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勝手に自分は孤独なんだと そう決めつけていた

本当の僕の傍には僕しかいないんだと

そうやって自分の首を絞めていた

でも違った

紘時は僕にそう教えてくれた

真っ直ぐな瞳で

信じてくれ

そう言った

いつもの解けた顔で笑うことはなかった

それは紘時が僕を信じてるから

僕を知りたいと思っているから

だから僕はそんな紘時を

信じようと思う

今はこれでいい

そうして僕は眠りについた

第2話 行方知らず

今日は何となく少し前向きな 気持ちでいられる

おはよ

憧埜

おはよ

てか来週の大会何出る?

憧埜

んー200mと400mかな

100m出ないんか

憧埜

うん

憧埜

恵は何出る?

100mと200mかな

100mで自己べ出して今年は気持ちよく終わりたい

憧埜

あと1週間頑張るか

気合い入れてこ

憧埜

おう

憧埜

じゃまた

また後でな

2人は互いに違う方向に足を進めた

涼しい風が髪と肌をすり抜けていく

そしてこの足が地を掴む感覚

やっぱり今日も

僕は生きてるらしい

結空

調子いい感じじゃん

憧埜

だんだん掴めてきた

結空

よかったよかった

憧埜

大会種目何出る?

結空

幅と100m

結空

シーズンラストだし100mは挑戦

憧埜

いいじゃん挑戦

憧埜

僕は200mと400m

結空

目指すは自己べ?

憧埜

まあとりあえず勝つよ

結空

ライバル?

憧埜

それもそうだけど

憧埜

その前に自分

結空

それは私も

憧埜

そっかw

結空は拳を憧埜に差し出した

憧埜はゆっくりと自分の拳を差し出した

すると結空は拳を翻した

結空

これあげる

憧埜

飴じゃん

結空

憧埜が好きなコーラ味

憧埜

急だな

結空

憧埜が0.01秒でも速く0.01mでも前に進むためのお守り

憧埜

お守りか

結空

じゃあ練習がんばろ!

憧埜

結空

結空

ん?

憧埜

ありがとう

憧埜は優しく笑顔を浮かべた

憧埜

大会まであとちょっと頑張ろうな

結空

うん

行方知らずのあの雲は空を泳ぎ 続けている

風に身を任せながら

ちょっとハードル運ぶ手伝って

憧埜

おっけーです

憧埜

高柴くん110mH出るんですか?

うん出るよ

憧埜は400mH出ないんだっけ

憧埜

はい

憧埜

今はちょっと跳べそうにないので

そっか

なんか今日の憧埜ちょっと元気そうでよかった

憧埜

ほんとですか?

うん

憧埜

大会近いですし

憧埜

チームに迷惑かけられないので

憧埜

前向いて頑張ります

うん頑張ろ

運んでくれてありがと

憧埜

全然大丈夫です

澄は少し笑ってから振り返った

靴紐解けてるぞ

憧埜

あほんとだ

憧埜

ありがと

少しずつでいい

着実に前に足を進めていく

未来の自分に恥じないようなそんな 現在を創る

でも少しは

辛くなってもいい

悲しくなっても

寂しくなっても

自分が分からなくなっても

それでもいい

あくまでそれは過程だ

辿り着いた先で好きな自分になればいい

好きな自分を生きればいい

今はそう思っていたい

憧埜

よし

靴紐を強く締めて立ち上がる

憧埜

春紀先輩

春紀

ん?

憧埜

一緒に400m走りましょ

春紀

珍しいな

春紀

いいよ

憧埜

ありがとうございます

紘時

俺も混ぜてよ

憧埜

しゃーないな

紘時

やった

春紀

恵、スタート言って

おっけーです

風が強く背中を押している

今日の自分は

きっと及第点以上だ

よーい

スタート!

勢いよく地面を蹴っていく

背中を押していた強い風は

いつの間にか逆行していた

それでも強く進んでいく

紘時

はー疲れた

憧埜

それな

紘時

今日の憧埜楽しそうだったな

憧埜

え?

紘時

んーなんて言うか

紘時

めっちゃ憧埜らしかった

憧埜

そうか?

少し嬉しくなって顔を逸らした

憧埜

まあそうならよかった

紘時

うんよかった

2人は少し間を空けてから笑いあった

漠然とした未来は

ずっと目の前に拡がっている

どこへ往くかなんて分からない

未来はいつだって

行方知らずだ

紘時

その調子でな

憧埜

うん

今日の夜はきっと

明けるのを躊躇ってくれないだろう

むしろ今日はそれがいい

紘時

じゃあな

憧埜

うんまたな

孤独の欠片は

まだ少しだけ心に残ったまま

明日は僕を待ってはくれないみたいだ

目を開くと部屋の中は柔らかい光に 満ちていた

少し憂鬱だけど

立ち上がってドアノブに手をかけた

憧埜

おはよ

おはよ

今日弁当いる?

憧埜

うん

急に母は僕の目を睨んだ

なんで泣いてんの?

憧埜

え?

一筋の涙が頬を滑る

手でそれをゆっくり拭った後 何も言えずにいた

憧埜

あくびのせいかな

憧埜

多分

最近の朝はずっとこんな感じだ

気がついたら泣いている

そして時々脳に宿る

正体不明の記憶

俺やっぱわからない

憧埜のこと

憧埜

…だよな

…ごめんな

憧埜

謝らないでよ

憧埜

僕ですら僕のこと理解できないし

憧埜

だからいいんだ

手には何故か強く力が篭っていた

…俺どうすればいい?

憧埜

…え?

長い間ずっと一緒にいたけど

なんか今

…お前の目見れないんだ

その言葉でわかってしまった

もう元には戻れないと

憧埜

そっか…

憧埜

まあ自分がしたい様にしてよ

ただ胸が苦しかった

垣間見える結末に

既に涙が溢れそうだった

その口が開いた瞬間

それと同時に心に大きな穴が空いた

ごめん

張り詰める空気が漂う

憧埜

…うん

呼吸が浅くなった

強い拒絶が胸を締め付けた

そして終止符が強く押し付けられる

…俺と憧埜は

友達で居られない

鋭利な鋏で切られたような

そんな終わり方

もう涙は止められなかった

憧埜

ごめんな

憧埜

全部僕のせいで

…っ

膝に伏して涙を流す1人

そしてその横で

どうすることも出来ない1人

その2人は

たった今引き裂かれてしまった

憧埜

…誰なんだ

苦く残る胸の痛みが足を鈍くさせる

よく分からない夢なのか

それとも僕が覚えていないだけの 1つの記憶なのか

皆目検討もつかない

おはよ

憧埜

おはよ

今日も眠そう

憧埜

ほんとに眠たい

あ、やば

憧埜

なに急に

今日朝練あるんだった

憧埜

うわやらかしたな

もう最悪

とりま急ぐ

憧埜

うんまた後で

そして一瞬で走り去っていった

忙しない感情が朝を彩りながら

朝日を背にして歩いていた

顧問

明日からシーズンオフの大会だから各々調整し明日に備えよう

はい!

大会前日

少し空気がピリついている

もう明日か早いなー

憧埜

だな

憧埜は1日目だけだっけ

憧埜

うん

憧埜

恵は1日目も2日目も出るよな

1日目は100mで2日目が200m

憧埜

自己べ出るといいな

絶対出す!

憧埜

僕も絶対出す

紘時

俺もー!

憧埜

急に入ってくんなよw

紘時

テンション上げてこ

紘時は落ち着いて走らないとな

紘時

うるさい

とりあえず頑張ろ

憧埜

うん!

紘時

おう!

そんな他愛のない話で笑いあっていた

相変わらず呑気だなあいつらw

春紀

ほんとにな

春紀

それくらいがちょうどいいんだろうな

そうだな

春紀

空気が和らいで気楽になるし

ありがたいよ

春紀

明日から俺らも頑張ろ

うん頑張ろ

温かさを帯びた北風がこの地を踏みしめる全員の髪をなびかせている

明日の空はきっと

晴れるんだろう

何の根拠もないことをただぼんやりと

思い浮かべていた

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