拓海
ハァハァハァ
拓海
なんで何も言わないで行こうとするんだよ
さっきまで病院にいた僕は
いつも通り花穂への病室へ行った
病室へ入ると
部屋は綺麗に片付けられていた
担当の看護師さんに聞くと
彼女は海外で治療をするために今日出発するらしい
それを聞いた瞬間病院から飛び出した
最初はタクシーに乗っていたが
雨のせいで空港までの道が渋滞
飛行機が出航するまでに着きそうもなく
タクシーから降り
走り出した
出航は12時30分
今は11時30分
搭乗の時間を考えると
タイムリミットは約30分
間に合うかわからない
でも間に合うことを信じて走り続けた
花穂
書き終わった……
花穂
こんな感じでいいかな?
花穂
やっぱり短いかな?
花穂
でももう言葉が出てこないや
花穂
さっきから言葉より
花穂
涙が出て来ちゃってるからもう考えられないし
花穂
……
花穂
あと少しで出発の時間
花穂
2年間か……
花穂
もし私がいなくなっても私のこと忘れてほしくないな……
花穂
……
花穂
そろそろ行かないと……
拓海
着いた
拓海
今何時だ?
近くの時計を見ると時刻は
11時58分
僕は搭乗口の方へ
また走り出した
雨に濡れたせいで服が重い
肺がはち切れそうなぐらい苦しい
でも彼女が行ってしまう前に会うために 重い体を動かし続けた
あれから彼女を探し続けた
しかしどの搭乗口にも彼女はいなかった
時刻は
12時30分
拓海
間に合わなかった……
結局会うことはできなかった
彼女は僕に何も言わず
海外へ旅立ってしまった
『また会おうね』
そんな一言も言えずに






