夜、公園の散歩をするのが好きだ
暗くて、静かなところが落ち着く
昔、この辺はお城だったらしい
外堀にあたる部分が、整備され公園になっている
夜になると、池を囲う柵がライトアップされ、とてもきれいだ
琴音
(風が冷たくて気持ちいい)
琴音
(蚊がいなければ、最高なんだけどな)
よく見ると、男の人が1人、池に何かを撒いている
琴音
(珍しいな)
琴音
こんばんはー
男
こんばんは
琴音
何してるんですか?
男
ああ、池の鯉に餌をやってるんですよ
琴音
へー、そうなんですね
琴音
(なんで、こんな夜中に)
私の考えを察したように、男が話し出す
男
実はここ、餌やり禁止なんですよ(笑)
男
見つかると、管理してる方に怒られちゃうんですよね(笑)
琴音
そうなんですか
男
ここは、彼女との思い出の場所なんですよ
男
よく、ここの鯉を2人で見に来たんです
琴音
素敵ですね
男
はは、他に遊ぶとこが無いだけなんですけどね(笑)
男
でも、最近彼女が亡くなりましてね
琴音
そうだったんですか
琴音
ご愁傷さまです
男
長い間、病気でしたから
男
仕方ないです
男
それで、彼女がね、次生まれ変わったら、この池の鯉になるんだーって言ってたんですよ(笑)
男
どうやってなるつもりだったのかは、分かりませんが(笑)
琴音
(素敵だなー)
琴音
それで鯉を見ていたんですね
男
そうなんです。それでね、私調べたんですよ
男が、餌を撒きだす
鯉が、餌に群がる
男
どうすれば、彼女を鯉にしてあげられるか
暗くて、よく見えなかった手が、灯りに照らされる
男
鯉は、食性によって体色を変えるんです
男
きっとこれで、彼女は鯉になれる
男が撒いていた餌は
細かく刻まれた、髪の毛だった