テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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月の光を辿って

第4話 - 第4話「霽月」とは

104

2025年01月13日

#一次創作

#ファンタジー

#バトル

宵月シノ

霽月

はぁ……。

スイ

どうしたんです？

スイ

診療所で何かありましたか？

霽月

いや、別に……。

スイ

本当ですか？

霽月

本当だよ。特に何も無かった。

霽月

（証拠が、だけど。）

スイ

それなら良いのですが……。

イザヤ

そうくよくよしていられないだろ。

イザヤ

ほら、飯食べて元気出せ。

霽月

おぉ……美味しそう。

イザヤ

……それで、霽月。
お前の家についてなんだが───。

イザヤ

……お前、ここに家持ってないのか？

霽月

そうなんだ。

イザヤ

昨日、この集落の住民名簿を長から見せてもらったんだ。

イザヤ

そこにお前の名前が書いていなくてな。

イザヤ

家を建てて集落に住まう時はその集落で名前を登録してもらう必要がある。

イザヤ

そこに名前が無いということは、この集落に家が無いという証拠にもなる。

霽月

……そうだったんだ。

霽月

（記憶を失くす前のあたしはどこに住んでたんだろう……。）

霽月

（そういえば、2人と最初に会った時、イザヤがこの辺りでは聞かない名前って言ってたような───）

スイ

あ、はい。

スイ

そもそも、霽月さんの名前って本名なんですか？

スイ

本名とは違う可能性も───

霽月

あ、それあたしが言おうとしてたやつ。

イザヤ

……それもそうだな。

イザヤ

あの時、お前はどうして霽月と名乗った？

霽月

どうしてって───

イザヤにそう言われ、霽月は昨日のことを思い出した。正確には、2人に出会って名前を聞かれた時のことを。

霽月

（……どうしてだっけ？）

霽月

（あ、でも───）

霽月

……ふと、この名前が頭に思い浮かんだ。
だからそれが名前だと思って。

イザヤ

ほう……。

イザヤ

そうだな。「霽月」が、記憶を失くす前のお前と何か関係があるのかもしれない。

スイ

……そもそも、霽月さんの名前ってどうやって書くんですか？

霽月

あー……。どうだろう。

霽月

頑張れば思い出せる気もするけど、難しかった気がする……。

イザヤ

……気になるなら、これから調べに行くか？

イザヤ

スイ、今日の授業のスケジュールはどうなっている？

スイ

午前中なら空いてますけど……。

イザヤ

これから図書館に行くぞ。

霽月

急過ぎない……？

イザヤ

……昔、聞いたことがあったような気がするんだ。

イザヤ

小さい頃、とある物語を聞かされたことがある。その物語に出てきたはずだ。

霽月

物語？

イザヤ

だが、意味自体なら調べてしまった方がいい。

イザヤ

えーっと、霽月の意味は───

イザヤは辞書で「霽月」の項目を調べた。そこにはこう書いてあったのだ。

【霽月】雨が上がった後の月

霽月は疑問を抱きながら、イザヤが開いている辞書のページにある「霽月」の項目を何回も目で追っていた。

霽月

雨が上がった後の月……？

イザヤ

雨上がり……か。

イザヤ

お前に「霽月」という名前を付けた誰か……もしくはお前自身か。

イザヤ

その誰かに、雨上がり後の月に特別な思い入れがあったということだな。

スイ

あとは……“曇りが無くさっぱりした心境”という意味もあるみたいですね。

霽月

さっぱりした心境……？

イザヤ

ピンと来てないみたいだな。
何か思い出せないのか？

霽月

思い出せない。全く。

イザヤ

収穫は無し、か……。

イザヤ

よし、そろそろ診療所に戻るぞ。
霽月に手伝ってほしいことがあるんだ。

霽月

あたしに……？

スイ

それじゃあ、私は家に帰りますね。

イザヤ

あぁ。そうしてくれ。

2人が診療所に戻ってくると、イザヤは足を止めて霽月の方を振り返った。

イザヤ

さて、お前に手伝ってほしいことなんだが……

イザヤ

お前には、診療所の患者を手助けしてほしい。
簡単に言うと俺の手伝いだな。

霽月

何？人手不足？

イザヤ

うっ……まぁ、それもある。

イザヤ

だが、お前が患者と触れ合うことで何か思い出せることがあるのかもしれない。

霽月

……うん、分かった。
手助けが必要な患者はどこに居るの？

イザヤ

あぁ、この廊下の先にある───

コンコンコンッ

老婆

あら……どうぞ。

霽月

お邪魔しまーす。

老婆

あら、もしかしてイザヤさんの弟子さんかしら？

老婆

あの人、ずっと人が足りないって言っていたから良かったわ。

霽月

……違う。

霽月

あたしはイザヤの弟子じゃないよ。

霽月

イザヤに言われて手伝いに来ただけ。

霽月がそう言うと、老婆は一瞬ぽかんとしたような表情を浮かべた。

すると、老婆はくすくすと笑った。

老婆

あら……そうなの？

老婆

うふふ……イザヤさんは凄腕のお医者さんだから、私もいつ弟子が出来たっておかしくないと思っていたのだけれどね。

霽月

そんなに凄いの？

老婆

えぇ。私も何回もイザヤさんに怪我を治してもらったし、病気を診てもらったわ。

老婆

私の方が年上なのに不甲斐ないとも思ったことがあったわね……。

霽月

そう。

老婆

あぁ、貴方、そこの写真を取ってくれないかしら？

霽月

写真？これのこと？

写真立てに入っていた写真の中には、霽月の目の前の老婆と似ている女性と、少年にも見えるイザヤが映っていた。

老婆

懐かしいわ……。確かイザヤさんがここに来たばかりの頃だったわ。

老婆

最初の頃はイザヤさんは何だか暗い子で、本当にこの診療所を継げるのか心配だったけど……。

老婆

今になって分かるわ。
それは杞憂だったということがね。

霽月

（そういえば、イザヤはヤブ医者じゃないってスイも言ってた気がする。）

霽月

（皆に慕われてるんだ、イザヤって。）

老婆

そういえばあの人、ここに来たばかりの頃は確か───

コンコンコンッ

老婆

あら───イザヤさん？どうかしたのかしら？

イザヤ

……俺がここに来たばかりの頃の話は、こいつには話さないでください。

イザヤ

それでは。

ガラガラッ……

老婆

あら……ごめんなさいねお嬢ちゃん。
本人から言われてしまったら私も話せないわ。

老婆

興味があったらイザヤさんに聞いてみて。
答えてくれるかは分からないけれどね。

霽月

いいよ。別に興味無いし。

霽月

それじゃあお婆ちゃん、あたしは戻るね。

老婆

うふふ、話せて楽しかったわ。
ありがとう。

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2件

すみません…瀬乃です…なんやかんやあってまた転生してしまって…。本当にすみません…。名前…何か意味がありそう…あとイザヤさんも何か隠してるな…？昔に何かトラウマとかがあった…のかも…？

宵月シノ

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