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テストが終わった
気づけば、もう7月の中旬だった
あとは夏休みを待つだけ
九月の初めにある文化祭に向けて
クラスでは少しずつ準備の話が始まっていた
『なにやる?』
『劇とか?』
『いや、絶対だるい』
色んな意見が飛び交う中で
〇〇は適当に頷いていた
正直なんでも良かった
それよりも
岩泉くんのクラスは何をするんだろう
ふとそんなことを考えた
最近は、気づくと彼のことを考えている
別に何か特別なことがあった訳じゃない
廊下ですれ違えば話す
図書室に来れば少し話す
それだけ
なのに
いつの間にかそれが楽しみになっていた
その日の帰り
〇〇はいつものように自転車を漕いでいた
空はさっきまで晴れていたのに
気づけば黒い雲が広がっている
ぽつ
頬に雨が当たった
〇〇
そう思った次の瞬間には
雨は一気に強くなっていた
夕立だった
〇〇は慌てて近くの公園へ入り
屋根のついたガゼボに自転車を寄せた
〇〇
制服はほとんど濡れていた
髪からも水が落ちてくる
しばらく待ってみたけれど
雨は弱くなるどころか
むしろ強くなっている
スマホを取りだし雨雲レーダーを見る
しばらく止みそうにない
〇〇
自転車通学はこういう時だけ不便だった
ため息を着いて
スマホをしまった、その時
岩泉一
聞き覚えのある声がした
顔をあげる
公園の入口に、岩泉くんが立っていた
〇〇
どうしてここに
そう思っている間に
岩泉は傘を差したままこちらに歩いてきた
岩泉一
〇〇
岩泉一
〇〇
岩泉一
まるで呆れたようなため息
その顔がまるで、お母さんみたいだった
岩泉一
〇〇
岩泉一
そういって、岩泉は〇〇の濡れた制服を見る
特に
雨で透けてしまっているシャツに目をやると
岩泉一
自分が着ていた部活のジャージを脱いで
〇〇に差し出す
〇〇
岩泉一
〇〇は少し戸惑いながら受け取った
〇〇
岩泉一
〇〇
岩泉一
岩泉は雨を見る
岩泉一
少し考えてから〇〇をみる
岩泉一
〇〇
岩泉一
〇〇
岩泉一
〇〇
岩泉一
それだけ言って
岩泉は〇〇の自転車のハンドルを掴んだ
岩泉一
〇〇
岩泉一
〇〇
岩泉は傘を差しながら
〇〇の自転車を押して歩き始めた
〇〇もその隣を歩く
雨の音が大きくて
会話はほとんどなかった
でも、不思議と気まずくはなかった
岩泉一
岩泉が玄関を開ける
〇〇
〇〇も小さく頭を下げた
すると
岩泉母
岩泉母
奥から女性の声が聞こえた
岩泉のお母さんだった
そして玄関に顔を出した瞬間
岩泉母
目を丸くする
息子が女の子を連れて帰ってきた
その事実が顔に出ていた
岩泉母
岩泉一
岩泉一
岩泉母
明らかにテンションが上がっている
岩泉母
岩泉母
岩泉母
岩泉一
岩泉母
岩泉一
岩泉一
岩泉一
岩泉母
岩泉母
返事が早い
岩泉母
岩泉母
〇〇
岩泉母
岩泉母
優しそうな人だった
〇〇は少しだけ戸惑いながら
頭を下げた
〇〇
岩泉一
岩泉一
〇〇
〇〇は階段をあがっていく
部屋に入る
思っていたより、ずっと普通だった
もっと男の子らしく散らかっているのかと思った
しかしものは意外と少ない
机
1枚だけユニフォームが掛けられている
ベッド
本棚
部活のバッグ
シンプルで意外と片付いている
〇〇
すると後ろに岩泉が立っていた
岩泉一
〇〇
〇〇
〇〇
〇〇
岩泉一
岩泉は机に飲み物を置く
岩泉一
ふっとわらう
〇〇
〇〇も釣られて笑う
雨はまだ、続いている
しばらくすると
部屋の外から控えめなノックが聞こえた
岩泉母
岩泉母
お母さんの声だった
岩泉母
岩泉母
〇〇
〇〇は少しだけ岩泉を見る
〇〇
岩泉一
岩泉一
〇〇
〇〇
階段をおりてリビングに向かった
そこには
岩泉くんのお父さんがソファに座っていた
テレビを見ていた父親が〇〇に気づく
岩泉父
と優しく笑った
〇〇
〇〇も小さく頭を下げる
岩泉くんと〇〇はダイニングの椅子に座り
その向かいには料理が並べられた
岩泉一
〇〇
その横では岩泉くんの両親が
座ってテレビを見ている
岩泉父
岩泉母
そんな会話がテレビの音に混ざって聞こえてくる
岩泉くんも時々
岩泉一
岩泉一
なんて言いながら、普通にご飯を食べている
〇〇はふと箸を止めた
なんか、いいな
これが家族ってやつなのか
誰かが帰ってきて
一緒にご飯を食べて
くだらない話をして
それが当たり前みたいに続いていく
そんな光景を〇〇は少しだけ眺めていた
岩泉一
〇〇
〇〇
笑ってまたご飯を食べた
岩泉一
食べ終わって窓の外を見ると
雨はいつの間にかやんでいた
岩泉一
〇〇
もう帰らなきゃ
別に、家にいるのが寂しい訳じゃない
慣れていることだし
〇〇は借りた服を綺麗に畳み
荷物を持った
〇〇
〇〇
〇〇
〇〇
そんな会話をしながら玄関に行く
岩泉母
岩泉母
お母さんが笑う
〇〇
岩泉母
〇〇
ふふっと笑う
岩泉母
〇〇は少し照れながら
〇〇
と答えた
その隣でお父さんも静かに笑う
岩泉父
〇〇
〇〇は靴を履く
こんな素敵な2人だから
きっと岩泉くんみたいな人が産まれるんだ
そんなことをふと思った
岩泉母
岩泉母
岩泉一
岩泉母
〇〇
〇〇
ふたりで家を出る
外は雨上がりで
少しだけ涼しかった
水たまりを避けながら
自転車を押して歩く
しばらくしてから、それぞれ自転車に跨った
岩泉一
〇〇
岩泉一
岩泉一
〇〇
〇〇
岩泉一
〇〇
岩泉一
岩泉一
〇〇
岩泉一
〇〇
そんな話をしながら、ふたりは帰った
家までの道のりが
いつもより短く感じた
〇〇
家の近くまで来たところで
〇〇は足を止めた
家の前に、近所の人が何人かいる
玄関の扉も開いていた
『…〇〇ちゃん』
近所の人が気まずそうに声をかける
近所の人たちは家の方を見る
『多分、お母さんが』
それだけで何が起こっているのかわかった
〇〇
〇〇は自転車をその場において
慌てて家に入った
〇〇
家の中は玄関まで酷い有様だった
倒れた椅子
散らばったもの
床には割れたグラス
そして母親が座っていた
お母さん
お酒の匂いがする
髪は乱れていて
服も着崩れている
お母さん
お母さん
声が震えていた
〇〇
お母さん
お母さん
〇〇
お母さん
大きな声が響き渡る
その声を、玄関の外にいる岩泉くんも聞いていた
〇〇は振り返る
岩泉と目が合う
…見られた
この家を
お母さんを
自分の、何もかも
〇〇は少しだけ笑った
〇〇
〇〇
岩泉一
〇〇
〇〇
岩泉一
〇〇
その時、置くからまた声が飛んできた
お母さん
〇〇は少し笑いながら岩泉をみる
〇〇
力なく笑った
〇〇
岩泉は何かを言おうとした
けれど〇〇はそれより家にもどった
〇〇
扉が閉まる
静かになった玄関で
〇〇は静かに息を吐いた
涙が出そうになる
でも泣いてる暇じゃない
〇〇
母親の傍による
〇〇
泣きながら縋ってくる母親の背中を
いつものように撫でる
〇〇
何度も
何度も
同じ言葉を繰り返した
夜が明けるまで
〇〇は母親のそばにいた
ーーそうだ
忘れていた
これが自分の家だった
これが、自分の育ってきた場所だった
あの家とは違う
暖かくて、静かな家族がいる場所とは
そして〇〇は、朝になるまで1度も泣かなかった
#五条悟の妹
IKA
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