浮き輪も、パラソルもない寂しい車を、 ひとりの女性が走らせていた。
助手席には、日焼け止めなどの、化粧品がぎゅうぎゅうに入ったポーチと、黒に金の装飾がされている、長財布が置かれている。
清花
そう呟いて真っ赤なネイルの手で、ハンドルを切った。
清花
清花
清花
車を降りて小走りで海へ向かう
彼女のロングの茶髪がうねり、 大きく揺れる
コンクリートからパッと白い砂浜に変わった
清花
しゃく、しゃく、細やかな砂の上で、 手で日差しを遮りながら言った
清花
浅瀬にいるカップルや砂遊びをするこども、そのほかたくさんの人が楽しんでいる
清花
カンカン照りのなか、海が光をキラキラと反射させる。
雲一つない青い空をバックに、彼女は赤いビキニ姿でいた。
清花
清花
彼女はなんの躊躇いもなく
狭いビニールシートに寝転ぶ、 サングラスをかけた、がたいの良い、 焼けた肌の男の方へ向かった。
清花
清花
焼けた肌の男
男は、サングラスを外して起き上がった
サングラスの奥に隠されていた瞳は、 真っ黒で引き込まれそうだった。
焼けた肌の男
清花
男はキリッとした幅の大きい二重に、 高く、すらっとした、鼻筋で 人を寄せ付けないような雰囲気だった。
しかし彼女は
清花
焼けた肌の男
焼けた肌の男
この様子である。
清花
清花
焼けた肌の男
男が血色の良い薄い唇で微笑んだ
自然と胸が高鳴る
焼けた肌の男
焼けた肌の男
清花
清花
清花
焼けた肌の男
雅人
焼けた肌の男
清花
清花
焼けた肌の男
清花
雅人
雅人
清花
雅人
清花
雅人
清花
雅人
雅人
雅人
雅人
清花
清花
雅人
見た目とは裏腹に、雅人はすぐ心を開いた様子で
他愛のない会話でも、2人はあっという間に打ち解けた
清花
清花
雅人
清花はすぐに立ち上がって浅瀬まで走った
清花
清花は雅人の方を振り向いて 早く来るよう大きく腕を振った
しかし雅人はゆっくりと、清花の方に進む
水深が腰まであるところに2人が入った
雅人
清花は太陽の方を、眺めて、 雅人は清花の水滴が滴る背中を見る
清花
俯き、悩んだのも束の間 すぐに顔を上げて
清花
清花がにやりと口角を上げる
すると突然
雅人
清花が雅人に抱きついた
雅人
清花
雅人
清花
雅人
さらに、言い終わる前に雅人の足の間に、清花が濡れた足を挟む
雅人
雅人ははなれようとするが
どんどん迫る波からバランスを保つために清花が強く抱きしめた
雅人
清花
雅人
雅人
だんだんと、雅人の顔は赤くなって、 気のせいか、肩に力が入っている。
清花
雅人
こんな高飛車な態度だが
実際、筋肉で厚みのあるカラダに 男という存在を感じてしまい、 自分の体を、密着させたままでいいのかと焦燥した
私は表情だけでも平穏を装うとする
雅人
清花
雅人
雅人
雅人
昂った雅人は清花を引き剥がし、急ぎ足で売店へ行こうとする
清花
清花
清花
清花
清花
2人ともバクバクさせた心臓を感じながら ほっと、安堵した表情に変わった
清花は自分の顔が赤くなってることに 気付かずに、雅人の背中を追った。
清花
清花
雅人
清花
清花
雅人
清花
雅人
清花
雅人
清花
清花
雅人
雅人
雅人が離れて自分だけになった時、
私は彼の台詞を思い出して、 思わず にやける。
「疲れてるんだろ、休んどけ」
清花
清花
カップルが私の横を通り過ぎたときに にやけ顔を見られてしまい、 周囲に気を配った。
清花
清花
清花
清花
雅人
もやもやしていると、元気な声が響き渡る
清花
なぜか
雅人の私へ向けてくれる声に、表情に、 ドキドキする
これがさっきの 焦燥感によるものなのかは、分からない
雅人
清花
清花
雅人
清花
雅人
清花
清花
清花
清花
雅人
清花
氷がこぼれ落ちないように、 長いスプーンの小さなつぼに、丁寧に、 赤い氷を乗せる。
ぱくっ
舌に冷たさと、ほんのりイチゴの甘さが、小さな範囲で、冷気とともに 口の中で広がる。
清花
清花
雅人
清花
清花
雅人
雅人
清花
氷が解け始め、
私は疑問を切り出す
清花
雅人
清花
雅人
雅人
雅人
清花
清花
ドクン
その言葉に心臓が、一拍、強く脈打った
雅人
雅人
清花
いつも通りに冗談が言えなかった
息が重苦しい
雅人
清花
清花
引きつった笑顔を見せて
清花
雅人
雅人
雅人
清花
雅人
雅人
清花
清花
清花
雅人
雅人
雅人
雅人
清花
清花
清花
雅人
雅人
清花
雅人
清花
清花
雅人
雅人
清花
清花
2人は黙々とかき氷を頬張った。
*
かき氷を食べ終える頃には、空がオレンジに染まっていた
清花
雅人
清花
清花
清花
雅人
雅人
清花
清花
雅人
雅人
清花
清花
雅人
雅人
雅人
清花
雅人
雅人を先頭に、2人は、ゆっくり歩いた
さく、さく.... オレンジ色だった空もいつの間にか 薄暗い青色になり始めていた。
清花
無言で歩きながら気持ちを整理する
焼けた肌に、吸い込まれるような瞳、
低くて、強い声、
本当は優しいところも、全部......
私.....
雅人のことが
好き
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