由佳子
架恋
先生のお誕生日・当日。
登校した私は、学食へ向かう お昼休みにも肌身離さず、 手提げ袋を携えていた。
この手提げには、先生に渡す クッキーの包みが入って いるから……。
由佳子
何が入ってるの?
架恋
由佳子
親友の由佳子には、 晴れて告白が成功したら、 打ち明けるつもりでいる。
架恋
架恋
苑原先輩を、3年生 らしき女子生徒数人が 取り囲んでいた。
3年女子
見て見て、授業でクッキー作ったの!
3年女子
苑原
今は昼ご飯、食べるからさ
3年女子
架恋
架恋
架恋
苑原
架恋
あの時はクラスの 腐女子たちから影響を 受けてしまったこともあり、
ついBLを疑って しまったけれど……
架恋
どう続けるつもり
だったのかは)
架恋
架恋
架恋
架恋
俯き加減に歩いて、 苑原先輩たちを 追い越し通り過ぎる。
苑原
架恋
私は気付かなかった フリをして、そのまま 学食へ向かおうとした。
だけど……。
苑原
やっぱり君だ
苑原先輩は、取り巻きの 3年女子に身振りで 待っててと伝えると、
私に近づいてきた。
苑原
学校一のモテ男に 話しかけられた私の隣で、 由佳子が目を丸くしている。
苑原
架恋
架恋
架恋
すると苑原先輩は、 僅かにくちびるを歪めて こう言った。
苑原
架恋
先輩には関係ありません
苑原
あれ、この匂い……
苑原
君って3年だったの?
架恋
苑原
苑原
架恋
3年女子
3年女子
架恋
失礼します!
私は慌てて一礼して、 身を翻した。
それから駆け出そうとして……
架恋
何かが落ちる鈍い音。
廊下を見ると―― クッキーの包みが 落ちていた。
架恋
手提げの持ち手が切れて……っっ)
架恋
大急ぎで廊下にしゃがみ 込み、クッキーの包みに 手を伸ばす。
その指先に触れたのは、 包みではなく……
架恋
苑原
架恋
苑原先輩の指先と 指先が触れて、私は 慌てて手を引っ込めた。
苑原
割れてる
半透明の包みに透けて、 ヒビの入ったクッキーが 見て取れた。
架恋
私は呆然と、苑原先輩が 包みを拾い上げるのを 見ていた。
……クッキーが。
山名先生に食べて 欲しくて頑張った、 手作りのクッキーが……
その無残にもヒビの入った 姿は、まるで告白の結果を 暗示しているようで……。
架恋
無言で俯く私の頭上から、 苑原先輩の声が降ってきた。
苑原
架恋
架恋
私は先輩から目を逸らして、 立ち上がった。
そして。
由佳子
私は由佳子も置いて、
食堂とは別の方向へ 向かって駆け出した のだった。







