日下部
この仕事が終わったら結婚してほしい
???
っ!
すると、目の前の女性は泣きだしてしまった。
日下部
な、泣くほど嫌なのか…
???
違うの…
???
これはうれし涙
日下部
じゃ、じゃあ…
???
もちろん
???
答えはイエス!
日下部
やった…!
日下部は女性を抱きしめた。
日下部
愛してるよ、○○──
日下部
──はっ!
日下部
ここは、俺の部屋…
日下部
またこの夢か…
日下部
(何度も同じ夢を見ている…)
日下部
(夢に出てきた女性は誰なんだ)
日下部
(現実の俺は、プロポーズどころか)
日下部
(恋人さえいないのに)
日下部は顔を洗い、眠気を覚ました。
鏡に顔を近づけ、頭部に残る傷跡に触れる。
日下部
(頭に銃弾を受けて、よく生きていたものだ)
日下部
(でも、そのせいで記憶を失ってしまった)
日下部
(もしかして、あの夢は)
日下部
(記憶を失う前の出来事だったんだろうか…)
日下部
(…いや、それはない)
日下部
(そんな女性がいるなら)
日下部
(すぐに会いに来てくれるはずだろう)
日下部
(そうなっていない、てことは)
日下部
(ただの俺の妄想だ)
日下部
(忘れよう)
日下部は、自身の頬を思いっきり叩いた。
日下部
(今日は重要な仕事がある)
余計なことに気を取られるわけにはいかないのだ。
日下部は探偵をしている。
数日前、日下部にとある依頼があった。
日下部
なるほど、奥さんが不審死した、と…
鈴森
そうです
鈴森
須藤総合病院には、絶対裏があります
日下部
お話をまとめましょう
日下部
奥さんは交通事故で入院中でしたが
日下部
病室で首の骨を折って死んだ
日下部
病院の説明では、『ベッドから落下した』と
日下部
警察も、事故として処理した
日下部
以上で間違いないですね?
鈴森
はい
鈴森
ありえないでしょう!?
鈴森
たしかに、ベッドから落ちて死亡する事故はあります
鈴森
でも、ベッドには落下防止用のガードがついてましたし
鈴森
ベッドの高さも大したことなかった
鈴森
何より、妻は怪我で満足に動けない状態でした
鈴森
そんな妻が、ベッドから落ちるでしょうか
日下部
たしかに、そうですね
鈴森
警察はろくに調べもせずに事故と決めつけました
鈴森
おかしなことだらけなのに…!
鈴森
絶対、病院側から圧力があったんです
鈴森
お願いします、日下部さん
鈴森
どうか、妻の死の真相を暴いてください
日下部
(ここが例の病院か)
日下部
うっ…!
日下部
(頭が、痛い…!)
日下部
(頭を撃たれ、記憶喪失になり)
日下部
(しばらく療養していたからな…)
日下部
(色々と本調子じゃない)
日下部
(無理しないようにしないと…)
日下部は鎮痛剤を飲み下し、再び歩きだしたのだが──
男
うおおおお!
日下部
なんだ!?
患者らしき男が、もの凄い形相で走ってきた。
看護師
その人を止めて!
日下部
(いったい何なんだ…!)
男
どけえ!
日下部
(仕方ない!)
日下部
ふん!
日下部は男に掴みかかり、足払いをかけた。
地べたに転がし、暴れる男を取り押さえる。
男
はぁ…はぁ…
日下部
(この男、薬物中毒者か?)
男
なあ、お前さんよ
男
俺は、至って正常だぜ
男
むしろヤバイのは、この病院だ
日下部
……?
男
俺みたいになりたくなかったら
男
今すぐ、逃げることだな…
男はそう言って、気絶してしまった。
看護師
ありがとうございます
日下部
この男はいったいどうしたんですか
看護師
え?
日下部
その、様子が尋常じゃないので
看護師
…………
看護師
それは、お答えしかねます
やがて黒服を着た大男が複数やって来て、気を失った男を連れて行った。
日下部
(どう見ても病院にいるような連中じゃないな)
日下部
(ヤバイのはこの病院、か…)








