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宇山 珀兎(ハクト)

水の音……?

宇山 珀兎(ハクト)

ねえ、原石くん。この近くに水場は無い?

原石 六空(ムク)

水場?

原石 六空(ムク)

それなら、近くに井戸があるけど

宇山 珀兎(ハクト)

井戸か……

宇山 珀兎(ハクト)

(七面さんは、井戸に突き落とされる?)

宇山 珀兎(ハクト)

いや、違う

宇山 珀兎(ハクト)

それなら、頭から落ちるはず……

宇山 珀兎(ハクト)

背中を奪うには、不自然だ

原石 六空(ムク)

不自然って、おいっ!

七面の母

……ぃ

七面の母

いやああっ!!!

突然、七面さんの母親が 金切り声を上げた

原石 六空(ムク)

宇山、てめぇ!

宇山 珀兎(ハクト)

ど、どうしたの?原石くん

原石くんは 僕をにらみつけた

原石 六空(ムク)

お前は悪いヤツじゃない。それは知ってる

原石 六空(ムク)

でもな!

原石 六空(ムク)

ものすごく鈍感で、失礼なヤツだ!

宇山 珀兎(ハクト)

あ……

七面の母

みぃ……ぅ……

七面さんのお母さんは ただ叫んだんじゃない

呼んでいたんだ

娘の名前を……

宇山 珀兎(ハクト)

(どうして、気づかなかったんだろう……)

家の名誉や

生まれ育った土地よりも

大切なものが 人にはある

七面の母

みぃゔぅぅぅぅ!いあああっ!!

地面に額を押しつけ 七面の母は泣いた

宇山 珀兎(ハクト)

(どうして、こんな連鎖が続いているんだ?)

どくん

宇山 珀兎(ハクト)

(どうして、みんなが死ななければならない?)

どくん

宇山 珀兎(ハクト)

なんで先祖の罪を……

宇山 珀兎(ハクト)

子孫の僕らが、償わないといけないの?

宇山 珀兎(ハクト)

こんな風習、間違ってる!

宇山 珀兎(ハクト)

終わらせないと

「終わらせんと」

宇山 珀兎(ハクト)

……七三五様を

「……七三五ば」

原石 六空(ムク)

おい、宇山!なにブツブツ言ってんだよ!

原石 六空(ムク)

近くに小学校がある!

原石 六空(ムク)

行くぞ!

原石 六空(ムク)

こっちだ!

宇山 珀兎(ハクト)

あ、待ってよ!

原石くんの指示通りに 前へ走る

宇山 珀兎(ハクト)

はぁ、はぁ

だけど、過ぎゆく景色に 変わりはなく

宇山 珀兎(ハクト)

(本当に、ここであってるのかな?)

不安は波となって 心に押し寄せた

もしも許されるのなら

もう一度、その名を 口にしたい

その身に

その姿に

もっとも相応しい その名前を

原石 六空(ムク)

見えてきた!あそこだ!

延々と続く道の先に 建物が生える

それと同時だった

どぼん!

原石 六空(ムク)

今の音!プールから!?

宇山 珀兎(ハクト)

七面さんが落ちたんだ!

宇山 珀兎(ハクト)

助けよう!

僕らは無我夢中で 建物のフェンスを登った

服のまま プールに飛びこむ

宇山 珀兎(ハクト)

うぐっ!?

春とはいえ 水温は低い

宇山 珀兎(ハクト)

(水が氷みたいだ)

宇山 珀兎(ハクト)

(肌を突き刺すように冷たい……)

宇山 珀兎(ハクト)

(それに、服も重い……)

水の中は動きづらく

走り疲れた足では 前に進めない

宇山 珀兎(ハクト)

(だけど!)

宇山 珀兎(ハクト)

(七面さんを探さないと!)

宇山 珀兎(ハクト)

(もう、誰も死んでほしくない)

宇山 珀兎(ハクト)

(こんな儀式、終わらせてしまいたい)

宇山 珀兎(ハクト)

(僕らの世代で)

宇山 珀兎(ハクト)

(七面さん、どこに……)

水中を花びらが

ひらりと舞う

宇山 珀兎(ハクト)

(あれは……)

どくん

彼岸花のごとく 赤き色

懐かしいその色に

この身は引き寄せられる

宇山 珀兎(ハクト)

な、なっ!

宇山 珀兎(ハクト)

(七面さん!)

宇山 珀兎(ハクト)

(血が出てる!助けないと!)

そう思うのに

宇山 珀兎(ハクト)

(どうしよう……息が……)

宇山 珀兎(ハクト)

(続かな……)

酸素を求め体は 水面から這い上がる

宇山 珀兎(ハクト)

はぁ、はぁ……

宇山 珀兎(ハクト)

七面さんを助けないと!

再び潜ろうとすると

原石 六空(ムク)

おい、宇山!こっちだ!

宇山 珀兎(ハクト)

原石くん!七面さんが!

原石 六空(ムク)

分かってる!

原石 六空(ムク)

排水溝に引っかかて、1人じゃ引き上げられない!

原石 六空(ムク)

手伝ってくれ!

宇山 珀兎(ハクト)

わかった!

再び水に潜ると 僕は泳ぎ始めた

原石くんの居る 排水溝へ向かって

宇山 珀兎(ハクト)

(居た!七面さんだ!)

宇山 珀兎(ハクト)

(背中が排水溝に吸いついてる!)

原石くんが七面さんを 引き上げようとする

だが、背中が 排水溝から離れない

宇山 珀兎(ハクト)

(七面さん、何か背負ってるみたい……)

宇山 珀兎(ハクト)

(そうか、刀か!)

宇山 珀兎(ハクト)

(背負ってる刀が引っかかって、上がらないんだ!)

宇山 珀兎(ハクト)

(それなら……)

僕は七面さんの背中から 刀を引き抜き

その刃で服を切り裂いた

原石 六空(ムク)

……っ!

水中に 赤い彼岸の花が咲く

宇山 珀兎(ハクト)

(また、原石くんを怒らせるかも……)

宇山 珀兎(ハクト)

(でも、今は!)

七面さんを抱え 再び水面を目指す

宇山 珀兎(ハクト)

(七面さんを助ける!)

それだけを考えて

原石 六空(ムク)

お前、本当に殺す気か!?

宇山 珀兎(ハクト)

でも、生きてる!

宇山 珀兎(ハクト)

まだ温かい!息があるんだ!

プールサイドに 七面さんを寝かせると

七面 美羽(ミウ)

ゴ……ゴホッ!

宇山 珀兎(ハクト)

水を吐いた……

原石 六空(ムク)

生きてる……!

原石 六空(ムク)

おい、七面!

原石 六空(ムク)

大丈夫か?しっかりしろ!

七面 美羽(ミウ)

ムク……くん?

宇山 珀兎(ハクト)

無事で、良かった……

七面 美羽(ミウ)

宇山さん……どうして

七面 美羽(ミウ)

どうして、私を

七面 美羽(ミウ)

……死なせてくれなかったんですか?

宇山 珀兎(ハクト)

なに言ってんの!?

宇山 珀兎(ハクト)

本当に死ぬところだったんだよ!?

七面 美羽(ミウ)

それでいいんです

七面 美羽(ミウ)

ああ、もう。他の十五夜家の人は、分かってくださったのに……

宇山 珀兎(ハクト)

他の十五夜の人?

宇山 珀兎(ハクト)

それ、どういう意味?

七面 美羽(ミウ)

そのままの意味ですよ

七面さんがジットリとした 瞳で僕を見つめる

ぬるりと不気味な感触が 肌を這う

七面 美羽(ミウ)

もう、出てきてもいいんですよ?

七面 美羽(ミウ)

兎吉様

原石 六空(ムク)

おい、七面。なに言ってんだよ?

七面 美羽(ミウ)

ムクくんだって、本当は気づいてるんでしょう?

七面 美羽(ミウ)

二人が私を見つけたのは、偶然なんかじゃありません

七面 美羽(ミウ)

すべては兎吉様の、お導きなんです
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