食堂で暴力事件の話を聞いてから しばらくたった日のことでした。
広いリノリウムの 廊下を歩いていると 青井に会いました 久しぶりに会った 彼の顔には包帯が グルグルに巻いてあったので びっくりしました。
私
青井
私はまさかと思い、尋ねました。
私
青井
私
私
青井
青井が被害者だったなんて 私には以外な事でした。
すると、 偶然、廊下から 苺が、歩いてくるのが 見えました。
苺
こちらに気がつきます。
そして隣にいる 青井に目を向けました.....
苺は無言で青井を見つめます。 睨んでいるともいえます。
苺
青井
苺
青井
青井には散々 悪い噂が飛び交っています。 たぶん、そんな人に 突っかかってこられて 私が迷惑している。 苺はそんな風に 見えたのでしょう。
苺
私
苺
苺は私の手をとると 引っ張ってズンズンと早足で廊下を進んだ。
やがて、人のいない場所につくと 一息ついて、
心底困ったような顔で 私を見つめて言いました。
苺
この時私は、思いました。 苺は友達の事を 自分の事のように 気にかける事のできる子 なんだなと。 こういう子の周りのにいる人は きっと幸せ者だな、 そうとも思いました。
本当なら、私には もったいないくらい。
苺はいい子です 私が言うのもなんだけれど きっと、皆に愛されて 幸せになれる 可愛い女の子です。
━━私は、苺のようには 生きていけません。
もう、無理なんです。
だって、私は これからもずっと ━━人殺しなのですから。
***
それから、一ヶ月が経ちました。 六月も下旬に入り 気温の高さが感じられ すっかり初夏といったかんじです。
学校の食堂で 久しぶりに青井と 会った時には、 怪我がよくなったみたいで 包帯はこの前より かなり減っていました。
青井
私
青井
青井
私
そして彼は 私に頼み事をしました。
青井
私
青井
私
ところで、 私は気にかかっていた事を 口にする。
私
青井
私
私
***
━━とある日の 放課後。 人のいない空き教室でのこと。
誰かの怒鳴り声が 響く
青井蒼介
怒鳴るのは 大学に通う男子で 名前は、青井蒼介。 それを前に平然として いるのは 今まで茜が 親しくしていた男子だ。
青井蒼介
青井蒼介
青井蒼介はそいつの 胸ぐらを掴み、 顔面を思いきり殴った。
青井蒼介
続けざまに顔面を 殴り続けた。
教師
教師が停めに入り、助けを呼ぶ。 その声に周りの人間が 集まってくる。
━━そうして、この騒動は 青井蒼介の停学処分 という形に収まった。
青井蒼介本人が停学した今。 偽名使い、なりすましを しているのを知っているのは 今やその青年だけだ。
約束の日 私は青井に連れられて、くらい倉庫のような場所にきました。 ここは青井の家にある倉庫です。
私
私
私
青井は大きな袋から 鉈を2本取り出しました。 一本を私に手渡し 早速、動かない男性の 死体に向かって、 鉈を上からふりおろし 右腕の切断に取り掛かりました。
私
四肢を切られていながら 男性はもう 悲鳴一つあげません。 当たり前ですね 死体なんですから。
青井蒼介
私
厳つい印象を与える その人は 絞殺された縄のあとが 首にはっきりと残っていて 一目で死人と分かる顔の色は 苦悶の表情を湛えていました。
私も黙って 鉈を持ち 死体を解体しようとしたとき、
苺
後ろを振り返ると苺がいました。
私
私
苺
私は、苺を殺そうかと思いました。
しかし 手にもっているものを突きつける だけのことが私には、 できなかった。 手が、震えて動かなかったのです。
私
何に向かってなのか、 自分でもわからなかったが そう言いました。
私は、苺の顔から 目をそらし続けました。 だんだんと胸の奥から、 重く暗い何かが 全身に広がる感覚がしました。
私
自分でも無意識に その言葉が 口から漏れていました。 ━━私はそれに、少し驚きました。
涙が頬をつたっていく。 自分の声は震えていました。
苺
やがて苺は 走り去って行きました。
警察かどこかに きっと 連絡をするのでしょう。
私には、苺を殺す事が 出来ませんでした。 すでに人を殺しておいて 私は、友達を殺すことに 躊躇したのです。 それが、良いことか悪いことか 今更、私に何か言う資格は もう、ありません。
そして━━ 立ち尽くす私に 背後から痛みが 襲いました。
背中を思いきり 切りつけられたようです。 その後、喉を裂かれました。
青井は容赦なく 私の腹部に 鉈を突き立てました。
喉をさかれ 声はもう出ないので 痛みの中、 私は自分が死ぬのを 待ちました。
腹を裂かれながら ぼんやりと思います。
━━今ここで私が 青井に殺されるのは 良いことなのかもしれない。
だって、このまま生きていたって 良いことなんか無いでしょう?
私は、沢山、殺しました。 数限りない、動物を殺し、 男性も殺しました。
今更ながら、 そんな事をした人間に 神様はきっと 幸せな未来をくれないでしょう。
友達にも見放され 暗い未来が 迎えにくる前に 私は、今死ぬのが きっと良いのでしょう
そうすれば 私ももう、誰も何も 殺さずに 眠れるのでしょう。
━━凄烈な痛みが走る。 途端に、それでも 今刺されていることに 途方もない、幸せを感じている 自分を見つけました。
どうして、 私は常に何かを殺して いたのだろう?
最後に、その答えを 見つけました。
私は、ずっと誰かに 殺されたかったのだ。
━━そう、まさに 今のこの時を 私は、願っていたんです
殺されるものたちに 自分を重ね 愉悦に浸っていたのだと。
暖かな血液が体を流れて 地面を濡らした。 私の返り血で汚れる 彼がいとおしかった。
私は幸せです。 自分が、精神の深くから焦がれ、 ずっと望んできた 死を与えられて。
神様は初めから 私を愛してくれていたのだと 私は、殺されている今、 自分が生きたことに 深く感謝の念を 抱きました。
私、生まれてきてよかった、 こうして罪を省みない人に 殺されて私は本当に幸せなんだ。
ありがとう、ありがとう! 私を殺してくれて嬉しい!
私は、やがてもうすぐ 眠りにつくでしょう 自分が死ぬということが よく分かります。 痛みと朦朧とする意識の中 今、私は目を閉じ 動かなくなります。
━━終。
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この話の筋書きを思い付いたとき、なんだこれ、と一人で呟きました。終わりまで書き終え文を読み返しましたが、これはきっと私の黒歴史になることでしょう。自分で書いときながら、なんだこれ。