、サイズ小さくて
外れなくなって…
アマリス
それ取って
あげようか?
夜桜猫
いや、大丈夫です。
夜桜猫
貰い物なんで
壊すのは嫌ですし、
夜桜猫
特に害はないので
このままでいいです。
アマリス
そうかい。
夜桜猫
(まぁ、
取るには
手首痩せないとね…)
アマリス
じゃあ、話は
ここまでにして、
武器を試しに行こうか。
アマリス
適性なのを見つけよう。
夜桜猫
あ、はい!
夜桜猫
(扱える武器あるかな…)