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テラーノベル(Teller Novel)

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浮き輪も、パラソルもない寂しい車を、 ひとりの女性が走らせていた。

助手席には、日焼け止めなどの、化粧品がぎゅうぎゅうに入ったポーチと、黒に金の装飾がされている、長財布が置かれている。

清花

あそこの駐車場か

そう呟いて真っ赤なネイルの手で、ハンドルを切った。

清花

荷物は持った、鍵は....オッケー!

清花

ついにきた

清花

海!

車を降りて小走りで海へ向かう

彼女のロングの茶髪がうねり、 大きく揺れる

コンクリートからパッと白い砂浜に変わった

清花

あつ~い

しゃく、しゃく、細やかな砂の上で、 手で日差しを遮りながら言った

清花

はやく日陰のあると
こに行かなきゃ

浅瀬にいるカップルや砂遊びをするこども、そのほかたくさんの人が楽しんでいる

清花

んーと...

カンカン照りのなか、海が光をキラキラと反射させる。

雲一つない青い空をバックに、彼女は赤いビキニ姿でいた。

清花

清花

あの人に声かけよう

彼女はなんの躊躇いもなく

狭いビニールシートに寝転ぶ、 サングラスをかけた、がたいの良い、 焼けた肌の男の方へ向かった。

清花

あの...

清花

よければ私と
一緒に過ごしませんか?

焼けた肌の男

男は、サングラスを外して起き上がった

サングラスの奥に隠されていた瞳は、 真っ黒で引き込まれそうだった。

焼けた肌の男

俺?

清花

はい!

男はキリッとした幅の大きい二重に、 高く、すらっとした、鼻筋で 人を寄せ付けないような雰囲気だった。

しかし彼女は

清花

とてもかっこいい方
だなと思いまして

焼けた肌の男

慣れてる感じだな

焼けた肌の男

緊張もせず

この様子である。

清花

そんなことありませんよ~!

清花

ただお兄さんが優しそ
うで

焼けた肌の男

ほんとかよ

男が血色の良い薄い唇で微笑んだ

自然と胸が高鳴る

焼けた肌の男

まあ

焼けた肌の男

となり座って

清花

ふふ、嬉しい

清花

それじゃ、隣失礼
します

清花

やっぱり優しいですね

焼けた肌の男

別に優しくないし...

雅人

あんまりからかって...
どうなっても知らねぇぞ

焼けた肌の男

てか名前は?

清花

清いに花ってかいて、
清花(せいか)です!

清花

お兄さんは?

焼けた肌の男

俺は雅人(まさと)だ

清花

雅人さん!いい名
前ですね

雅人

名刺交換でもしてん
のかよ

雅人

タメ口でいい

清花

わかったよ雅人

雅人

清花

.....これでいい?

雅人

...あぁ

清花

そういえば雅人は彼
女いるの?

雅人

いねぇよ

雅人

いたら一人でここに
いないだろ

雅人

そんなこと聞くって...

雅人

まさか、お前....

清花

何言ってんの!

清花

ちゃんとフリーだよ!

雅人

流石にそうか、ははっ

見た目とは裏腹に、雅人はすぐ心を開いた様子で

他愛のない会話でも、2人はあっという間に打ち解けた

清花

そうだ

清花

せっかく海に来たん
だし入ろうよ!

雅人

そうだな

清花はすぐに立ち上がって浅瀬まで走った

清花

ほら!はーやーく!

清花は雅人の方を振り向いて 早く来るよう大きく腕を振った

しかし雅人はゆっくりと、清花の方に進む

水深が腰まであるところに2人が入った

雅人

んで、何すんの?

清花は太陽の方を、眺めて、 雅人は清花の水滴が滴る背中を見る

清花

どうするって...

俯き、悩んだのも束の間 すぐに顔を上げて

清花

いいこと思い
ついた

清花がにやりと口角を上げる

すると突然

雅人

うおっ

清花が雅人に抱きついた

雅人

..っ...、何してんだよ

清花

ハグ

雅人

んなこと分かってるよ!

清花

そんな動揺して...もし
かして恥ずかしいの?

雅人

馬鹿いって...

さらに、言い終わる前に雅人の足の間に、清花が濡れた足を挟む

雅人

雅人ははなれようとするが

どんどん迫る波からバランスを保つために清花が強く抱きしめた

雅人

お前っ...いい加減に..

清花

いいでしょ?
どうせ夜にはもっと....

雅人

なっ...!

雅人

馬鹿....

だんだんと、雅人の顔は赤くなって、 気のせいか、肩に力が入っている。

清花

こういうの
慣れてない?

雅人

うるせぇ!

こんな高飛車な態度だが

実際、筋肉で厚みのあるカラダに 男という存在を感じてしまい、 自分の体を、密着させたままでいいのかと焦燥した

私は表情だけでも平穏を装うとする

雅人

ちっ...ちげーよ

清花

ほんと?ならもっと...

雅人

あーっ!!

雅人

もういいから!そう
だ、かき氷でも食おう

雅人

いくぞ!

昂った雅人は清花を引き剥がし、急ぎ足で売店へ行こうとする

清花

待ってー!

清花

....

清花

(よかった...)

清花

(あれ以上くっついてたら)

清花

(どうにかなるところだった....)

2人ともバクバクさせた心臓を感じながら ほっと、安堵した表情に変わった

清花は自分の顔が赤くなってることに 気付かずに、雅人の背中を追った。

清花

テーブルあるんだね

清花

それにしても疲れちゃった

雅人

ほら、かき氷何味頼む?

清花

んー

清花

いちご!

雅人

了解、俺頼んでくるわ

清花

私もいくよ

雅人

疲れてるんだろ、休んどけ

清花

えっ! あ、ありが..

雅人

それに席取られたくねぇし

清花

......

清花

はやく頼んできて!

雅人

はははっ

雅人

分かったよ

雅人が離れて自分だけになった時、

私は彼の台詞を思い出して、 思わず にやける。

「疲れてるんだろ、休んどけ」

清花

(普段ならあの程度の言葉でこんなに
意識することなんてないのに)

清花

(私どうかしてる...)

カップルが私の横を通り過ぎたときに にやけ顔を見られてしまい、 周囲に気を配った。

清花

(は、恥ずかしい....)

清花

(そういえば......)

清花

(雅人はなんで
1人で居たんだろう)

清花

(彼女はいないって
言ってたけど...)

雅人

ほら!持ってきたぞ

もやもやしていると、元気な声が響き渡る

清花

あっ!ありがとう

なぜか

雅人の私へ向けてくれる声に、表情に、 ドキドキする

これがさっきの 焦燥感によるものなのかは、分からない

雅人

お前目立つ水着だから
見つけやすいな

清花

そんなこと言って

清花

違う色の水着でも
見つけられるでしょ?

雅人

かもな

清花

えっ!ほんとに.....?

雅人

なんだよ、嬉しいのか?

清花

あっいや...

清花

そう言うとは
思わなくて...つい...

清花

えーと...

清花

食べよっか!

雅人

おう、いただきまーす

清花

いただきます!

氷がこぼれ落ちないように、 長いスプーンの小さなつぼに、丁寧に、 赤い氷を乗せる。

ぱくっ

舌に冷たさと、ほんのりイチゴの甘さが、小さな範囲で、冷気とともに 口の中で広がる。

清花

ん~!

清花

おいしい!

雅人

おい、
そんなに一気に食ったら...

清花

んっ!

清花

頭がっ...!

雅人

ほら見ろ

雅人

落ち着いて食べろよ

清花

うぅ...

氷が解け始め、

私は疑問を切り出す

清花

そうだ、雅人

雅人

ん?

清花

何で1人だったの?

雅人

あぁ、それは

雅人

本当は

雅人

彼女と来てたんだ

清花

.....

清花

え.....?

ドクン

その言葉に心臓が、一拍、強く脈打った

雅人

それがお前が来る前に別れちゃってよ

雅人

それだけ

清花

そう....なんだ

いつも通りに冗談が言えなかった

息が重苦しい

雅人

なんだ?気にしてるのか?

清花

...いや

清花

.......っ...

引きつった笑顔を見せて

清花

気にしてないよ!
ただびっくりしただけ

雅人

そうか

雅人

.........

雅人

嘘が下手だな

清花

えっ....

雅人

何だよその顔

雅人

気にしてるじゃん

清花

清花

気にしてないっ

清花

....からっ....

雅人

正直に言えよ

雅人

そもそも気にするとこって
何があんだ....

雅人

よ.....

雅人

お前もしかして

清花

清花

(どどうしよう....!)

清花

(なんて返せば....!)

雅人

あー.....

雅人

てかこのかき氷
俺が奢ってるんだけど

清花

へっ?

雅人

普通に食べてるけど

清花

そうだった..!

清花

(話を逸らしてくれた....?)

雅人

残すんじゃねぇぞ

雅人

人も増えてきたし早く食うぞ

清花

そっ

清花

そうだね!

2人は黙々とかき氷を頬張った。

*

かき氷を食べ終える頃には、空がオレンジに染まっていた

清花

わあ!もうこんな時間なの!?

雅人

そうみたいだな

清花

(空を見ると
なんだか落ち着く....)

清花

あー....

清花

どうする?帰る?

雅人

んー....

雅人

お前は?

清花

私はまだっ...

清花

まだ...一緒に居たいな~...なんて

雅人

そうか

雅人

俺も

清花

ほんと!?

清花

その...じゃあ....

雅人

雅人

見たいから

雅人

はじめの場所に戻ろう

清花

うん...!

雅人

行くぞ

雅人を先頭に、2人は、ゆっくり歩いた

さく、さく.... オレンジ色だった空もいつの間にか 薄暗い青色になり始めていた。

清花

...........

無言で歩きながら気持ちを整理する

焼けた肌に、吸い込まれるような瞳、

低くて、強い声、

本当は優しいところも、全部......

私.....

雅人のことが

好き

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