テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#ギャンブル
りんご
904
19
朽華 歌仙
78
橋は一歩ごとに揺れた。
下から熱風が吹き上がる。
生島菜々美
新倉穂乃花
菜々美が最初の聖火台へ着き、炎を移す。
台座が強く輝いた。
SYSTEM
続いて、穂乃花が2つ目へ火を移す。
SYSTEM
最後に爽香が対岸へ着いた。
だが、聖火を持ったまま動かない。
向こうでは、弥生が両手でレバーを押さえている。
身体は小さく震えていた。
金本爽香
橋村弥生
金本爽香
橋村弥生
弥生は苦しそうに笑った。
橋村弥生
金本爽香
橋村弥生
金本爽香
爽香の声から、初めて確信が消えた。
残り1分08秒。
橋村弥生
金本爽香
橋村弥生
金本爽香
橋村弥生
爽香は目を閉じ、聖火を最後の台座へ近づけた。
炎が移る。
SYSTEM
SYSTEM
3人の背後に、透明な壁が上がる。
金本爽香
爽香は戻ろうとするが、壁に阻まれた。
直後、橋が消える。
弥生だけが炎の向こうへ残された。
橋村弥生
レバーから手を離そうとする。
だが、両手は金属に貼りつき、動かない。
橋村弥生
SYSTEM
SYSTEM
橋村弥生
レバーの根元から炎が立ち上がり、両腕へ絡んで肩まで昇る。
橋村弥生
金本爽香
橋村弥生
金本爽香
橋村弥生
金本爽香
言葉は続かなかった。
橋村弥生
金本爽香
爽香は答えられない。
そして――
炎が弥生の全身を包んだ。
橋村弥生
声が途切れ、悲鳴も歓声と拍手に塗り潰された。
炎が消えると、弥生の姿はなかった。
レバーの場所には、人型の聖火台が立っている。
両手を差し出し、3本の炎を支える少女の像。
台座に文字が表示された。
第3競技献身者。
生徒ナンバー28・橋村弥生。
通過誘導人数3名。
SYSTEM
SYSTEM
SYSTEM
金本爽香
爽香は初めて名前だけを呼んだ。
だが、聖火台は答えない。
生島菜々美
菜々美は名を繰り返した。
利用されていたことを知っていた顔。
それでも一緒に進んだ時間を否定しなかった声。
最後に、爽香に選ばれる前に、自ら残ることを選んだ少女。
忘れないために――
だが、爽香の声はすでに揺れていた。
金本爽香
生島菜々美
金本爽香
名前を口にしても、爽香には戸惑いが残った。
弥生は何だったのか。
利用できる相手か――
自分を理解する唯一の相手か――
失って初めて気づいた何かか――
答えが出る前に、関係まで薄れていった。
SYSTEM
“橙の間”に、3つの栄光が現れた。
巨大な優勝カップ。
天井の優勝旗。
少女を模った聖火台。
SYSTEM
SYSTEM
SYSTEM
SYSTEM
SYSTEM
SYSTEM
SYSTEM
SYSTEM
SYSTEM
新倉穂乃花
SYSTEM
SYSTEM
SYSTEM
SYSTEM
SYSTEM
SYSTEM
生島菜々美
SYSTEM
SYSTEM
モニターから3人の名前が消える。
残ったのは数字だけ。
3分20秒。
2分39秒。
3名。
瞳子の速さ。
莉乃の執着。
弥生の決断。
少女たちの顔も声も感情も消え、結果だけが残った。
SYSTEM
SYSTEM
金本爽香
SYSTEM
SYSTEM
録音された拍手が響く。
誰も祝っていない。
それでも、歓声は鳴りやまない。
SYSTEM
SYSTEM
SYSTEM
SYSTEM
SYSTEM
壁から、3人分の制服が入った箱が現れた。
隣には、戻る者のいない3つの箱。
3人は体操服から制服へ着替えた。
爽香は、弥生の箱の前で止まる。
表面には、名前ではなく数字だけがあった。
3。
他者を通過させた人数。
金本爽香
金本爽香
続きを待つ者はいなかった。
SYSTEM
SYSTEM
正面に、動く床が現れた。
通路のはるか奥から、薄い紫の光が漏れている。
新倉穂乃花
SYSTEM
SYSTEM
SYSTEM
金本爽香
SYSTEM
生島菜々美
SYSTEM
SYSTEM
新倉穂乃花
SYSTEM
SYSTEM
3人の端末が点灯し、同じ文章が表示された。
SYSTEM
SYSTEM
回答欄はない。
菜々美は穂乃花の手を握った。
穂乃花も、すぐ握り返す。
爽香は少し離れ、聖火台を振り返っていた。
弥生の名前はもうない。
残るのは、他者を通過させた人数――3だけだった。
SYSTEM
3人は通路へ踏み出した。
背後では――
瞳子の優勝カップ。
莉乃の優勝旗。
弥生の聖火台。
それらが橙色に輝いている。
やがて、すべての名前が消えた。
残ったのは、栄光だけだった。
第8試練終了――
生徒ナンバー18・立花瞳子 脱落。 生徒ナンバー39・和久井莉乃 脱落。 生徒ナンバー28・橋村弥生 脱落。
残り3名。
コメント
1件
寺島あおいです、読み終わりました……。 弥生さんの「利用されてたとしても、一緒にここまで来たことは本当だから」という言葉が、胸に刺さりました。爽香が最後に初めて「弥生」と名前だけを呼ぶシーン、あの一瞬に彼女の後悔と距離感が全部詰まっていて。システムが「功績は保存するが存在は保存しない」と宣言する冷たさも、この作品らしい残酷さだなと。残された3人、次は「基礎構造」を問われる第9試練……続きが気になります。