勾留三日目
この日も私は警察署にいた
まだまだ蒸し暑い日が続く中での面会
今日も変わらず十五分
このわずかな時間にどれだけ話を聞けるのか
今日を入れてあと十八日
意識すればするほどに
時間の無さを痛感させられる
沢田マリカ
三村優真
沢田マリカ
本気で心配している顔
彼女の気持ちはわからないけれど
目の前にいるこの青年は
確実に彼女に対する強い愛情を持っている
そんな風に感じた
2010年5月13日(木)
この日から
二人の奇妙な共同生活が始まった
まだ大学生だった三村は
通学のための準備を始める
ベッドで眠る彼女の頬にキスをして
二人を繋いでいた手錠を外す
三村優真
都心にある1LDKのマンション
三村はそこに一人で住んでいた
母親に捨てられ父親の元で暮らし始めるも
新しい継母は三村のことを受け入れようとはせず
見かねた父親がマンションを借り
当時十五歳の三村を半ば強に移住させた
自分よりも意地悪な継母を選んだ
その事が三村の心の闇を更に深くしてしまう
高校では高い成績をキープし続け
裕福な金持ちの息子を演じる一方で
孤独と戦いながらの生活を送っていた
家賃や光熱費等は全て父親が支払っていたため
生活に困ることはなかったが
孤独を少しでも埋めるために
必要のないバイトまでするようになっていた
同級生に見つからないように
あえて二つ隣の市まで電車で通い
そこでもできる人間を演じ続ける日々
大学に進学してもそれは変わらず
それまで与えられなかった愛情を求め
その矛先が偶然通りかかった彼女に向けられた
三村が帰宅したのは20時頃
部屋の明かりは消えていて
三村は慌てて寝室を確認する
そこにはスヤスヤと眠る彼女の姿
予め三村が用意していた食事を取り
用意していた服に着替え
再び眠りについたようだった
洗面所で手を洗い再び彼女の元へ戻ると
彼女が目を覚ましていた
三村優真
三村の言葉に頷く彼女
相変わらず言葉を発しようとしない
三村優真
三村優真
三村優真
ビニールの袋から取り出したのは
大量の湿布薬と痛み止の飲み薬
そしてしゃべらない彼女との会話のために
磁気式の筆談ボードも購入していた
三村優真
三村優真
ダイニングテーブルに向かい合わせに座り
買ってきたお総菜を並べる
三村優真
三村優真
三村の問いに筆談ボードを使って答える彼女
そんな風にして少しずつ会話が進んでいく中で
三村は失声の原因が虐待によるものと推測していた
食事を終え入浴を済ませると
彼女の身体中の痣に湿布薬を貼っていく
湿布薬のひんやりとした感触に
彼女が少し反応を見せると
三村はその部分を優しく撫でながら
まだ治りかけの切り傷には化膿止めの軟膏を塗り
その上から大きいサイズの絆創膏を貼った
コメント
8件
治療してあげていたんですね…! やっぱり放置は痛々しいですから…