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主。

みなさんこんにちはっ!!

主。

こちら、『太陽が沈む、その前に。』の第十話となりますっ

⚠️今回はちょっとした掘り下げがあるので、死ネタ未遂が含まれています⚠️ (虹椿ワールドなので毎度のごとく最終回はハピエンです)

主。

その他の注意事項等はプロローグ参照

主。

それでは、いってらっしゃいませ!!

At

ん、

検査を終えたあといつも通り眠っていた俺がベッドから起き上がると、 そこに広がっているのはここ数週間ですっかり見慣れた無機質な病室だった

At

えーっと、今の時間は、、、

サイドテーブルに置かれたデジタル時計を確認するために そちらに目を向けると、そこにはパイナップルゼリー6個入りのセットが そっと置いてあって、そばにはKtyさんの字で何かが書かれている メモ用紙が添えられていた

At

あ、これいつもの子からか

At

最近ラノベ持って行けてないな、、、

俺がいつも本を交換している顔も名前も知らない男の子に 少し申し訳ない気持ちになりながら窓の外を見ると、 太陽はすでに沈んでおり、そこに広がる空はとっくのとうに真っ暗だ

At

いつもこの時間に起きるんだよな、なんでだろ

睡眠というのは不思議なもので、俺は自分が何らかの夢を見ていることも それが心地よいものであることも誰かと夢の中で話していたことも 覚えているのに、その詳しい内容は覚えていない

At

今日はなんか、、、悲しかったけど

楽しかった、嬉しかった、悲しかった、ドキドキした

夢の中で自分が抱いた感情も明確に覚えているのに、 誰と話した、とか、何を話した、といったことは記憶に残らないのだ

At

変なの、、、

At

そもそも俺、感情なんてもう消えてるって思ってたのに

At

夢を見ている時だけは、なんか感じるんだよな

そんなことを考えながら何とはなしにサイドテーブルに目をやると、 俺のスマホがバイブレーションと共にメッセージの着信を告げる

そこに表示された送信元に俺はため息をつき、 その連絡を無視することにした

At

(どうせ、死ねだとかそんなんだろ)

そう呆れながら俺が思い出していたのは、 病院に入院する前に自分の身に起こったクソみたいな出来事のことだった

俺はいわゆる両親の一夜限りの関係でできてしまった望まれない子で、 母親が出産した後は孤児院の前に捨てられてそこで拾われた

とはいえ孤児院も18歳になれば退所しなければならないので、 誕生日が比較的早めで現在高3である俺はバイトと学校を両立しながら 自分の力でこの世界を生きていかなければならなかった

At

(今日も学校の後はバイトだな)

高校を卒業しなければ就職は難しいから何とか卒業したかったが、 俺はどんなに努力を重ねてもその結果が実るのには 他人と比較しても大量の時間を要するタイプであった

もちろんそれは学業においても例外ではなく、 バイトも勉強もしなければならないので他の学生より 勉強に費やせる時間が少ない俺は国語以外のテストは 全て赤点ギリギリというスペックの低い生徒だった

先生

おいAt、ここの数式わかるか?

At

え、

授業もちゃんと聞いているし、 他の奴らみたいに怠けて遊んだりもしていないというのに、 何度参考書を見て復習してもやっぱり俺は周囲の人間より習得が遅かった

黒板に記された数字とアルファベットの羅列は昨日も勉強したはずなのに、 いざ聞かれると混乱して解法が見えなくなってしまう

At

わ、わかりません、、、

先生

この前も教えただろ、どうしてわからないんだ?

At

そ、それは、、、

クラスメイト

まじか、あれわかんないとかある?www

クラスメイト

超基本的な問題じゃんwww

クラスメイト

しかも先生に教えてもらってるんだろ?www

クラスメイト

仕方ないよ、あいつ出来損ないだしwww

俺に後ろ指をさしながらくすくすと笑うクラスメイトたちに 不快感を抱いたこともないといったら嘘になるが、 全ては俺の努力不足が原因であるのでどうしようもなかった

At

(もっと、勉強しないと、、、)

そんなどうにもならない日常生活を送っていた俺にとって、 息抜きに自身が稼いだ金銭で購入したラノベを読むというのは 俺の人生の中で唯一の楽しみであった

At

(バイトの給料日も近いし、今月は想定より出費を抑えられたから
いつもの作品の新刊買おうかな)

ラノベというのは使われている言葉が比較的簡単なものであるし、 他の本と比べても短時間でサクッと読めるので 俺にとっては都合のいい娯楽であったのだ

何よりも、最終的に何でもうまくいってしまう ラノベ独特のご都合主義というやつが現実逃避にちょうど良かった

At

(こんなの、ただの現実逃避って分かってるけど、、、)

At

(別に日常生活に支障をきたしているわけではないし、
たまには息抜きも必要だよな)

元々そこまで頭がいいわけではなかったので周囲から バカにされていた俺だったが、ある日決定的な出来事が起こった

俺が少し前にバイト帰りに買ったラノベを読んでいると、 クラスメイトがツカツカと歩み寄ってきて俺の持っていた本を取り上げる

At

わ、

クラスメイト

何読んでんだよ、バカのくせに

クラスメイト

小学生向けの文庫本じゃね?www

クラスメイト

ちょっと読んでみよーぜwww

At

ちょ、返して

クラスメイト

何だよ、エロ本でも読んでんのか?w

クラスメイト

確かにこいつ変態っぽいもんなwww

クラスメイト

ははっ、学校でエロ本読むとかキモすぎだろwww

At

エロ本ではないけど、、、

クラスメイト

じゃーいいじゃん、見せてみろよ

クラスメイトたちは俺の言葉を聞かずに、 俺のラノベをパラパラとめくっていく

別にそれだけなら良かったけど、 その本を読んでニヤニヤと意地の悪い笑顔を浮かべたそいつらは 俺が本につけていたカバーを外して題名を読み上げた

クラスメイト

えーと、何だっけ?

クラスメイト

『学年の姫、なぜか陰キャのオレに惚れている!?』だってさwww

クラスメイト

何これ、お前の理想像?

At

いや、別にそういうわけでは、、、

俺はあくまで物語を傍観者として見るのが好きなタイプであるので 相手の言葉を否定しようとしていると、 彼らはニヤリと笑って俺の目の前でそのラノベを破いた

At

!!

At

(頑張って働いたお金で買ったお気に入りの本なのに、)

クラスメイト

きっっっしょ、そんなんばっか読んでるから
バカなんじゃねーの?

クラスメイト

おーいみんな、
Atのやつこんなキッショい話読んでるんだぜー?www

クラスメイト

これ読んでるやつはバカかくてーい、
お前らも気をつけろよー?www

彼らはビリビリになったラノベをクラス全員に 見せびらかしながら笑っており、 他のクラスメイトたちも俺たちを見ながら爆笑している

俺はただ、ビリビリになってぐちゃぐちゃにされたお気に入りの本と 誰も彼らの行動を咎めずに笑っているこの空間を眺めて 呆然と目を見開くことしかできなかった

その事件のあとから俺はクラス全員から バカにされていじめられるようになり、 そろそろ限界を迎えたので担任の先生に相談していた

At

あの、先生

先生

どうした?また数学の質問か?

At

あ、いえ、それは違くて、、、

俺は事情を説明したが、その話を聞いた先生は怪訝そうな顔を浮かべる

先生

うちのクラスの子達がそんなひどいことをするとは思えないな

先生

本当にいじめられているのか?

At

え、

そういうふうに問い詰められてしまうと、 遠回しに「いじめられているわけではないよな?」と言われている気がして 俺は何もいえなくなった

At

も、もしかしたらおふざけの範囲かもしれないです、、、

先生

そうか、じゃあこの話は終わりだな

そのあと彼は、何も知らないくせに知ったような顔をして、 こんなことを言ってきた

先生

まあ、万が一お前がいじめられていて、辛かったとして

先生

生きていればいつかいいことがある、だから諦めるな

先生

この世には、生きたくても生きられない人だっているし

先生

お前がいなくなったら、悲しむ人たちだっているはずだ

ああ、この人は何も分かってないんだ、と思った

At

そ、そうですね、、、

At

(こんな何もできないやつに、幸せな未来なんかあるわけないだろ)

At

(そもそも、いくらこの世には
生きたくても生きられない人がいるって言ったって
今しんどくて辛いのは本当だし、俺には関係ない)

At

(俺の人間関係も対して知らないくせに、
悲しむ人がいるだなんて無責任な、、、)

その後、俺が担任の教師に自分の境遇を相談することは二度となかった

周りの大人を頼ることを俺がやめた後も、 俺に対するクラスメイトたちの対応はエスカレートするばかりだった

クラスメイト

お、変態野郎が登校して来たぞー!!www

クラスメイト

よっ、学園の姫に愛されたい系男子!!www

クラスメイト

相変わらずキモい本読んでんのかー?www

At

……。

ほぼ全てのクラスメイトにそういうふうに言われるようになっていた俺は、 この時もうすでに自分の心の中心がすっかり抜け落ちていた

先生

よーしお前ら、席につけー

先生が入ってくるとみんなはさっと態勢を整えて 何事もなかったかのように先生の話を聞き始める

そんな彼らを眺める先生の顔には、 「ほら、やっぱりこいつらはいい子達だ」と書いてある気がした

ぼーっと先生の話を聞いている俺を、 クラスメイトたちが楽しそうに眺めていた

そろそろ心も体も限界を迎えるという時、 クラスメイトたちのイタズラで全員から一斉にメッセージアプリで 「死ね」と送られてきた

スクショを撮って証拠にすることも考えたが、 わざわざそこまでしていじめを撃退したところで この後自分にいいことなんかあるのかと考えてしまった

当時の俺の精神状態ではその答えなんか明白で

その出来事が今まで溜め込んできた「死にたい」の引き金となり、 俺は近所の海岸で自分の体を海に捨てた

流石に俺の異変に気がついたらしい担任の教師が慌てて 俺を海岸まで追ってきたらしいが、その時にはすでにもう手遅れだった

でも、その教師がすぐに救急車を呼んだせいで俺は一命を取り留めてしまい、 精神の病気と診断されて病院に送り込まれた

お見舞いにきた担任の教師に「もう来るな、中途半端に救われて迷惑だ」と 吐き捨てて、俺は再び1人になった

学校に戻れるわけなんかない、つまり俺は高校を卒業できない

結局どう転んでも不幸にしかなれない俺は、 今度病院のやつらの目を盗んでもう一度命を断ちにいくつもりだ

だって、生きていたってどうにもならないんだから。

At

そんなことないよ

心のどこかで、なぜか俺の声がする

At

俺に生きていてほしいって思ってる人、ちゃんといるよ

そう俺に話しかける声は まだ感情があった頃の俺の声と似ているようで、どこかが違った

At

ねえ、もう少しだけ生きてみない?

生きていたって、何にもならないだろ

At

……やっぱり、Mzじゃないとダメか、、、

誰だよ、そのMzとかいうやつ。

At

何とか“夢”のこと思い出せればいいのに、、、

お前は何を言っているんだ

そもそも、お前は誰なの?

At

俺?俺はね、、、

At

君の心のずーっとずーっと奥の一番真ん中のところにいる、君の一部だよ

意味わかんねえよ、何だそれ。

そう思ったところで、俺の意識はふっと浮上した

はっと俺が目を覚ますと、そこはいつも通りの病室で、 俺がこんなところにいる原因でもある出来事を思い出している間に 眠ってしまっていたらしいということを脳が少し遅れて認識した

At

なんか最近、よく眠くなるんだよな、、、

いつも寝起きはふわふわしていて夢の内容もあまり覚えていないのだが、 今回はものすごく明確にその内容を記憶している

At

自分に話しかけられる夢とか、疲れてんのかな、、、

夢の中で自分の声が言っていた“Mz”という名前に 俺が妙な引っ掛かりを覚えていると、コンコンとノックの音がして 看護師のKtyさんが入ってきた

Kty

あ、Atくん

Kty

今日は起きてるんだね

At

いや、さっきまで寝てて、ちょうど今起きました

Kty

そうなんだ

Kty

もしかして僕が起こしちゃった?

At

そういうわけじゃないです

Kty

なら良かった

Kty

そういえばAtくん、パイナップルゼリーみた?

At

さっき寝る前に見ましたよ、いつもの子がくれたんですよね

Kty

そうそう

Ktyさんが相槌を打ちながら俺の夕食を持ってきてくれて、 俺はぺこりとお辞儀をする

At

あ、今のうちにラノベの続き渡しておきますね

At

何巻でしたっけ?

Kty

えーっとね、確か、、、

いつもの子に渡すためのラノベを数冊取り出し、Ktyさんに手渡す

と、そこで、Mzのこともダメ元で聞いてみることにした

At

あの、Ktyさん

Kty

どうしたの?

At

ダメ元で聞くんですけど、Mzくんって知ってますか?

Kty

……え、Mzくん?

At

はい

Kty

同じ名前の子は知ってるけど、、、

Kty

Atくんが知りたいその子のことかわかんないなあ

At

わかんないです、俺となんか関わりあるみたいで

At

Ktyさんが知っているMzくんは、どんな子ですか?

Kty

白と黒のツートンカラーの髪の毛の子で、
悪魔のピン留めつけてるよ

Kty

瞳は確か、、、黄色だったかな?

At

……え

Ktyさんから聞いたその子の特徴に、 俺は今日廊下でぶつかったあの男の子の姿を思い出し、 それを思い出した俺の心臓はどく、どくと大きく波打ち始める

頭の中に見覚えのある海岸とそこで座って海水に足を浸し、 笑いながら話しているその子の姿がチラチラとチラついて、 なぜかそわそわして落ち着かない

At

(何だろう、これ)

Kty

Atくん、どうかした?

At

あ、いえ、何でも、、、

Kty

そっか、?

Kty

僕は仕事があるから戻るけど、
何かあったらすぐにナースコールを鳴らすんだよ?

At

はい、わかりました

Kty

それじゃあまた来るね!!

笑顔で俺の病室から出ていくKtyさんを見ながら俺は、 今日すれ違ったあの子と その姿に自分の心臓が妙な反応を示す理由について考えていた

太陽が沈む、その前に。

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