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この作品は、「高い城の男」の世界観を借りたものです。
「高い城の男」は歴史改変SFであり、舞台はWWⅡで、連合国ではなく枢軸国が勝った世界のアメリカです。
この話は、敗戦しながらも生き残ってしまったアメリカの物語です。
アメリカ
アメリカ
どこだ...ここは...?
目が覚めると、俺は白い部屋にいた。
仰向けに横たわっていて、天井の照明が覚めたばかりの左目を強く刺す。 しかし、一方の右目には何かが覆い被さっており、何も見ることができない。
???
状況の把握もできぬまま、誰かの声が聞こえてきた。
ゆっくりと視線を動かすと、 そこには、椅子に座って足を組んでいるドイツがいた。
アメリカ
...!?は...!!?
ドイツ
アメリカ
寝起きの頭をなんとか稼働させるも、自分が置かれた現状はわからなかった。
アメリカ
仕方なくそう答えると、 ドイツは「そうですか」、と感情が読み取れない声で言った。
何が、どうなっている?
そもそも、なんで俺は寝てたんだっけ?
目を閉じ、記憶を掘り起こそうとしてみるが、まだしっかり目覚められていないからか、何も思い出せなかった。 目を開ける。
俺は、いったい___?
ドイツ
気づいたらドイツはすぐ隣で俺を見下ろしていた。俺が目を閉じている間に立ち上がったのだろうか。
右目の遮られた視界を不便に思いながら、俺は頭を少し動かして、右側に立っているドイツを見た。
アメリカ
ドイツ
アメリカ
ドイツ
ドイツ
そう告げられると同時に、 周囲の音が消えた。
負けた。
何に?
戦争に。
世界大戦に。
俺は___、
ドイツ
まだ処理が追いつかないまま、ドイツは説明を続ける。
ドイツ
ドイツ
身体が動かない。
ドイツ
爆弾、【ワシントンD.C】、 俺、俺は...
封じられていた記憶が蘇る。
かつて感じたことがないほどの激痛、燃えるように熱く、コントロールの効かない身体。
揺れる地面と、何かが爆発したような音。目から滴る何かと狭まる視界。
アメリカ
途端に汗が滲み出し、 両手で顔を覆った。
ドイツ
「続けますね」、慈悲もなく、ドイツはそう言った。
ドイツ
ドイツ
言い終えると、ドイツは顔を覆う俺の手を掴んでどかした。
ばっちりと目が合う。その瞬間に、居ても経ってもいられなくなる程の恐怖が、俺を襲った。
ドイツ
声が発せそうになかったため、俺はそれにこくこくと頷いた。まだ、完璧に理解したわけではないが...
それより、問題なのは、【アメリカ】が負けたということだ。ドイツは合衆国は解体したと言った。それなら、なぜ...
俺はまだ、生きている?
ドイツ
アメリカ
慌てて上体を起こすと、ドイツは俺の顔に手を伸ばしてきた。びっくりして目をつむると、右目の遮蔽物...いや、包帯が、どんどん外されていった。途中でドイツが「おや...」と声を漏らしていたが、包帯は問題なく全て外された。
しかし、妙なことに全く見えない。視界は中心以外が黒くぼやけており、使い物にならなそうだ。
ドイツ
何のことかと視線をやると、ドイツはすたすたと部屋から出て行った。答えてくれないのか、と思った頃に、ドイツは手鏡を携えながら近づいてきた。そしてそれを、無言で俺の前に出した。
鏡の中で、俺は変わってしまっていた。
まず、旗が変わっていた。48の星が並んでいたカントンには、白いハーケンクロイツがでかでかと象られていた。
それだけじゃない、包帯を巻かれていた右目は、白目が黒く染まっていた。 まるで何も見えなかったのは、これのせいだった。
あまりの変わり様に、 ショックで言葉も出ない。
俺の、俺たちの愛した星条旗は、跡形もなく消え去ってしまったのだ。
ドイツ
歪んだ顔を隠さすに俺はドイツを見た。ドイツも俺を見つめ返すが、その顔は相変わらず何を考えているのかわからない、不気味な表情をしていた。
アメリカ
ドイツ
言われてみれば、視界が暗転する中で、涙が頬を滑ったような気がする。
ドイツ
"黒い涙"...?
ドイツ
ドイツ
アメリカ
「やはり」、合点がいったようにドイツは言った。
いや、そんなことはどうでもいい。問題なのは、今、俺が生きてること。
祖国も滅んで、多分、家族も...、全部失った中で俺は、こんな地獄みたいな世界を生きていかなければならないのか?
アメリカ
ドイツは考えるような仕草をしたまま、俺を見て、こう答えた。
ドイツ
ドイツ
こいつら、人の尊厳をなんだと思っているんだ。
怒りと絶望で、 更に顔が歪むのを感じた。
アメリカ
ドイツ
ピシャリと言い放つドイツに一瞬怯む。
ドイツ
...それじゃあ、
アメリカ
ドイツ
そう言うとドイツは、俯いていた俺の顔を左手で持ち上げて、無理やり目を合わせた。
ドイツ
アメリカ
ドイツ
アメリカ
ドイツ
アメリカ
そこまで言って、ハッとする。
ドイツ
アメリカ
言葉を失う。何も言い返せない。反論の余地などありはしない。
ドイツはそんな俺を見て満足したのか、先程と同じように部屋から出て行った。
一人取り残された俺は、どうすることもできず、ただ、これから先起こることについて、嫌な想像を広げるだけだった。