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────珀は「部室に案内する」と言い、廊下をどんどん進んでいく。

寧々と少年はその後を追っているが、

彼の歩くスピードがとてつもなく速い。

何せ1年生はまだ校舎に慣れていないわけで、

この広い校舎では、置いていかれたら迷子になる可能性すらあるのだから、

彼女らは必死について行くしかなかったのだ。

寧々

(…本当に広いんだな……)

寧々

(これからの学校生活が少し不安かも…)

───……なぁ

隣を歩いていた少年が話しかけてくる。

そういえば、名前なんて言うの?

寧々

寧々

亜矢乃 寧々

亜矢乃?

寧々

うん

もしかして、硝子作品作ってる人?

寧々

…それ、父さんね

どーりで、髪色が似てたわけだな!

寧々

……

寧々

そっちは?

あ、そうだな

俺は一本槍 遥斗

遥斗

国際言語科だよ

遥斗

寧々は芸術科だろ?

寧々

よく、分かったね

遥斗

だって、紫色が使われた制服だしな!

寧々

(あ、そうか)

寧々

……国際言語科?

寧々

って、何色だったっけ?

遥斗

青色だな

寧々

(だから、青いパーカー着てるのか…)

寧々

(…珀先輩は何科なんだろ?)

そんな事を話しているうちに、珀はある部屋の前で足を止めた。

遥斗

ここが、部室っすか?

そうだよ、さあ入って!

言われるがままにスライドドアを開け、彼女らは部屋に入る。

────家、だ。

そう、紛れもない「家」だった。

遥斗

え、学校の中だよな…?

ふふ、驚いただろう

寧々

な、何でこうなってるんですか……?

異世界研究部は、特別なんだ

寧々

特、別……?

寧々

(言ったら悪いけど、マイナーな部活が…??)

────詳しく言うと

グルグルと答えを探している私たちを見かねて、それまでソファーで本を読んでいた少女が口を開く。

……冬華宮高校の部活動は

部室を自由にカスタマイズできるの

遥斗

でも、それだとここだけ特別、とはならない気がするんすけど

特別、って言うのはね…

カスタマイズと言っても、ここまで変えることは普通できない

寧々

なら、何で…

……部長の我儘だよ

彼がお金を出して、部屋を改造するように言ったの

遥斗

えっ?!

はは、懐かしいね!

校長にはこっぴどく扱かれたなぁ

遥斗

でしょうね!?

まぁ、お陰で居心地は良いんだけど

そうさ、皆もっと感謝してくれたまえよ

寧々

(もう無茶苦茶だ、この人……!!)

まぁ、そんなことは置いておいてだね

さっそくだけど、活動内容を紹介させてもらうよ

「コホン」と大袈裟に話す準備をした後、

珀は異世界研究部の活動内容について話始める。

まず、ここで言う「異世界」は、「ミラーワールド」のことを指すよ

寧々

ミラーワールド、ですか?

寧々

(鏡の世界ってこと…?)

私は思わず、真剣に耳を傾けていた。

そう、安直だけど、「鏡合わせの世界」のことさ

鏡を隔てた向こう側にあるミラーワールドは

こちら側の世界とほとんど変わりがない

そして、ミラーワールドに住む住民を「ドッペルゲンガー」と呼んでるよ

聞いたことあるだろう?

遥斗

あれっすよね、自分とほとんど顔が変わらないやつ

そう、でも性格とか、見た目が鏡合わせになっているんだ

例えば、現実世界では活発で運動神経が良い人間は、ミラーワールドだと内気で運動音痴になってたりするよ

……君とかね

そう言って、遥斗の方をちらっと見た。

遥斗

俺っ?!

遥斗

俺が運動音痴……??

ふふ、気になるだろう?

寧々

(本当だとしたら凄いことだけど…)

でも、1つ注意しないといけないことがあるんだ

寧々

ドッペルゲンガーのことさ

奴らは時々、こちらの世界にやって来る

すると、どうなるか分かるね?

寧々

……自分が、2人いる?

そう!

遥斗

え、でもそれだと凄く面倒臭いんじゃないですか?

遥斗くんの言う通りだよ

……自分は、1人だけでいいんだ

だから─────

ドッペルゲンガーは、自分の存在という椅子を奪おうとするのさ

寧々

「入れ替わり」……とも呼ぶね

寧々

そうすれば、ドッペルゲンガーは入れ替わった人としてこの世界で生きることが出来る……?

君、詳しいじゃないか

寧々

い、いや…予想です……!

遥斗

でも、元の人は何処行くんだ?

閉じ込められてしまうんだ、ミラーワールドにね

遥斗

怖っ!!!

おや、信じてくれたかい?

遥斗

いや、流石に信憑性は無いっすけど……

寧々

私も…まだ信じられないです…

寧々

(……でも)

寧々

(妙に、リアルだな…)

まぁ、恐ろしさを知ってもらったところで

長くなってしまったけど、ボクたち異世界研究部はミラーワールドとドッペルゲンガーについて研究しているよ

寧々

…あの

どうしたんだい?

寧々

さっきの質問、そのまま返しますけど

寧々

な、何でそんなに詳しいんですか…?

─────へぇ?

少し、興味があっただけだった。

でも、聞いて直ぐに後悔した。

そこ、聞いちゃうんだ?

表情は今までと変わらず、張り付いたような笑顔。

けれどその口が発する一音一音に、圧がこもっていたからだ。

寧々

(き、聞いちゃいけないことだった……??)

─────後輩を怖がらすな

その時、気怠げな声が珀の言葉を止める。

だから皆逃げてくんだよ

いい加減学べ

あれっ!

庵居たの!?

「庵」と呼ばれた人物は小さく舌打ちをした後、再び口を開く。

さっき挨拶しただろーが…

話、逸れてるぞ

ごめんって、後で何か奢るからさ

購買のメロンパン

よし来た!

寧々

……

寧々

(怖……)

……で、まぁ何でボクがこんなに詳しいのかって言うと…

寧々

(この流れで続き言うんだ)

実は、行ったことあるんだ

────ミラーワールドにね

寧々

……

寧々

えっ?

遥斗

…行ったんすか、異世界に?

うん

あまりにあっさりした告白だったので、

寧々と遥斗はお互いの顔を見合せ、唖然としていた。

信じられないって顔してるね?

寧々

……だって、それ以前に、まだあるかどうかも怪しいんですし…

じゃ、体験してみる?

遥斗

え?

遥斗

ミラーワールドを?

行きはしないけれど、あるってことは分かるはずだよ

そうだな……

君も行くよね?

庵でもない、寧々、遥斗でもない、少女でもない誰かに、珀は声を掛けた。

──行きます

声のするほうを振り返ると、真面目そうな少年が居た。

君も1年生だもんね?

…はい

遥斗

あっ!

遥斗

梓馬 優!!

寧々

優…?

……優だけど

何?なんで知ってんの?

遥斗

同じ中学だったよな?

遥斗

頭良いって有名だった…はず

ふーん…

真冬の気温のような態度で相槌を打った後、優は珀に続いて行ってしまった。

遥斗

……かっ…

遥斗

感じ悪っ……?!

寧々

…でも、遥斗も最初にしては馴れ馴れしかった

遥斗

うぅ…気をつけます…

寧々

(意外と聞き分けはいいんだな)

寧々

(それとも、余程ショックだったのか……)

おーい、着いてきてー

寧々

あ…

寧々

は、はいっ!

私たちも慌ててその後を着いていくと──

壁一面に、鏡がズラリと並ぶ部屋に通される。

寧々

(何…ここ……?!)

どこを見ても、私が居る。

そんな感覚は初めてで、長時間居たら気が狂ってしまいそうだった。

───本当に学校なのか、疑われるくらいですね

ふふ、驚くのはまだ早い

3人とも、3分間だけ鏡の前に立っていてくれないかい?

その間、鏡から顔を逸らしてはいけないよ

遥斗

えっ、何で?

少し、不思議な体験をしてもらうだけさ

ほら、前に立って

促されるままに、私たちはそれぞれ鏡の前へ立つ。

3分経ったら顔出すからね

言うことだけ言い、珀は部屋から出ていってしまった。

残された3人は、ただ何もせず、鏡に映る自分を見ている。

寧々

……

寧々

(…この空気、どうしよう……)

耳鳴りがするくらい静かな空間の、どことなく気まずい空気は、

時間が経つことさえ遅く感じさせる程だった。

遥斗

───……なぁ

静寂を破り、遥斗が口を開く。

遥斗

優は、何科なの?

「後で話せば良いのに」と思ったが、

この雰囲気で会話を試みる勇気は賞賛に値する。

……何で僕?

遥斗

だって、寧々はさっき聞いたし

…理数科

遥斗

じゃ、俺ら全員違う科なんだな

遥斗

後、遥斗でいいぜ

…なら、遥斗は何科?

遥斗

国際言語科!

遥斗

ほら、寧々もさ

寧々

…私、芸術科

ふーん

一瞬の静寂を感じ取った私は、必死に話題をばら撒く。

寧々

…っあのさ

寧々

優は最初から異世界研究部希望だったの?

そう言って、寧々は鏡越しに優に目を向ける。

そうだけど

遥斗

オカルトとか、好きなのか?

……

寧々

優?

…まぁ、少しは

遥斗

へー、いーじゃん

寧々

ね、だから先に部室いたんだ

…え?

私たちの声に、優は目を見開く

寧々

(何かおかしな所でもあったかな)

遥斗

ん?

───笑わないの?

彼は心底驚いているようだった。

遥斗

当たり前じゃんかよ

遥斗

人の趣味笑う奴なんかいんのか?

……

…変なの

遥斗

はぁー?!

遥斗

何だよそれ、どういう意味……────

その時だった。

遥斗

────うわあっ?!?!

遥斗が突然、叫び声を上げたのは。

寧々

えっ?

……何?

私と優も、反射的に顔を鏡から逸らして遥斗の方を見る。

遥斗

あ、あ……

見れば、遥斗は腰が抜けているようだった。

寧々

え、何?

……だっさ

遥斗

いやっ、今、今さっ…!

遥斗

────俺 が 、 笑 っ て た … …

寧々

……はぁ?

思わず、鋭い返しをしてしまった。

詳しく

遥斗

さっきまで、鏡見てたじゃんか

遥斗

そしたら、俺は笑ってないのに、鏡の中の俺が笑ってて……

寧々

え…?

遥斗

本当なんだって!

…じゃあ、もしかして──

ガチャッ

───おーい、どうだった?

混乱の最中、珀が部屋に入ってくる。

…遥斗が、「鏡の中の自分が笑った」と言ってます

まぁ、そんなとこだよね

いい叫び声だったよ、遥斗くん

遥斗

マジビビった…

とりあえず、部屋から出ようか

───まぁ、君が見たのがドッペルゲンガーだよ

やっぱり…

寧々

でも、私たちは見えなかったんです

君たち、顔を逸らしただろう?

寧々

……あっ!

寧々

(そういえば、言われてた!)

遥斗くんだって、見た時驚いて1回目を逸らしたんじゃないかい?

遥斗

あ、だから直ぐ見えなくなったんすね…

…残念

そうだね、だけどこれは正しい対応の仕方だ

寧々

正しい、ですか?

あぁ

遥斗くん、ドッペルゲンガーを認識する前、何か違和感はあったかい?

……そういえば、映ってる俺の姿が歪んだような?

そうだろう?

実は、ドッペルゲンガーが現れるまでの段階があるんだ

1つ目は、鏡の前に立つこと

2つ目は、鏡から6分間顔をそらさないこと

2分したら、鏡に映る自分の姿が歪み始める

3分したら、鏡の中にドッペルゲンガーが出現する

4分したら意思疎通が可能になる

そして、6分経つと、現実世界にドッペルゲンガーが出てきてしまうのさ!

あ、だから3分間だけ立ってたわけなんですね

その時、嫌な事実を思いついた。

寧々

…1分でも間違えてたらとんでもない事になってたんじゃ…?!

ふふふ…どうだろうね

遥斗

い、命懸けの体験だったのかよ!?

まぁ、安心してくれたまえ

対処法は存在している

寧々

それはつまり、入れ替わりを防ぐ方法ですか?

その通り!

簡単なことだよ

……1週間経つ前に、ドッペルゲンガーを殺してしまえばいい

遥斗

は…殺す……?

所詮、鏡合わせの存在さ

心臓を突いてしまえば、割れて消えてしまうよ

寧々

そ、そんなこと…

「ドッペルゲンガーを殺す。」

それはつまり、「自分を殺す」と言っても過言では無い。

寧々たちが絶句していると、優は口を開く。

どうして、1週間…?

それはだね、奴らは1週間しないと入れ替わることができないからさ

ね、ハードルは低いだろう?

寧々

……

…部長、やりすぎ

現に部員が少ないんだから、もっと危機感持ってよ

あー…

しばらく目を泳がせた後、パッと笑顔になってこう言った。

…ごめんよ!

ボク、こういうの大好きだから、ブレーキ効かなくなっちゃうんだ!

寧々

…見れば分かります

寧々

(まぁ、でも…)

寧々

(お陰で気になりはした、かな…)

…ここら辺でもういいよね?

何がですか?

体験入部

寧々

…はい!

まだ、2日間はあるから、ゆっくり決めて

言ったか分からないけど、兼部も可能だから

寧々

あ、ありがとうございました…!

ちなみに、今の意向を聞いておこうか

えー、まず、遥斗くん!

遥斗

俺っ?!

遥斗

いや、もうバスケ入ってるから、そっちに専念したい…

遥斗

…でも

寧々

遥斗

ちょっと、面白そうだとは、思ったっす

───本当かい!!!!

たちまち珀は遥斗の手を掴んだかと思うと、そのままちぎれそうなくらい上下に腕を振った。

遥斗

うおっ?!

嬉しいよ!!

遥斗

いやっ、まだ入るって言ったわけじゃ!!!

寧々

(必死だな…)

───僕は、入ります

寧々

(優は、まぁそうだろうな、オカルトが好きって言ってたし)

……寧々ちゃんは?

寧々

私は……

寧々

…すみません、まだ少し考えさせてください

寧々

他の部を見てから決めます

そっか、残念

まぁ、それも選択だ

また決まったら来ておくれよ

寧々

…分かりました

……それじゃっ、解散!

遥斗は第1体育館へ向かい、優はそのまま部室に残った。

寧々が部屋を出ようとした時、先程の少女に呼び止められる。

───寧々ちゃん、だよね

寧々

…!

寧々

(さっきの人だ…)

寧々

(そういえば、名前を聞いてなかったな)

寧々

あの、お名前は…

あ、そうだよね、ごめん

海月

私、那谷寺 海月

海月

美術部に兼部してる

海月

寧々ちゃんは芸術科でしょ?

寧々

は、はい…

海月

よかったら、美術部…見に行かない?

寧々

寧々

(鮎も、居るかな)

寧々

(美術部も気になってたし、行ってみよう)

寧々

ぜ、是非!

海月

…じゃ、行こっか

美術室

───最初は「ガラガラ」だと思った。

でも、奥の方を見て気がついた。

室内に居る部員が全員、ある机に集まっているのだと。

海月

…凄い人だかりだね、どうしたのかな

寧々

(そういえば、鮎の姿が見えないな……)

先輩の後に続いて人集りに近づいていくと、その中心に見知った顔がいた。

寧々

あ!

海月

お友達?

寧々

は、はい…えっと

寧々

────鮎?

深い紫色の髪を揺らして、鮎は振り返る。

あら、寧々、来たのね

寧々

この、人たちは?

美術部員

───これですよ!

寧々

わっ?!

そうして、部員はある絵を見せる。

寧々

…!

淡く、綺麗な水彩画だった。

美術部員

体験したいって言うから、自由に描いていいよって紙を渡したの!

美術部員

凄くない!?

美術部員

レベチだよ…

寧々

…凄いね

でしょう?

寧々

もう入るの?

それが、部長さんがいらっしゃらないって…

海月

───呼んだ?

その声に、机の人集りが一斉に顔を向ける。

寧々

えっ?

海月

私、私が部長

寧々

(この人、3年生だったの…?)

2年生だと思っていたため、寧々が驚いていると、

美術部員

あ!海月先輩!

美術部員

兼部の方行ってたんですか?

美術部員

見てくださーい、私にしては上出来ですよね??

──と、その人集りはあっという間に海月の方へ行ってしまったのだ。

私は、横目で鮎を見る。

少し、唖然としていたようだった。

寧々

(…そうだよね、いきなり注目の的が変わったら…)

海月

はい、ちょっと待っててね

海月

……で、入部届けだっけ?

……あ

はい、よろしくお願いします!

海月

後で顧問にも見せておくね

ありがとうございます!

あの、さっき兼部とお聞きしましたが…

海月

うん、兼部してるよ

海月

……それより、寧々ちゃんとお友達?

はい

寧々

同じ芸術科です

海月

なら、寧々ちゃんも入ってみる?

寧々

えっ、美術部にですか?

海月

うん

海月

お友達が居るならやりやすいし、ここ凄くユルいからさ

寧々

そう、ですね…

私は、歓迎するわよ

寧々

(そっか、鮎はもう入部してるのか)

寧々

…じゃあ、入ってみようかな?

海月

うん、いいよ

寧々

(え、軽くない?!)

ふふ、これからはライバルね?

寧々

…まぁね

海月

どうする?部の様子でも見る?

寧々

そうですね、まずは普段何やってるのかを知りたいです

海月

分かった、じゃ、鮎ちゃんももう1個何か作るか

はい!

そうして、私たちはそれぞれ作品づくりに取り掛かった。

ダンッ

ダンッ

───ボールをつく音が、広い体育館に木霊している。

男子バスケットボール部員

────すみません!

右手のタオルで汗を拭いながら部員は言う。

バスケットボール部長

どうした?

男子バスケットボール部員

水切れたんで、入れてきます!

バスケットボール部長

はーい

バスケットボール部長

皆も水分補給忘れないでな!!!

まだ肌寒い時期と言っても、

走り続けてるとどうしても汗はかいてしまう。

そんな熱気を感じる体育館で、遥斗は休憩中だった。

遥斗

……はぁ…

まだ荒い息を落ち着かせる。

遥斗

バスケットボール部長

遥斗!

遥斗

はーい!?

バスケットボール部長

今日他の部も見に行ったんだろ?

遥斗

そうっすね

バスケットボール部長

何部だ?

遥斗

……あー…

遥斗

(やっべ、言いづらいな何か……)

男子バスケットボール部員

遥斗くん、珀先輩に捕まってたよね

遥斗

!!!

遥斗

見てたんすか?!

男子バスケットボール部員

だって、メッチャでかい声だったし

そう言って気の毒そうに笑った。

男子バスケットボール部員

珀先輩、メッチャイケメンなのになぁ

男子バスケットボール部員

何て言うか…その…

男子バスケットボール部員

……変わってる

男子バスケットボール部員

そう!変わってる!

バスケットボール部長

へー、ってことは

バスケットボール部長

異世界研究部ってやつにでも行ってたのか?

遥斗

あー、まぁ…そうっすね

バスケットボール部長

────子供騙しだよなぁ

遥斗

男子バスケットボール部員

まぁ、どうせ早いうちに潰れますよ!

バスケットボール部長

だなー

遥斗

……

男子バスケットボール部員

遥斗くんもそう思うでしょ?

遥斗

……

遥斗

(出たー、そうやって意見求めるヤツだこれ…)

もし、異世界研究部であの体験をしていなかったら、

俺は、笑って「はい」と即答していただろう。

……でも、と思う。

───笑わないの?

遥斗

(……オカルト、か)

考え込む俺に疑問を持ち、部長が話しかけてこようとしたところで、

水を入れに行った先輩が帰ってきた。

男子バスケットボール部員

────戻りました!

バスケットボール部長

ちょっと遅いぞーっ

男子バスケットボール部員

すみません!!

男子バスケットボール部員

ちょっと、顔洗ってました!!

バスケットボール部長

なるほどー、ベタつくもんなー

遥斗

(そういう問題なのか?)

バスケットボール部長

はい、じゃあ休憩終わり!

バスケットボール部長

あと30分!気張っていきましょうっ!

男子バスケットボール部員

───はいっ!!

男子バスケットボール部員

───あ、そうだ遥斗くん

遥斗

男子バスケットボール部員

これ、あげる

そう言って先輩は左手に持っている塩分補給のタブレットを渡す。

男子バスケットボール部員

実は、さっき教室行ってきたんだ、これ秘密な!

遥斗

あ…はい…

遥斗

ありがとうっす!

モヤモヤした気持ちを胸に抱きながら、遥斗は連に戻るのであった。

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