胃腸炎で入院したときのこと
ぼくの向かいのベッドの枕元には
野球ボールが置かれていた
その人は外出中のようだった
コンコン(窓を叩く音)
たかし
だれ?
ユウト
こっち!
窓をみると野球ボールを必死に指差している同い年くらいの男の子が立っていた
たかし
どうしたの?
ユウト
わりぃ!w
ユウト
ボールとってくんね?w
たかし
あ!これ?
ユウト
そうそう
ユウト
忘れちゃってw
たかし
はい!
たかし
野球いいなー
ユウト
1人だからほぼなんも出来ないんだけどねww
ユウト
なんか持ってないと落ち着かなくて
たかし
そうなんだw
ユウト
君は?
ユウト
俺ユウト!
たかし
たかし
たかし
今日から入院なんだよね
ユウト
大変なの?
ユウト
病気
たかし
いや、
たかし
安静にしてたら治るって
ユウト
よかったな!
ユウト
早く元気になれよ
たかし
おう!
たかし
また後で話そうぜ!
ユウト
お、おー…!
ユウト
あとでな!
ユウト
いつか一緒に野球できたらいいな‼︎
たかし
キャッチボールならすぐできるよ!
ユウト
じゃ!俺いくわ!
向こうをむくユウトの表情は少し寂しそうにみえた。
お昼過ぎ
看護師さんが検査のために病室までむかえにきてくれた。
ユウトはまだ帰ってきてなくて、 病院って意外と自由なんだなと思った
病院のエレベーターは見晴らしが良くて、
病院の駐車場から隣の公園までよく見渡せた。
僕は5階から降りながらユウトの姿を探したが見つけられなかった。
検査室の近くで泣いている男女とすれ違った。
「ボールだけが見つからない」と、話しているのが少し聞こえた。
それ以来ぼくがユウトと会うことは二度となかった