死にたがりの僕と、サイコパスな誘拐犯

誘拐３日目＿＿

ー流星sideー

その人は、ちゃんと寝る場所も布団も用意してくれて、 誘拐されてることも、いつかは殺されることも忘れるような 普通の生活をさせられた。

ニュース。 朝、テレビから聞こえてきたのは、僕が行方不明だという ニュースだった。

散々虐待しといてカメラの前では心配してる？ そんな下手な演技見たくない。どうせ、あの家に帰れば すぐ虐待される。ストレス発散できる便利な道具が居なくなって、 困った？心配で帰ってきて欲しいんやなくて、ストレス発散の 道具として帰ってきて欲しいんやろ。

でも困ったな。こんな大きな事件になってる。 この家から出たら、誰かに見つかって 警察に通報されるかもしれない。 そしたらまた、あの家に返される...

車に連れ込まれてすぐ刺そうとしてきたから 突発的な犯行やと思ってたけど、用意周到やん。

あー出た。あだ名な。散々酷い呼ばれ方しかされた事ないから、 今この人にどう呼ばれようともう耐性はついてる。

そう言って、この、西畑大吾って人は、ほんの少し表情を変えた。 疑問に思ってるような、複雑な顔。

かと思えば一瞬で無表情に変わった。

そっちが、あなたが、僕の名前を呼んでくれるなら、 僕もちゃんと名前で呼びたかった。呼び捨てにするのは ちゃうと思ったから、照れ隠しの意味も込めて、大ちゃん。

知らなかった。人に、名前で言われることがこんなに 嬉しいことだって。今まで名前で呼ばれたことのなかった 僕にとって、名前で呼んでくれるこの人は特別だった。 流星って名前、言われなさすぎて、忘れてたし...