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溺れる先にある愛を知ればええ。

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溺れる先にある愛を知ればええ。

2 - いち 「お互いを利用せよ」

♥

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2025年06月22日

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結良

荷物は全部持った?

……はい。

一人暮らしのために買った家。

もう2度と、来ることはないだろう。

(ありがとう。)

思い出のない、空っぽの家。

親との思い出も、

弟との思い出も、

ここには一つもない。

数少ない記憶すらも、 残らず、消えた。

1年前──

あの、さっきから何なんですか⁉︎

急に襲ってきた黒いサングラスの 集団。

「若頭が呼んでるからついてこい」 の一点張り。

  

な、なんでお前そんなに強いんだ!
ただの高校生だろ!!

何だっていいですよね⁉︎
いいからお帰りください!

結良

はいはいストーップ。

若い声のその人は、 土足で上がり込んでくる。

染めた様子のない茶髪と、 黄色の瞳。

他の人よりも明らかに若いその人は、 呑気に煙草を吹かしている。

ちょ……靴は脱いでください!

結良

あー、ごめんごめん、
汚すぎて土なのかと思った。

結良

……で、どうなってるの?

突然鋭く変わったその瞳に、 その場にいる全員の背筋がのびた。

結良

強い奴らを集めたと思ってたんだけど……君、強いね。
護身術とか習ってたの?

……いいえ。

結良

ふーん。

聞いてきたくせに興味なさそうに答える 若い人は、「それよりさぁ、」と 怒りの声色でサングラスの人達に 話しかけている。

結良

何女一人相手に十人がかりで負けてんの?うちの組が舐められたらどうしてくれんの?

さっきよりも暗く鋭い瞳で サングラスの人達を見ている。

怖い。

さっきまでヘラヘラしたのとは違って、 本当に怖い上司感が滲み出ている。

  

す、すみません……
私たちも全力で戦ったのですが……!

結良

何言い訳してんの?殺されたい?
お前も父親と同じ運命辿りたい?
なぁ、答えろや。

腹部を強く蹴られて一人気絶する。

それを見て皆青ざめをした顔をして 俯いてしまった。

結良

……さて、本題に入ろうか
菅川 樂ちゃん。

結良

君のお母さん、借金して逃げちゃったんだよねぇ。

あの母親のことなんて知りません!

結良

そんなこと分かってるよ。

結良

ここ数日様子を見てたけど、
家賃と学費でギリギリの生活送ってて、
母親どころか他の人とすら話す機会もないのに。

衝撃的な場面を見せられたせいか、 またあの母親に振り回されていると 分かったせいか、

足の力が抜けて壁際で尻餅をつく。

諦めからか、恐怖からか、 足に力が入らない。

あぁ、私ここで死ぬんだ。

結良

……弟君、今年受験生だっけ。

結良

結構可愛い顔立ちしてたよね~、病気もなく健康だし?売ったらいい金になると思うんだよね~。

その言葉を聞いた瞬間、 全身に鳥肌が立った。 血の気が引いて体が震える。

お願いします!
羅都には手を出さないでください!

私の臓器でもなんでも、
差し出しますから……。

最後の力を振り絞って 彼の前で土下座をする。

羅都には迷惑をかけた。

施設で楽しく暮らしているんだ。

結良

へぇ~、自分の全てを差し出せるくらい大事な弟君なんだ~。

だからこれ以上、 あの母親のせいで犠牲に なって欲しくない。

結良

いいよ、その羅都くん?には手を出さないで上げる。その代わり、条件がある。

……なんでも聞きます。

私がそう言うと、 彼は一枚の名刺を差し出した。

天城 結良

事務所の住所のような物も 書かれている。

結良

君が1年後、
高校を卒業したらここに来て。

結良

そして、こう言うんだ。

結良

“私と結婚してください”ってね。

……え?

結良

1ヶ月。
俺の婚約者役をしてくれれば、

結良

君の学費も羅都くんの学費も、
全部俺が払ってあげる。

結良

借金もチャラ。
どう?

少し、考える。

こんな甘い話があるはずない。

絶対に裏があるはず。

結良

あー、そうそう、
勘違いしないでね。

結良

父親が結婚しろってうるさいから一回書類通すだけ。

結良

つまり、お互い利用し合う
結婚ってこと。

結良

どう?

……分かりました。

出された名刺を 片手で受け取る。

1年後、お伺いします。

そう言うと、 にやりと彼は笑った。

その瞳に、光はない。

結良

契約成立、だね。
じゃあ1年後、待ってるよ。

そこから全員出ていくまでに、 時間はかからなかった。

結良

荷物、部屋に持って行くよ。

いえ、大丈夫です自分で運べます。

触れられたくない。

この人が何かをしたわけ ではない。

でも……それでも、

(この人とは仲良くしたくない。)

結良

えー、酷いなぁ。
善意で言ってあげてるのに。

いらないですそんな物。

私たちはお互い
利用するための配偶者ですから。

結良

……ふーん。

急にこちらを向いて 笑ったかと思うと、

こちらに少しずつ近寄ってくる。

結良

勿論、君が嫌だというなら
1ヶ月で離婚するさ。

結良

ただ……

結良

本当に1ヶ月後、
君がそう言うかは分からないけどね。

顎を掴まれ、ばっちりと視線が絡む。

黄色い瞳は、 奥底まで透き通っている。

まるで、太陽を眺めているよう……。

結良

君を引き摺り込んであげるよ。

結良

──海の底まで。

……やれるもんなら
やってみてください。

私は、貴方には堕ちない。

結良

へぇ……言うねえ。

結良

これから楽しくなりそう。

溺れる先にある愛を知ればええ。

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コメント

1

ユーザー

男の方が執着見せそうな感じがちゅき🌝🫰 1年後がたのちみだ!!!

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