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こうして響子と僕の忘れられない3か月が始まった。

そのあと響子と僕はLINEを交換した。

そこに響子のお母さんが戻ってきた。

響子

あ、お母さん

英司

あの、はじめまして

英司

英司と申します

響子の母

あら、あなたが英司くん?

響子の母

響子からあなたのこと聞いてたわ

英司

あ、そうなんですか!

響子の母

響子

響子の母

もう時間だから戻りましょう

響子の母

それじゃあ英司くんまたね

響子

ばいばい!

そう言って響子と響子のお母さんは去っていった。

この後何か用事でもあるのだろうか?

僕は家に帰って響子にLINEをした。

英司

響子さんって今大学生?

響子

そうだよ!

響子

大学2年生!

響子

英司くんは?

英司

俺も大学2年生!

響子

一緒だ!

英司

また次も水族館行かない?

響子

行きたいな〜

英司

来週の日曜とかは?

響子

その日はちょっと厳しいかな(>_<)

響子

来月の最初の日曜日だったら行けると思う!

英司

結構先だね笑

英司

わかった!

英司

じゃあその日予定空けとくね!

響子

ごめんね(><)

英司

忙しいの?

響子

響子

うん、ちょっとね

英司

そっか!

英司

じゃあ来月楽しみにしてるね!

英司

それとさ

英司

これからは響子って呼んでいい?

響子

いいよ!

英司

やった

英司

俺のことも英司でいいよ

響子

えー、なんか恥ずかしいから私は英司くんって呼ぶ!(〃ω〃)

英司

わかった笑

英司

それじゃおやすみ!

月日は流れ、約束の水族館デートの日がやってきた。

響子と僕は水族館で待ち合わせた。

響子

お待たせ、英司くん!

英司

おお、響子!

響子

やっと初デートだね!

英司

だな!

英司

あれ、前会った時よりちょっと痩せた?

響子

そう?

英司

ダイエットしてんの?

響子

あー、ばれたかー

英司

ダイエットなんかしなくても十分スタイルいいじゃん!

響子

そんなこと言ってくれてうれしーなー

久しぶりに響子に会えたこともあってその日のデートはとても楽しかった。

響子

楽しかったね〜

英司

2人ともイルカショーでイルカに水かけられるなんて思わなかったけどな

響子

ほんとだよー!

響子

でもすごくいい思い出になった!

英司

また今度行こうな!

響子

うん!

しかし、このデートが僕たちにとって最後のデートになるとは

この時はまだ知る由もなかった。

あのデート以来、LINEをしても響子から返ってくることが少なくなってきた。

2日や3日、長いときは1週間未読スルーされることも増えた。

そんなことがもう1か月以上続いた。

英司

なあ敦彦、どう思う?

敦彦

んー

敦彦

前のデートでなんかやらかしちゃったとか?

英司

全然思い当たらないんだよなー

英司

響子も楽しかったって言ってたし

敦彦

まあ女子は楽しくなくてもデート後は楽しかったって言うこと結構あるからなー

敦彦

んで後日女子会とかでつまんなかったことネタにされんだよ

英司

うわー、まじかー

英司

でもそんな子には見えないけどなー

敦彦

でもそんなに未読スルーが続くときついな

英司

なんか俺悪いことしちゃったのかなー

敦彦

おそらくお前のことが好きじゃなくなったか、他のやつのことが好きになったかだな

英司

なんだよそれ

英司

まだ数回しか会ってないのに

敦彦

お前たち付き合ってどれくらいだっけ?

英司

もうちょっとで3か月だな

敦彦

いい人いないか友達に聞いてみよっか?

英司

なんでもう別れることになってんだよ!

僕の中では、響子から嫌われたのではないかという不安と、急に素っ気なくなった響子への怒りとがぶつかり合った。

それから少ししたある日、一本の電話がかかってきた。

英司

ん?響子からだ...

英司

なんだろう?

僕は電話に出た。

別れ話だったらどうしようかとドキドキした。

???

あの、もしもし

???

英司くん?

どこかで聞いたことがある声だったが、明らかに響子の声ではなかった。

英司

はい、そうですが

英司

どちら様ですか?

???

響子の母です

僕はもう一度スマホの画面を見た。

間違いなく「響子」と表示されている。

英司

え、響子さんのお母さん?

響子の母

響子のスマホからかけてるの

英司

どうかされたんですか?

なぜ響子のお母さんが僕に電話をかけてきたのだろう?

もしかして

あなたといたら娘には悪影響だから、もう娘とは別れてください

なんてドラマでしか聞いたことがないようなセリフを今から言われるのか?

そんなことが頭をよぎったところで、響子のお母さんが言った。

響子の母

響子が...

響子の母

たった今死にました

周りの時間が一瞬にして止まった。

周りの音も一気に消えた。

響子のお母さんの「たった今死にました」が頭の中で反響する。

英司

えっと...

響子の母

もしよければ今から〇〇病院に来てくれない?

英司

はい...

「はい」とは答えたものの何がなんだかよく理解していない。

これは何かのドッキリなのだろうか?

響子の性格や、響子のお母さんの声のトーンからしてそれはないとはわかっていたが、ドッキリであってくれと心の中で願った。

僕はタクシーで病院へ向かった。

病院に着き、受付の人に響子の病室を聞いてそこに向かった。

病室に着くと1台のベッドに響子が眠っていて、その側で響子のお母さんが響子の手を握って座っていた。

響子が心地よく眠っているように見えたのも、その光景を見てもなおドッキリであってほしいと思っていたからだろう。

英司

あの...

響子の母

あ、英司くん

少し目が赤い響子のお母さんが僕の方を向いた。

顔には涙を拭いた跡があった。

その顔を見た瞬間、僕は完全にこれはドッキリではない、本当に響子は死んでしまったのだと理解した。

響子の母

来てくれてありがとう

英司

どうして響子は...

響子の母

実はね

響子の母

一年くらい前、突然お医者さんからガンだって言われたの

響子の母

しかも末期で、余命も1年くらいだろうって...

響子の母

そしたら響子、落ち込んでいた私に

響子の母

なっちゃったものは仕方ないよね!私これから悔いのないように生きる!

響子の母

って言うから、私もこの子の願いを出来るだけ叶えてあげたいと思って

響子の母

この子が好きな水族館に連れて行ったの

響子の母

そしてある日、この子がいつものように水族館に行きたいっていうからお医者さんに外出許可を取って行ったの

響子の母

そしたらその帰りの車の中で響子、あなたと出会ったこと楽しそうに話してたわ

英司

そうだったんですね

響子の母

あなたと付き合うことになった時もほんとに嬉しそうで、水族館デートできるってはしゃいでたわ

響子の母

でも徐々に食事の量も減ってきて、体重も落ちてきて

響子の母

デート当日は少し体調が良くなかったけど、外出しても大丈夫だろうってことで水族館に行ったの

響子の母

でも帰ってきたらこの子、イルカショーの話とかをニコニコしながら私に話してくれて

響子の母

あの時のこの子の幸せそうな顔、今でも覚えてるわ

響子の母

でもそのあと急に病状が悪化して、外出どころかトイレに行くのがやっとっていう感じだったの

響子の母

なのにこの子

響子の母

英司くんには病気のこと絶対に言わない

響子の母

次会った時も英司くんの楽しそうな笑顔が見たいからって、まっすぐ私を見て言ったのよ

響子の母

でも結局、そのあと響子はあなたに会えないまま...

響子の母

今日の朝もこの子、かろうじて喋ることができたから、英司くんに来てもらったら?って聞いたんだけど

響子の母

こんな姿見せたくないって...

英司

そんなことが...

英司

響子、僕のために無理して我慢を...

英司

なのに、どうして俺は気づいてやれなかったんだ...

響子の母

この子、あなたのために無理をしたり、我慢してるつもりはなかったと思うわ

響子の母

あなたの話をするときほんとに心の底から笑ってたから

響子の母

響子、亡くなる直前に言ってたわよ

響子の母

英司くんのおかげで残り少なかった人生を楽しむことができたって

響子の母

本当に感謝してるって

響子の母

響子の母親として、私からもお礼を言うわ

響子の母

本当にありがとね

響子の母

あんなに幸せそうに天国に行くことができたのは英司くんのおかげよ

響子の最後の言葉を、本当の想いを聞いて

少し前まで嫌われたのではないかと不安になっていた自分が、響子が素っ気なくなったと勝手に勘違いして腹が立っていた自分が、情けなくなった。

同時に、響子という存在を失った今、絶望感、喪失感、苦痛、悲嘆、様々なネガティブな感情がぐちゃぐちゃになっている。

本当に大切なものは失って初めて気づくらしい。

響子がもう手の届かないところにいってしまって、これほどまでに後悔や虚無感に包まれているということは

僕は響子を愛していたということではないだろうか。

これが愛なんだということを初めて知った。

あれから10数年たった今でも、あの時病室でいつのまにか溢れ出ていた涙の感触を、僕の頬は覚えている。

好きな人を失って後悔や虚無感に包まれて初めて、僕はその人のことを愛していたんだとわかる。

思い返せば、それまでの彼女と別れる時は後悔なんて全くなかった。

しかし、失って後悔するのではもう遅いし、あんな悲しい思いをするのはもうたくさんだ。

だから僕は

今あるかけがえのない時間や、大好きな妻と息子を

一生大事にしていきたい。

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