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課題を進める手が 段々と速度を落とす 。
時間が経てば経つ程 やる気も失せてゆく 。
ふと目に入ったスマートフォンは 私の顔を反射している 。
可愛いなんて言えない 気に入らない顔が映る 。
見つめる程苛立ちが募ってしまう 。
苛立ちを少しでも抑えようと 、
電源ボタンを押し 、 液晶画面を光らせる 。
そして晴哉くんとのトーク画面 。
お互い ‘ よろしく ’ だけ 送られた素っ気無い画面 。
‘ だいじ ’ 迄打ち 、 ‘ 大丈夫? ’ の予測変換を押す 。
そして削除ボタンを4回 、 4文字分押す 。
此の無駄な作業を 何度か繰り返してしまう 。
約8回目に差し掛かった頃 、
スマートフォンが 自身を少し揺すった 。
名前には緒形晴哉
通知は通話を表示していた 。
考える間も無く 、 指が動いていた 。
我に返った時には 晴哉くんの声が聴こえていた 。
晴 哉
茉 陽
10年ぶりに声を 聴いたような気分だ 。
電子音から響く声が どうようもなく嬉しかった 。
最近迄明るい性格だった 声のトーンではなく 、
出逢ったばかりの見惚れた君の声 。
‘ 嬉しい ’ という4文字の 言葉では片付けられない 。
晴 哉
晴 哉
茉 陽
掠れる声でも どうしても紡がなきゃいけない 。
君を掴んでは離したくない 。
晴 哉
晴 哉
君は一時の気分で物事を 終わらせてしまうの
私が知る限り違う筈だ 。
ねぇ 、教えてよ
茉 陽
電子機器の奥で溜息が聞こえた 。
嫌われようとも知りたい欲が 私の中を掻き立てる 。
相手にとって うざったい程のめり込む 。
晴 哉
晴 哉
茉 陽
まるで呪文のような単語を並べた 。
其れでも晴哉くんは 慣れた口調だったから 、
晴哉くんにとって 身近にあるものなんだろう
晴 哉
一言で全ての意味を理解した 。
そして君が 消えるんじゃないかなんて
考えたくもない 恐怖が湧き上がった 。