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七海が死んだ。
一昨日から行方不明になっていて、そのまま最悪の結末を迎えた。
七海は俺の幼なじみで、恋人でもあった。
そんな七海が、俺の前からいなくなったのだ。
俺の精神はもう正直、限界だった。
優斗
……くっそ
優斗
何でだよ！
優斗
なんで、なんで七海なんだよ……
優斗
七海がいなくなったら俺、もう
優斗
もう……
？
こんばんは
優斗
うお！？
優斗
何だよ、お前
優斗
不法侵入だよな、訴えるぞ
？
まぁまぁ
？
貴方にとっておきの話があるんです
優斗
はぁ？
？
申し遅れました
？
私、死後の世界の番人です
？
主に時に関わる番人をしておりますので
？
気軽に『時の番人さん』とでも呼んでください
優斗
はぁ
優斗
で、とっておきの話って？
時の番人
タイムスリップです
優斗
はぁ？
時の番人
私どもは1年に1度だけ、人間の手助けをすることが許されています
時の番人
つい先日、助ける人間を決めるためのくじ引きを行った結果、貴方の名前を引いたのです
時の番人
貴方は今、絶望の縁にいますね？
時の番人
それをタイムスリップで解決するべく、やってきたのです
優斗
どうするってんだよ
時の番人
タイムスリップをして、七海さんを助けるのです
時の番人
常に七海さんを見張っておけば、七海さんが死ぬことは無いでしょう
優斗
……絶対に？
時の番人
絶対などという都合の良い言葉はこの世に存在しません
優斗
……
時の番人
どうです？やりますか？
優斗
……やってやるよ
時の番人
では、目を瞑って
時の番人
3秒経つと、七海さんがいなくなる日に戻ります
時の番人
1
時の番人
2
時の番人
3
優斗
……え？
優斗
さっきまで夜だったのに
お母さん
優斗！早く起きなさい！
お母さん
七海ちゃん待ってるわよ！
優斗
え？
七海
優斗遅い！
七海
早く学校行くよ！
優斗
戻ってる
七海
え？
優斗
いや、なんでもない
優斗
(あの話、本当だったのか)
優斗
(七海は俺が助ける)
優斗
(絶対に)
下校中
優斗
七海
優斗
今日、俺ん家こねぇ？
七海
はぁ？
優斗
いや、ちょっと相談があって
優斗
頼む
優斗
帰りは送ってくから
優斗
(七海がいなくなったのは下校途中)
優斗
(ここさえ乗り切れば……)
七海
……分かった
七海
行こう
優斗
……！
優斗
ありがとう
優斗
やった……やってやった！
優斗
これで七海は大丈夫だ
優斗
……本当に良かった
お母さん
優斗大変！
お母さん
七海ちゃんがついさっき亡くなったって
優斗
……は？
お母さん
家に車が突っ込んできて、その下敷きに
優斗
嘘……だろ……
時の番人
どうでしたか？
時の番人
望み通りの結果になりました？
優斗
お前、ふざけんな！
優斗
七海がまた死んだんだよ！
優斗
本当に、ざけんな
時の番人
まぁまぁ
時の番人
……どうです、もう一度やり直しますか？
優斗
ああ
優斗
早くしてくれ
時の番人
1
時の番人
2
時の番人
3
そこから、俺は何十回、何百回とタイムスリップを繰り返した。
何度も何度も、七海を助けた。
でも、その都度七海は死んでいく。
七海は俺の前から必ずいなくなる。
もう、心も体も、限界だった。
時の番人
変わらぬ結末
時の番人
望まぬ運命
時の番人
それでもまたやりますか？
優斗
……やる
優斗
俺は、七海に生きていて欲しいんだ
優斗
俺はどうなってもいい
優斗
だから……
時の番人
……貴方はどうなってもいいんですか？
優斗
ああ
時の番人
それではもうひとつ選択肢を与えましょう
優斗
なんだ？
時の番人
人が死ぬ魂というのは決まっています
優斗
じゃあ、俺が死ねば
時の番人
はい
時の番人
確実に助けられます
優斗
絶対は無いんじゃ？
時の番人
この場においては無効です
優斗
……はは
優斗
都合が良い奴だな
時の番人
それでは、このナイフで心臓を1突きしてください
優斗
分かった
優斗
……七海、愛してる
グサッ
七海
そんな
七海
優斗が死んだ……？
七海
優斗……
七海
嘘でしょ……
時の番人
おはようございます
七海
……誰？
七海
不法侵入で訴えるわよ
時の番人
ふふ……似ていますね
七海
何がよ
時の番人
いえ、こちらの話です
時の番人
七海さんに良い話があります
七海
なに？
時の番人
タイムスリップ、しませんか？
時の番人
彼は他に、呼び名がある。
曰く
『死神』と。
2人の死のループは
時の番人
一体いつ
死神
終わるのでしょうね
電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
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